「特養(特別養護老人ホーム)は要介護3以上で数十人待ち。いつ入れるか分からない……」
「すぐに入れる民間施設は、月額費用が高くて親の年金だけでは毎月赤字になる……」
介護施設探しで最初にして最大の壁、それが「資金不足」です。
私はこれまで、看護師や有料老人ホームの管理者として多くのご家族を支援してきました。
現在は訪問診療クリニックの事務長をしていますが、「お金がないから」と無理な在宅介護を続け、子供世代が倒れてしまうケースを何度も見てきました。
この記事では、医療・介護現場の最前線にいる視点から、誰も住まなくなる実家を「介護費用の財布」に変え、親御さんとご自身の未来を守るための具体的な手順を解説します。
現実は厳しい。「年金のみ」で民間施設は赤字になる
まず、感情論ではなく「数字」で現実を直視しましょう。
親御さんの年金だけで、有料老人ホームの費用は賄えるのでしょうか。
施設の費用相場 vs 年金受給額
厚生労働省などのデータをもとに、一般的な有料老人ホーム(介護付・住宅型)の費用感をまとめました。
| 費用の種類 | 相場(目安) |
|---|---|
| 入居一時金 | 0円 〜 数百万円 ※高級施設では数千万円 |
| 月額費用 | 15万円 〜 30万円 ※家賃・食費・管理費・介護保険自己負担分含む |
一方、入ってくるお金(年金)はどうでしょうか。
- 国民年金(老齢基礎年金):
月額 平均 約5.6万円 - 厚生年金(夫婦2人分目安):
月額 平均 約22万円
出典:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
補足:負担限度額認定証について
所得が低い方には「負担限度額認定証」という制度があり、施設の食費・居住費が軽減されます。
しかし、これは主に特養や老健が対象であり、民間の有料老人ホームでは基本的に使えないため、やはり現金の持ち出しが必要です。
毎月の赤字を「子供」が補填してはいけない
仮に月10万円不足する場合、10年間で1,200万円が必要です。
この不足分を子供世代(あなた)の家計から出し続けるとどうなるか。
あなたの老後資金が枯渇し、「親の介護が終わったときには、自分が破産予備軍になっている」という共倒れ(介護破産)の状態に陥ってしまいます。
「実家」を売れば、選択肢は劇的に広がる
そこで、唯一にして最大の解決策となるのが、「誰も住まなくなる実家の現金化」です。
例えば、実家が2,000万円で売れたとしましょう。
この資金があれば、介護の質と家族の未来はここまで変わります。
【2,000万円で実現できること】
- 手厚い介護:
入居一時金を払い、人員配置が手厚い(2:1など)質の高い施設を選べる。 - 期間の安心:
毎月の赤字(例:10万円)を、16年以上補填し続けられる。 - 家族の平和:
子供への金銭的負担をゼロにし、教育費や自身の老後資金を守れる。
空き家になるであろう実家を放置して固定資産税を払い続けるより、親御さんご自身のために使い切るのが「生きた資産活用」です。
「とりあえず賃貸」や「放置」をおすすめしない理由
よくある相談が「売るのは寂しいから、貸して家賃収入を得たい」あるいは「忙しいからとりあえずそのまま」というものです。
不動産実務と介護現場の両方を知る立場から言えば、これらはハイリスクすぎます。
実家を「賃貸・放置」にするリスク
- 初期投資がかさむ(賃貸)
人に貸すレベルにするには、水回りや内装で数百万円のリフォーム代が先に出ていきます。 - 現金化の遅れ(賃貸)
いざ「入院でまとまったお金」が必要になっても、入居者がいる物件は安く買い叩かれやすく、すぐには売れません。 - 特定空家認定のリスク(放置)
適切に管理されていない空き家は固定資産税が最大6倍になる可能性があります。 - 近隣トラブルと賠償責任(放置)
台風で屋根瓦が飛んで隣の車を傷つけた場合など、所有者に賠償責任が発生します。
