家族の在宅療養を考え始めたとき、多くの方が最初に迷うのが「訪問診療」と「往診の違い」です。
- 名前は似ているが、何がどう違うのかわからない
- 費用はどれくらいかかるのか不安
- 自分の家族にはどちらが必要なのか判断できない
私は、重症心身障害病棟・救命救急HCUでの看護師経験を経て、有料老人ホーム管理者・看護部長・福祉事業部統括部長を務め、現在は在宅医療クリニック事務長として在宅医療・訪問診療・医療介護連携に携わっています。
現場で最も多く受ける質問が、まさにこのテーマです。
結論から言うと、訪問診療は「定期・計画的な医療」、往診は「急変時の臨時対応」です。
この記事では、制度・費用・具体例をもとに、在宅医療が初めての方でも「自分の家族には何が必要か」を判断できるように解説します。
訪問診療とは?【答え】定期的に医師が自宅へ来る在宅医療

訪問診療とは、通院が困難な方を対象に、医師があらかじめ診療計画を立て、定期的に自宅や施設を訪れて行う医療です。
訪問診療の主な目的
- 慢性疾患・持病の安定した管理
- 症状悪化の予防と早期発見
- 生活環境を踏まえた医療判断
- 訪問看護・介護サービスとの連携
訪問診療で受けられる医療内容
- 定期診察(問診・視診・聴診)
- 処方・薬剤調整
- 採血・尿検査などの検査
- 点滴・褥瘡処置
- 胃ろう・在宅酸素療法の管理
- 認知症の医学的フォロー
- 自宅での看取り支援
訪問診療の費用目安【2024年度】
訪問診療の費用は、主に「在宅時医学総合管理料等」と「訪問診療料(1回888点)」で構成されます。
自己負担1割の場合、月額6,000〜10,000円前後が一般的で、月ごとの費用が安定しやすいのが特徴です。
制度の詳細は公的資料をご確認ください。
参考:厚生労働省|在宅医療


往診とは?【答え】急な体調変化に対応する臨時の診療

往診とは、発熱・呼吸苦・強い痛みなど、急な症状悪化時に医師が臨時で自宅を訪れて行う診療です。
往診が必要になりやすい場面
- 急な発熱や感染症が疑われるとき
- 呼吸苦やSpO₂低下
- 強い痛み・吐き気・脱水症状
- 転倒や外傷
- 認知症による急激な混乱(せん妄)
往診の費用目安
| 区分 | 点数 | 自己負担(1割) |
|---|---|---|
| 往診料 | 720点 | 約720円 |
| 緊急加算 | 325点 | 約325円 |
| 夜間加算 | 650点 | 約650円 |
| 深夜加算 | 1,300点 | 約1,300円 |
深夜帯では自己負担2,000円前後になることもあり、時間帯によって費用差が出ます。
出典:厚生労働省|診療報酬制度
訪問診療と往診の違い【一覧比較】
| 項目 | 訪問診療 | 往診 |
|---|---|---|
| 診療の性質 | 定期・計画的 | 臨時・緊急 |
| 目的 | 病状管理・予防 | 急変対応 |
| 費用 | 月額で安定 | 時間帯で変動 |
| 役割 | 在宅医療の土台 | 安全網 |
在宅医療では、「訪問診療を基本に、必要なときだけ往診を使う」のが標準的な考え方です。
訪問診療と往診の正しい使い分け【結論】

訪問診療で予防と安定管理を行い、急変時のみ往診を利用することで、本人・家族双方の不安と負担を最小限にできます。
- 日中の小さな変化は早めに共有する
- 夜間に連絡すべき症状を事前に確認しておく
- 訪問看護・介護サービスと日常的に連携する

訪問診療と往診に関するFAQ
- 訪問診療と往診は同時に利用できますか?
-
可能です。訪問診療を受けていても、急変時には往診が行われます。
- 往診を呼ぶか救急車を呼ぶか迷った場合は?
-
命の危険がある場合は迷わず119番、それ以外はまず医療機関へ連絡しましょう。
- 訪問診療は誰でも受けられますか?
-
原則として通院困難な方が対象で、最終的な判断は医療機関が行います。
- 施設入居中でも訪問診療は利用できますか?
-
有料老人ホームやグループホームなど、多くの施設で利用可能です。
- 往診の回数が増えると費用負担は大きくなりますか?
-
往診は1回ごとの算定のため、回数が増えると自己負担額も増加します。
- 訪問診療を始めるには何から相談すればいいですか?
-
かかりつけ医、ケアマネジャー、地域包括支援センターへの相談が第一歩です。


在宅医療で迷ったら|最初の一歩は相談から

訪問診療と往診の違いを理解するだけで、在宅療養への不安は大きく軽減します。
「うちの場合はどうすればいい?」と感じたら
- 訪問診療クリニック
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センター
などに相談して今後の方向性を一緒に考えてもらいましょう。
生活状況に合った医療・介護体制を一緒に整理してもらえます。

