「そろそろ親の通院が限界かもしれない…」
「でも、家に他人が入ってくるのは不安だし、費用も高そう」
そんなふうに、訪問診療の検討を先送りにしてしまっていませんか?
実は、私がクリニックで相談を受けてきたご家族の多くが、導入後に「こんなに楽になるなら、もっと早く頼めばよかった」とおっしゃいます。
この記事では、訪問診療クリニック事務長の経験をもとに、「失敗しない導入手順」と「リアルな費用相場」を、忖度なしで分かりやすく解説します。
読み終える頃には、漠然とした不安が「具体的な行動計画」に変わっているはずです。
✅この記事でわかること
- 訪問診療の導入手順(主治医相談~契約までの流れ)
- 費用相場と自己負担額シミュレーション
- 高額療養費制度の活用法
- 導入前に家族が確認すべきチェックポイント
訪問診療を導入する4つのステップ
訪問診療は、電話一本ですぐに来てくれるわけではありません。
以下の手順を踏むことで、現在の主治医との関係を崩さず、スムーズに在宅医療へ移行できます。
STEP1:現在の主治医・ケアマネに相談
まずは現在の主治医に「通院が大変になってきたので、訪問診療を検討したい」と伝えましょう。
ここでのポイントは、「今の先生が嫌なわけではない」と感謝を伝えつつ相談することです。
多くの病院では「地域連携室」の相談員(MSW)や担当ケアマネジャーが、地域の訪問診療クリニックのリストを持っています。
そこから、ご自宅のエリアに対応したクリニックを紹介してもらいます。
STEP2:診療情報提供書(紹介状)の準備
紹介先が決まったら、主治医に「診療情報提供書(紹介状)」を書いてもらいます。
- これまでの治療経過と現在の処方薬
- 緊急時の留意点
これらが記載された紹介状は、いわば「命のバトン」です。
発行には数日〜1週間程度かかる場合があるため、早めに依頼しましょう。
STEP3:初回面談(インテーク)
訪問診療クリニックの相談員や医師が自宅(または入院先)を訪問し、面談を行います。
ここで確認するのは医学的なことだけではありません。
「夜間の緊急時はどうしてほしいか?(救急搬送か、自宅での看取りか)」
「家族の介護力はどの程度か?」などを確認します。
不安な点は、この場ですべて吐き出してください。
STEP4:契約・訪問開始
方針に合意できれば契約を結び、実際の訪問がスタートします。
基本的には「月2回(隔週)」の訪問スケジュールが組まれることが一般的です。
初回訪問では、改めて全身のバイタルチェックや薬のセットを行い、24時間連絡可能な直通番号(オンコール先)がご家族に伝えられます。



「夜中に急に熱が出た。救急車と往診、どっちを呼ぶべき?」
迷う場面は必ずやってきます。
訪問診療と往診の決定的な違いをあらかじめ理解しておけば、万が一の時でもパニックにならずに済みますよ。
【料金表】訪問診療の費用相場と自己負担額
「医師がわざわざ家に来るなんて、すごく高いのでは?」
そう心配される方が多いですが、基本的には通常の通院と同じく、医療保険が適用されます。
以下は、一般的な「75歳以上(1割負担)」の方が、月2回の訪問診療を受けた場合の目安です。
| 内訳項目 | 費用の目安(1割負担) |
|---|---|
| 訪問診療料 (月2回の定期訪問) | 約1,800円 |
| 医学総合管理料 (24時間体制の維持費) | 約4,000円〜5,000円 |
| 居宅療養管理指導料 (薬やケアの指導) | 約600円 |
| 合計(月額目安) | 約6,400円 〜 8,000円 |
※在宅時医学総合管理料は病状や施設の種別により変動します。
「高額療養費制度」が家計を守ります
「もし点滴や検査が増えて、支払いが何万円にもなったらどうしよう…」
安心してください。
日本の医療制度(厚生労働省)には、ひと月の支払いに「上限」が設けられています。
70歳以上・一般所得(1割・2割負担)の場合
外来・在宅医療の自己負担上限は月額 18,000円まで。
※住民税非課税世帯なら月額 8,000円まで下がります。
つまり、どれだけ手厚い医療(頻繁な往診や点滴など)を受けても、この上限額を超えた分は後から払い戻されます(事前の手続きで窓口負担を上限までにすることも可能です)。
結果的に、高額な費用がかかる施設へ急いで入居するよりも、在宅医療を活用したほうがトータルコストは安く抑えられるケースがほとんどです。
ケース別:訪問診療で「解決できたこと」
実際に訪問診療を導入したご家族の声をご紹介します。
ケース① 脳梗塞後で通院困難になった父
80代の父が脳梗塞を発症し、車椅子生活となり通院が困難に。
主治医の勧めで訪問診療を導入しました。
月2回の定期診療に加え、体調が急変した際には往診も利用。自己負担は月8,000円程度でした。
ケース② 認知症で夜間の不安が増えた母
80代の母が認知症を患い、夜間の徘徊や幻覚症状が出て対応に困っていました。
定期的に医師が状態をチェックし、薬の調整をサポート。
🩺親の転倒や熱中症が心配な方へ
「訪問医は月に2回診てくれるけど、それ以外の『誰もいない時間』に倒れたりしないか心配…」
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ケース③ がん末期で自宅療養を希望した母
がん末期のお母様の「最期まで住み慣れた自宅で過ごしたい」という強い希望を叶えるため導入。
医療麻薬による痛みのコントロールや、点滴治療を自宅のベッドで受けることができました。
在宅介護を劇的に楽にする「食事」の工夫
訪問診療の導入で「通院の負担」はゼロになります。
しかし、在宅介護において次に重くのしかかってくるのが「毎日の食事の準備」です。
「親の血圧や栄養バランスを考えないといけないし、自分の仕事の後に買い物も調理もするのは、正直もう限界…」



