「ラーメンだけは絶対にダメだと医者に言われている」
「でも、街中でスープの匂いを嗅ぐと、どうしても食べたくなる……」
その気持ち、医療現場にいる私にも痛いほどよく分かります。国民食であるラーメンを一生我慢するというのは、生きがいを奪われるようなストレスですよね。
正直に申し上げます。ラーメンは腎臓病にとって「最も危険な外食」の一つです。
1杯で1日分の塩分制限(6g)を軽々と超えてしまうことも珍しくありません。
この記事では、看護師かつ施設管理者としての視点から、ラーメンによる腎臓へのダメージを最小限に抑える「プロの防衛術」を伝授します。
なぜラーメンは危険なのか?「汁を残せばOK」の嘘
よく「スープを飲まなければ大丈夫」と言う方がいますが、これは半分正解で半分間違いです。
実は麺と具材にも塩分が隠れています。
麺と具材の隠れ塩分
- 麺そのものの塩分:中華麺はコシを出すために「かんすい」や食塩を使って打たれています。茹でても完全には抜けず、麺だけで1g〜2g程度の塩分を含んでいることが多いのです。
- スープを吸った麺:麺をすする時、表面にはスープが絡みついています。汁を飲まなくても、麺と一緒にかなりの量のスープを体内に入れていることになります。
- 加工肉(チャーシュー・メンマ):これらは塩漬けや醤油煮込みで作られる「塩分の塊」です。
腎臓を守るための「ラーメン攻略」4つの鉄則
それでも食べたい時は、以下の4つを徹底してください。これが守れないなら、ラーメンは諦めるべきです。
STEP1:「つけ麺」を選び、麺を「半分だけ」つける
通常のラーメンよりも、「つけ麺」の方が塩分コントロールがしやすいです。理由はシンプルで、「口に入るスープの量を自分で調整できるから」です。
おすすめの食べ方
麺をつけ汁にどっぷり浸すのではなく、「麺の下半分〜3分の1」だけつけて食べてください。江戸っ子の蕎麦の食べ方と同じです。
これにより、摂取する塩分量を大幅にカットできます。
※当然、残ったつけ汁は「スープ割り」にせず、全て残します。
STEP2:レンゲは使わない(物理的遮断)
通常のラーメンを頼む場合、注文時に「レンゲは要りません」と店員さんに伝えてください。
手元にあると、無意識のうちにスープをすくって飲んでしまいます。
「物理的に飲めない状況」を作ることが、意志の力に頼らない最強の防御策です。
STEP3:「野菜増し」はカリウムの罠
「ヘルシーにするために野菜たっぷりのタンメンにしよう」
これは腎臓病の方には逆効果になることがあります。
ラーメン屋の野菜は、家庭のように「茹でこぼし(カリウム抜き)」をしていないことがほとんどです。
炒めた野菜やスープで煮込んだ野菜は、カリウムが溶け出さずに残っています。
野菜は「ほどほど」にし、麺を中心に食べるという、普段の食事療法とは逆の思考が必要です。
STEP4:頻度は「月に1回」まで
どんなに工夫しても、ラーメンは高塩分・高リン・高カリウム食です。
毎週食べていては、確実に数値は悪化します。
「検査結果が良かった月のご褒美」として、月に1回楽しむ。それくらいの距離感が、透析を遠ざけます。
結局、何ラーメンなら食べていいの?【リスク判定表】
味の濃さや種類によって、リスクはどう変わるのでしょうか。
| 種類 | 判定 | 解説・注意点 |
|---|---|---|
| つけ麺 | 推奨 | 先述の通り、つける量を調整できるため最も安全。 ただし麺の量が多い店が多いので「麺少なめ」オーダーが必須です。 |
| あっさり醤油 塩ラーメン | 注意 | 「あっさり=塩分が少ない」わけではありません。 塩味がダイレクトに来るため、スープの塩分濃度は意外と高いです。汁は絶対に飲まないこと。 |
| 味噌 豚骨 | 危険 | 味噌や豚骨スープは、塩分だけでなく「リン」や「カリウム」も多く溶け込んでいます。 とろみがあり麺に絡みつきやすいため、摂取量が増えがちです。 |
| インスタント カップ麺 | NG | 添加物(無機リン)の宝庫です。吸収率が高い無機リンは血管を石灰化させます。 「減塩タイプ」であっても、麺の保存料などにリン酸塩が含まれているので推奨しません。 |
