相談者「要介護度は決まったけれど、結局どのサービスを使えばいいの?」
「ケアマネさんから色々提案されたけど、デイケアとデイサービスの違いすら分からない…」
介護保険のパンフレットを開くと、20種類以上もの難しい名称がズラリ。
それだけで思考停止してしまいますよね。
しかし、ご安心ください。現場で実際に頻繁に使われる「主要なサービス」はごく一部です。
この記事では、現役の在宅医療クリニック事務長兼看護師(元有料老人ホーム管理者)である私が、複雑な介護サービスを「自宅で使う」「施設に入る」「地域で使う」の3つに整理し、選び方のコツまで踏み込んで解説します。
介護保険は「使いこなしてこそ」意味があります。
親御さんの生活と、あなた自身の心身を守るための武器を、ここで手に入れましょう。
この記事でわかること
- 介護サービスの全体像マップ(スマホ保存推奨)
- 「デイサービス」と「デイケア」の決定的な違い
- 特養や老健など、施設の役割と「入りやすさ」のリアル
- プロが教える「失敗しないサービスの組み合わせ方」
【全体像】介護サービスは大きく「3階建て」で理解する
細かいサービス名を覚える前に、まずはこの「3つの箱」をイメージしてください。
利用者の状態や希望によって、どの箱から選ぶかが決まります。
自宅に住みながら利用する。
ヘルパーに来てもらったり、デイサービスに通ったりします。最も利用者が多く、基本となるグループです。
自宅を引き払い、施設に入所する。
特養(介護老人福祉施設)や老健などがここに含まれます。通称「公的施設」です。
住み慣れた地域で最期まで。
その市区町村に住民票がある人だけが使える、小規模で柔軟なサービスです。
【一覧表】介護保険サービス全26種類リスト(タップで開く)
介護保険で利用できるサービスは、細かく分けると以下の26種類(サービス24種+計画作成2種)になります。
※出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」より抜粋。2026年現在、介護療養型医療施設は廃止・転換されています。
| ① 居宅サービス(12種類) ※自宅で利用する基本サービス | |
| 1. 訪問介護 | ホームヘルパーが生活援助・身体介護を行う |
| 2. 訪問看護 | 看護師が医療処置や管理を行う |
| 3. 訪問入浴介護 | 専用浴槽を持ち込み入浴介助を行う |
| 4. 訪問リハビリテーション | リハビリ専門職が自宅で訓練を行う |
| 5. 居宅療養管理指導 | 医師・薬剤師等が療養上の管理・指導を行う |
| 6. 通所介護(デイサービス) | 施設に通い、入浴・食事・レクを行う |
| 7. 通所リハビリ(デイケア) | 施設に通い、リハビリを行う |
| 8. 短期入所生活介護 | 短期間宿泊する(ショートステイ) |
| 9. 短期入所療養介護 | 医療ケア付きで短期間宿泊する |
| 10. 特定施設入居者生活介護 | 有料老人ホーム等で受ける介護 |
| 11. 福祉用具貸与 | 車椅子・ベッド等のレンタル |
| 12. 特定福祉用具販売 | ポータブルトイレ等の購入費補助 |
| ② 施設サービス(3種類) ※施設に入所するサービス | |
| 13. 介護老人福祉施設(特養) | 終身利用が可能。要介護3以上が原則。 |
| 14. 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指すリハビリ施設。 |
| 15. 介護医療院 | 長期療養・医療ケアが必要な方向け。 |
| ③ 地域密着型サービス(9種類) ※市区町村民のみ利用可能 | |
| 16. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 24時間体制で頻回に訪問する |
| 17. 夜間対応型訪問介護 | 夜間の定期巡回や通報に対応する |
| 18. 地域密着型通所介護 | 小規模なデイサービス(定員18人以下) |
| 19. 認知症対応型通所介護 | 認知症の方専門のデイサービス |
| 20. 小規模多機能型居宅介護 | 通い・泊まり・訪問を柔軟に組み合わせる |
| 21. 認知症対応型共同生活介護 | グループホーム |
| 22. 地域密着型特定施設入居者生活介護 | 小規模な有料老人ホーム等での介護 |
| 23. 地域密着型介護老人福祉施設 | 小規模な特養(定員29人以下) |
| 24. 看護小規模多機能型居宅介護 | 小規模多機能に「訪問看護」をプラス |