多くの方が、訪問診療とセットで導入し、介護の負担を劇的に減らしています。
共倒れを防ぐためにも、食材宅配や冷凍弁当を賢く頼ってください。
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失敗しないための「事前チェックリスト」
「契約したけれど、思っていたのと違った」とならないよう、面談時に以下の項目を必ず確認してください。
- 主治医に「訪問診療に移行できるか」を確認したか
- 診療情報提供書を依頼できるか
- 家族で「利用頻度と費用負担」について話し合ったか
- 高額療養費制度や介護保険との併用を確認したか
- 緊急時の連絡体制(往診対応)があるかを確認したか
あと、導入後の運命を左右するのが「医師の質」や「相性」です。
「せっかく訪問診療を導入したのに担当医と合わない」「いつも違う先生が来て信頼できない」など、よく聞く話です。
導入前に、ケアマネジャーや病院の相談員(MSW)に評判を聞いてみることをおすすめします。



一度契約すると変更が言い出しにくいのが在宅医療の難しいところ…
失敗しない在宅医療クリニックの選び方7つの基準を必ず確認してください。
「こんなはずじゃなかった」と後悔する前に、プロが見るべきポイントを伝授します。
訪問診療の導入手順と費用に関するよくある質問
- まだ歩けますが、認知症で一人での通院が難しいです。対象になりますか?
-
はい、対象になります。身体的な理由だけでなく、認知症により安全な通院が困難な場合も、医師の判断で「通院困難」とみなされ、訪問診療を利用できるケースが一般的です。
- 夜間や休日に急変したときは、来てくれるのでしょうか?
-
はい、24時間365日対応の「在宅療養支援診療所」と契約すれば、往診が可能です。まずは緊急連絡先に電話をし、医師の判断で指示を仰ぐか、必要に応じて医師や看護師が自宅へ駆けつけます。
- 薬はどこで受け取ればいいですか?家族が取りに行く必要がありますか?
-
「訪問薬剤指導」を利用すれば、薬剤師が自宅まで薬を届け、飲み方の指導まで行ってくれるため、家族が取りに行く必要はありません。もちろん、処方箋を受け取ってご家族が近所の薬局へ行くことも可能です。
- 今のかかりつけ医(外来)にも通い続けたいのですが、併用は可能ですか?
-
専門的な治療(眼科や整形外科、透析など)で通院が必要な場合は併用可能です。ただし、同じ内科的な病気で「通院」と「訪問」を重複して受診することは、保険制度上調整が必要な場合があるため、事前にご相談ください。
- 医療費以外に、交通費は別途かかりますか?
-
クリニックにより異なりますが、医療費とは別に1回につき数百円〜1,000円程度の交通費を実費として請求されることが一般的です。契約前に料金表で確認することをおすすめします。
- 医師との相性が合わない場合、変更や解約はできますか?
-
もちろんです。訪問診療は自由契約ですので、いつでも解約やクリニックの変更(セカンドオピニオン)が可能です。直接言いづらい場合は、ケアマネジャーを通して伝えてもらうのがスムーズです。
まとめ:訪問診療は家族に安心をもたらす選択肢
訪問診療の導入は、単に「薬をもらう場所が病院から家に変わる」だけではありません。
「24時間365日、いつでも相談できる医療チームがバックについている」という、圧倒的な安心感を手に入れることです。
費用についても、国の高額療養費制度を正しく使えば、月額1〜2万円程度(1割負担の場合)に収まることがほとんどです。
まずはご自身一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーやかかりつけ医に「そろそろ訪問診療の話を聞いてみたいのですが」と伝えてみてください。
その勇気ある一言が、親御さんとあなた自身の生活を、より穏やかで余裕のあるものに変える第一歩になります。
最後に、絶対に避けて通れない「実家のお金」の問題
訪問診療や宅配弁当を導入して日々の生活が安定したら、次に必ず「実家の資産整理」に目を向けておいてください。
今後、もし介護費用が親の年金だけで足りなくなった時、誰も住まなくなった実家を賢く活用する方法を知っておくだけで、最悪の「介護破産」を防ぐことができます。
▶︎親の施設費用、年金だけでは無理?「実家」を現金化する全手順
そして、介護において最も恐ろしい事態は「親の認知症が進行し、親名義の銀行口座が凍結されてお金が1円も引き出せなくなる」ことです。
口座が凍結されれば、医療費も施設費も、すべて「子どもの自腹」になります。
ご家族が身を削る前に、法律のプロの仕組みを頼ってください。



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