介護資金は「確実性」が命です。
不確定な家賃収入や、リスクのある放置を選ぶより、「売却して現金を確定させる」方が、資金計画が狂うリスクを排除できます。



知らないと損をするのが空き家の怖いところです。
「固定資産税が6倍」になる特定空家の判定基準や、解体費用をかけずに手放す裏ワザを知り、無駄な出費を未然に防いでください。
>>実家を放置すると固定資産税が6倍?特定空家の認定基準と「解体費ゼロ」で手放す裏ワザ
>>親が施設に入ったら実家はどうする?「特定空家」のリスクと介護費を生む2つの売却戦略
実家を「介護資金」に変える2つの出口
出口戦略は「売って手放す」か「売って住み続けるか」の2つ。
誰も住まないけど「古いから売れないから」と決めつけ、維持費(税金や管理費)を払い続けるのは、介護資金をドブに捨てているのと同じです。
また、「施設に入るお金は欲しいけど、親はまだ実家に住みたがっているから売れない」というのも売買契約内容によっては、売った後も住み続けられることができます。
現在はインバウンド需要やリノベブームにより、ボロボロの家でも高値で現金化できる好機。
普通に売買するもよし。
実家を売却してまとまった現金を得た後、買主と賃貸契約を結んでそのまま住み続けるのもよし。
「我が家にどれくらいの価値があるのか」を知るだけでも、今後の計画が立てやすくなります。
⚠️ 放置し続けると「持ち出し」が増えるだけ
- 固定資産税の負担:
住んでいなくても毎年数十万が消えていく。 - 特定空き家認定:
放置で劣化が進むと、税金が最大6倍になるリスク。 - 解体費用の高騰:
いざ手放す時に「200万円の解体費」を請求される悲劇。
悩んだら「売って手放す」か「売って住み続けるか」を担当者に相談しながら、以下の2社で見積もりを取ってもらいましょう!
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【重要】親が「認知症」になる前に動くべき理由
ここから先は、現場で多くの「後悔」を見てきた看護師・施設運営者として、あなたへ大切なお話をします。
不動産を売るには、持ち主である親御さんの「これを売ります」という明確な意思が法律上、絶対になければなりません。
もし、親御さんの認知症が進み、「判断能力がない」と診断されてしまったら……。
その瞬間、実家も預金もすべて「凍結」され、家族でも手出しできなくなります。
🚨 資産が凍結されると「地獄のループ」が始まる
「凍結」とは、文字通り何もできなくなること。
家族であっても、以下の行動がすべて封じられます。
- 実家の売却不可:
介護費用を作ろうにも、法的にハンコが押せません。 - 預金の引き出し停止:
親の通帳にあるお金でさえ、1円も下ろせなくなります。 - 成年後見人の重圧:
裁判所から選ばれた他人に、月2〜6万円の報酬を「親が亡くなるまで」一生払い続ける羽目になります。
「もっと早く準備しておけば、親のお金で最高の介護をさせてあげられたのに…」と泣き崩れるご家族を、私は何人も見てきました。
家族の絆と資産を守る、令和の新常識「家族信託」
この「資産凍結」という最悪のシナリオを回避できる唯一の方法が、「家族信託」です。
親が元気なうちに、資産の管理権を信頼できる子供に託しておく。
たったこれだけで、万が一認知症になっても、子供の判断で実家を売り、介護資金に充てることが可能になります。
⚠️「まだ大丈夫」が一番危ない。
親御さんと会話がしっかりできている「今」こそが、家族の未来を守るラストチャンスです。
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※注意:完全に認知症と診断された後では、このサービスは利用できません。手遅れになる前に、今すぐ確認を。
不動産売却に関するよくある質問
- 築40年以上で雨漏りもあるボロボロの実家ですが、売却できますか?