| ④ ケアマネジメント(2種類) ※計画作成・相談 | |
| 25. 居宅介護支援 | ケアマネジャーによるケアプラン作成 |
| 26. 介護予防支援 | 要支援者のためのプラン作成(地域包括等) |
1. 居宅サービス(自宅で生活を続ける)
「住み慣れた自宅で暮らし続けたい」という方を支えるサービスです。
さらに動きによって「訪問系(来る)」「通所系(行く)」「宿泊系(泊まる)」の3つに分かれます。
① 自宅に来てくれる(訪問系)
- 訪問介護(ホームヘルプ)
-
ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・排泄の介助(身体介護)や、掃除・洗濯・調理(生活援助)を行います。
⚠️注意点:「来客へのお茶出し」「草むしり」「ペットの世話」など、本人以外のための行為や日常生活の範囲を超えることはできません。
- 訪問看護
-
看護師が訪問し、点滴・床ずれの処置・インスリン注射などの医療的ケアを行います。
「医療保険」と「介護保険」のどちらを使うかは疾患や年齢によりますが、主治医の指示書が必須です。
「訪問看護」と「訪問診療」は名前が似ていますが、役割も費用体系も全く異なります。
親の状態に合わない組み合わせを選んで無駄な費用を払い続ける前に、現場のプロが教える正しい使い分け基準を押さえておきましょう。
名前は似てても全く違う!訪問看護と訪問診療の違い・費用・役割をプロが徹底比較
② 施設に通う(通所系)
日中、施設に通ってサービスを受けます。
よく混同される「デイサービス」と「デイケア」の違いは、目的が全く異なります。
| サービス名 | 主な目的 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| 通所介護 (デイサービス) | 社会的孤立感の解消 家族のレスパイト(休息) 入浴・食事・レクが中心 | ・お風呂に入りたい ・人と話して楽しく過ごしたい ・家族が仕事の間、預かってほしい |
| 通所リハビリ (デイケア) | 身体機能の回復・維持 ADL(日常生活動作)向上 専門職によるリハビリが中心 | ・退院直後でリハビリが必要 ・麻痺があり機能を改善したい ・医療的な管理が必要 |
費用面では、医師やリハビリ専門職が配置されているデイケアの方が若干高い傾向にあります。
身体機能の維持が目的であればデイケアが適していますが、「楽しく通ってほしい」「お風呂に入ってほしい」という目的であれば、レクリエーションが充実しているデイサービスのほうが長続きするケースが多いです。
③ 短期間泊まる(宿泊系)
短期入所生活介護(ショートステイ)のことです。
数日から2週間程度、施設に宿泊して食事や入浴の介護を受けられます。
- 家族が冠婚葬祭や旅行で不在にする時
- 「介護疲れ」で家族が数日ゆっくり休みたい時(レスパイト利用)
在宅介護を長続きさせるコツは、この「レスパイト(休息)」を計画的に取り入れることです。共倒れを防ぐために、ケアマネジャーと相談して堂々と利用してください。
【重要】介護保険だけでは足りない時の「助け舟」
いくら介護保険を使っても、「保険適用外」になる隙間の時間がどうしても生まれます。
特に日々の食事準備や、同居家族のための家事、通院の付き添いなどは、介護保険ではカバーしきれません。
そんな時は、ご家族の負担が限界を迎える前に「自費の介護サービス」や「宅配食」を上手に組み合わせるのが現代の介護の鉄則です。親不孝でも何でもありません。
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看護師介護保険の枠内だけで全てを背負い込もうとすると、介護者であるご家族が心身ともに燃え尽きてしまいます。
施設入居(月20万〜)と比べて圧倒的にコストを抑えつつ、家族の自由時間と心の余裕を取り戻す「厳選自費サービス」の活用術をまとめました。
「介護保険だけ」はもう限界?在宅介護を劇的にラクにする「自費サービス」神5選と費用対効果
2. 施設サービス(家を引き払って入る)
在宅生活が困難になった場合の選択肢です。
「公的施設」と呼ばれ、民間の有料老人ホームより費用が抑えられるのが最大の特徴ですが、それぞれ入所目的が異なります。
特別養護老人ホーム(特養)
【終の棲家】
看取りまで対応でき、原則として一生涯暮らせる施設です。
費用が安く(所得に応じた負担軽減制度あり)非常に人気ですが、平成27年の制度改正により、原則として「要介護3以上」でないと入居申し込みができません。都市部では数百人待ち、数年待ちも珍しくないのが実情です。