「ラーメンはやっぱりハードルが高い」と感じた方は、まずはもっと手軽なコンビニ・スーパー惣菜の安全な選び方や、ストレス解消になる腎臓病でもOKな市販のお菓子から試してみるのがおすすめです。
食べてしまった後の「緊急リセット術」
ラーメンを食べた後、凄まじく喉が渇きませんか? それは体が「塩分濃度が高すぎる!水をくれ!」と悲鳴を上げている証拠です。
ラーメンを食べた日は、体の中に塩分と老廃物が溜まっている状態です。
これを解消するには、その後の2〜3食で徹底的な「減塩・低タンパク」を行い、プラマイゼロ(帳尻合わせ)にするしかありません。
具体的には、次の食事を「塩分1.5g以下、タンパク質15g以下」に抑える必要があります。
しかし、ラーメンの後の満足感から、自炊で質素な食事を作るのは精神的に辛いものです。
「宅配弁当」という切り札
だからこそ、「腎臓病対応の宅配弁当」に頼ってください。
ラーメンという「最強の攻め」の食事をした後は、計算され尽くした宅配弁当という「最強の守り」でバランスを取るのです。
冷凍庫にストックがあれば、レンジで温めるだけで確実に数値をコントロールできます。
「ラーメンを食べても、これで調整すれば大丈夫」。その安心感が、あなたのQOL(生活の質)を守ります。
以下の記事で、実際に私が食べて成分をチェックした「腎臓病対応の美味しいお弁当」を紹介しています。ラーメン好きの方こそ、必ずチェックしておいてください。

腎臓病の方からラーメンに関するよくある質問
- つけ麺の「スープ割り」は飲んでもいいですか?
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絶対にNGです。
スープ割りは、残った高濃度のつけ汁をお湯や出汁で割って飲む行為です。これを飲むと、せっかくつけ麺を選んで回避した塩分を全て摂取してしまうことになります。「麺を食べ終わったら即退店」が鉄則です。 Q. 家で作るラーメンなら大丈夫ですか? - 工夫次第でリスクを減らせます。
-
市販の袋麺を作る場合、「粉末スープを規定量の半分だけ使う」「麺を別鍋で茹でて湯切り(茹でこぼし)する」などの工夫で、外食よりは塩分・カリウムを抑えられます。ただし、インスタント麺はリンが多いので、生麺タイプを選びましょう。
- 「二郎系」のような野菜山盛りラーメンはどうですか?
-
最も避けるべきラーメンの一つです。大量の茹で野菜にはカリウムが残留しており、チャーシューや背脂の量も桁違いです。麺の量も通常店の2〜3倍(300g以上)あることが多く、塩分・タンパク質・リン・カリウム全ての制限を大幅に超過します。
- 餃子やチャーハンをセットにしてもいいですか?
-
ラーメン単品にしてください。
餃子の皮や具、チャーハンの味付けにも多くの塩分が含まれます。ラーメンだけで塩分6g近くになる可能性があるため、サイドメニューを追加すると確実に1日の許容量をオーバーします。「ラーメンのみ」で満足するようにしましょう。 - 食後にカリウム排出を促すお茶やサプリを飲めば平気?
-
科学的根拠に乏しく、危険です。
特定のお茶(ナタマメ茶など)で腎機能が回復したり、塩分が帳消しになることはありません。むしろ、サプリメントの成分が腎臓に負担をかけるケースもあります。自己判断で民間療法に頼らず、主治医の指示に従ってください。 - カリウム吸着剤などを飲んでいれば食べ放題ですか?
-
薬は「魔法の盾」ではありません。
カリウム吸着剤やリン吸着剤は、あくまで適切な食事療法を行っても抑えきれない分を補助するものです。暴飲暴食を帳消しにするほどの強力な効果はありません。薬を飲んでいるからといって油断は大敵です。
まとめ:月1回の楽しみとして、賢く付き合う
- 基本は「つけ麺」を選び、汁は半分だけつける。
- スープは「レンゲなし」で物理的に飲まない。
- 頻度は「月1回」のご褒美に留める。
- 食後は必ず「宅配弁当」で厳密に数値を調整する。
ラーメンは決して「悪」ではありませんが、付き合い方を間違えると腎臓に牙を剥きます。
正しい知識という「武器」を持って、美味しく、安全に楽しんでください。