-
はい、売却可能です。
建物の価値がゼロと査定されても、「土地」としての価値が残っているためです。
最近は古家をリノベーションして住みたい層や、解体して更地として利用したい業者の需要があります。ただし、個人向けの「仲介」では買い手がつきにくい場合があるため、その際は「買取業者」へ依頼することで、現況のまま買い取ってもらえる可能性が高いです。
- 実家の中に大量の荷物やゴミが残っています。片付けてからでないと売れませんか?
-
売り方によって異なります。
一般的な「仲介」で個人の方に売る場合は、原則として引き渡しまでに空にする必要があります。遺品整理業者への依頼費用(数十万円〜)が先に必要になることが多いです。
一方、不動産業者による「買取」の場合は、荷物(残置物)そのままで引き渡せる契約がほとんどです。片付けの手間や費用の持ち出しを避けたい場合は、買取がおすすめです。
- 親が「認知症」と診断されていますが、家を売ることはできますか?
-
認知症の進行度合い(意思能力の有無)によります。
親御さんが「家を売る」という意味を理解し、司法書士の面前で意思確認ができれば売却可能です。
しかし、意思能力がないと判断された場合は、資産が凍結され売却できなくなります。その場合、家庭裁判所で「成年後見人」を選任する必要がありますが、手続きに数ヶ月かかり、売却のハードルも上がります。判断が微妙な場合は、早急に司法書士や不動産会社へ相談することをお勧めします。
- 施設に入居した後、しばらく実家を空き家にしておいても大丈夫ですか?
-
短期間なら問題ありませんが、長期放置はリスクが高いです。
人が住まない家は換気がされず、半年ほどで急速にカビや劣化が進行します。
また、2015年の「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、管理不全の「特定空家」に指定されると、固定資産税の優遇措置が外れ、税額が最大6倍になるリスクもあります。 - 実家の名義が、数年前に亡くなった父のままになっています。この状態で売れますか?
-
亡くなった方の名義のままでは売却できません。
売却活動を始める前に、あるいは売買契約と同時に、現在の相続人(お母様や子供たち)への「相続登記(名義変更)」が必要です。
現在は相続登記が義務化されています。不動産会社が提携している司法書士を紹介してくれるケースが多いので、まずは査定時に「名義が父のままです」と相談してください。 - 売却して利益が出た場合、税金は高くなりますか?
-
利益(譲渡所得)が出た場合、通常は約20%の税金がかかりますが、控除の特例が使える場合があります。
親御さんが住んでいた家を売る場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用されれば、売却益から3,000万円までが控除され、税金がかからないケースが多いです。
ただし、施設入居から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があるなど条件があります。詳細は税理士または税務署へご確認ください。



認知症や相続が絡むと、実家の売却は一気に複雑化します。
「共有名義」で後悔しないための注意点や、判断力が低下する前に家族で共有しておくべき知識をまとめています。
>>実家の相続、親族で揉めない唯一の方法。
「共有名義」の悲劇と換価分割の手順
まとめ:親のためにこそ、実家を「活用」しよう
「親が一生懸命建てた家を売るのは、親不孝ではないか……」
そう悩む必要はありません。
家という「モノ」に縛られて介護破産するよりも、その資産を使って親御さんに「温かい食事、清潔なシーツ、24時間の安心」を用意することの方が、何倍も親孝行だからです。
「いくらになるか」が分からなければ、施設のグレードも決められません。
売る・売らないは後で決めるとして、まずは現在の価値を知りましょう。
「年金+売却益」を元に、10年〜20年後も無理なく支払い続けられる施設をピックアップします。
資金の裏付けがあれば、入居審査もスムーズに通ります。
親御さんが安全な場所へ移ってから、空いた実家を正式に売却します。
まずは机上の査定だけでも構いません。
「我が家にはこれだけの埋蔵金がある」と知るだけで、精神的な余裕は大きく変わります。
親御さんとあなた自身の未来のために、最初の一歩を踏み出してください。