「特養は安いから安心」と思っていても、居室タイプや所得に応じた手続きを知らないと毎月想定外の自己負担が発生します。
公的な「補足給付」を正しく申請し、費用負担を半額以下に抑えて年金の範囲内で暮らすための具体的手順を確認してください。
自己負担を半額に抑える!特養の費用相場と補足給付の申請裏ワザを現役事務長が解説
介護老人保健施設(老健)
【自宅と病院の中間地点】
病院から退院してすぐ自宅に戻るのが不安な場合などに利用します。
目的はあくまで「在宅復帰」なので、理学療法士などが配置されリハビリが充実しています。
⚠️注意:原則として3〜6ヶ月程度で退所を求められます。終の棲家にはなりません。
介護医療院
【病院機能+生活の場】
長期的な医療管理が必要な要介護者のための施設です。
経管栄養(胃ろう)や頻回の喀痰吸引、インスリン注射など、医療処置が多くて特養では受け入れ困難な方が対象となります。医師や看護師の配置が手厚いのが特徴です。
3. 地域密着型サービス(地元の力で支える)
2006年に新設されたカテゴリーで、「認知症になっても、重度になっても、住み慣れた地域で暮らし続ける」ために作られたサービスです。
利用者は原則として「その市区町村の住民」に限られます。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症の診断を受けた方が、1ユニット5〜9人の少人数で共同生活を送る「家」です。
職員と一緒に料理や掃除を行うことで、残っている能力を引き出し、認知症の進行を和らげる効果が期待できます。「要支援2」から利用可能です。
小規模多機能型居宅介護
これは名前は覚えにくいですが、最強の在宅支援サービスと言えます。
通常、デイサービス・ショートステイ・訪問介護は別々の事業所と契約しますが、これらはスタッフも違い、連絡調整が大変です。
小規模多機能なら、1つの事業所と契約するだけで「通い」「泊まり」「訪問」の全てを同じスタッフチームが提供してくれます。
「昼に通っていたけど、急に体調が悪くなったからそのまま泊まる」といった柔軟な対応ができるのが最大の強み。
定額制なので費用も安心です。
【番外編】環境を整えるサービス
人の手による介護だけでなく、生活環境を整えることも介護保険の重要な役割です。
福祉用具貸与(レンタル) / 特定福祉用具販売(購入)
車椅子、特殊寝台(介護ベッド)、歩行器、手すりなどは、月額制でレンタル可能です。
例:電動ベッド 月1,000円〜1,500円程度(1割負担の場合)
※要支援・要介護1の方は原則として車椅子やベッドのレンタルができないなど、要介護度によって制限があります。
一方、ポータブルトイレや入浴用いすなど、他人が使ったものを再利用するのが心理的に抵抗がある品目(直接肌に触れるもの)は、購入費の補助が出ます(年間10万円が上限)。
看護師ベッドや車椅子のレンタルだけでなく、日常の消耗品や便利グッズをどう選ぶかで在宅介護の負担は劇的に変わります。
ドラッグストアの市販品で損をせず、看護師が現場目線で厳選した「本当に役立つ神アイテム」をチェックしておきましょう。
知らないと損する!看護師が選ぶ在宅介護の「神アイテム」10選【準備リスト完全版】
住宅改修(リフォーム)
手すりの取り付け、段差の解消、和式トイレから洋式への変更などが対象です。
一人あたり20万円まで(生涯で原則1回、要介護度が大きく上がった場合などは例外あり)の工事費に対し、保険が適用されます。
⚠️絶対的なルール:必ず「工事前」に市区町村へ事前申請が必要です。事後申請は一切認められません。まずはケアマネジャーに相談してください。
まとめ:まずは「ケアマネジャー」に相談することから
これだけ多くのサービスがありますが、ご家族が全てを詳しく知っておく必要はありません。
大切なのは、「お風呂に入れるのが大変」「日中一人にするのが心配」「夜中のトイレ介助で家族が眠れない」といった具体的な「困りごと」をケアマネジャーに包み隠さず伝えることです。
プロであるケアマネジャーが、限られた支給限度額の中で、最適なサービスをパズルのように組み合わせてケアプランを作成してくれます。
まずは地域包括支援センターや役所で、要介護認定の申請とケアマネジャー探しから始めましょう。
看護師どんなに優れた介護サービスがあっても、それを組み立てるケアマネジャー選びで失敗すると、希望通りのプランが組めず後悔することになります。
役所から渡される膨大なリストの中から、本当に頼れる優秀な担当者を見極める3つの基準を公開しています。

