訪問診療で後悔しないために|よくある誤解5つと専門家が教えるクリニック選びのポイント

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訪問診療で後悔しない最大のポイントは「誤解をなくし、医療体制の限界と特徴を正しく理解すること」です。

この記事では、よくある誤解5つ・クリニック選びの必須チェック項目・訪問診療より施設の方が向くケースを、看護師(重症心身障害病棟・救命救急HCU)・有料老人ホーム管理者・看護部長・福祉事業部統括・在宅医療クリニック事務長として現場を経験してきた立場から体系的に解説します。

家族の通院が難しくなったとき、「訪問診療を使えば安心できるのでは?」と考える方は多くいます。
しかし、制度や医療体制への理解が不足したまま導入すると、「こんなはずじゃなかった…」という後悔につながることも珍しくありません。

私はこれまで、病院・施設・在宅医療をまたいで数多くの家族相談に関わってきましたが、トラブルの多くは「誤解」と「事前確認不足」で防げるものでした。

この記事では、訪問診療を検討している家族が「選んでよかった」と思えるよう、後悔を防ぐための重要ポイントを専門的視点でわかりやすくお伝えします。

  • 訪問診療で起こりやすい「誤解」とその正しい理解がわかる
  • 後悔しない訪問診療クリニックの選び方・確認ポイントが整理できる
  • 訪問診療より施設入居が向くケースの目安がイメージできる

読み終える頃には以上の3つを達成しているはずです。

※本記事は、臨床・在宅医療の経験および公的機関の情報を参考に作成していますが、個々の診断や治療方針を示すものではありません。最終的な判断は、必ず担当の医師やケアマネジャーとご相談ください。

目次

訪問診療で後悔しないための結論まとめ

最初にこの記事の結論をまとめると、訪問診療で後悔しないためのポイントは次の3つです。

  • 訪問診療の役割と限界を正しく知る(病院の完全な代わりではない)
  • 「24時間対応」の中身・緊急時対応の流れを具体的に確認する
  • 介護負担や生活状況によっては、施設入居も早めに選択肢に入れる

この記事を読み進めることで、「自宅で最期まで」「まずは在宅で様子を見たい」「将来的に施設も検討したい」といったさまざまな希望に対して、現実的な選択肢と準備のポイントが見えてきます。


訪問診療の役割や対象者、費用の全体像をあらかじめ押さえておきたい方は、訪問診療の仕組みと料金の基本を整理した解説や、医師と看護師それぞれの役割を比較できる訪問診療と訪問看護の違いのまとめも参考にしてみてください。

訪問診療が注目される背景と家族が抱えやすい不安

日本では高齢化が進み、65歳以上が人口の約3割、75歳以上の割合も年々増加しています。内閣府「高齢社会白書」では、今後も高齢者人口が高い水準で推移するとされています。

高齢になるほど足腰の弱さや持病により通院負担が増え、内閣府などの調査でも、後期高齢者ほど通院頻度が高くなる一方で、通院が難しい人も多いことが示されています。高齢者の健康・福祉に関する意識調査などからも、「通院に不便を感じる高齢者」は今後さらに増えると考えられます。

こうした背景もあり、厚生労働省は在宅医療・訪問診療の推進を重要な政策として位置づけています。在宅医療の推進についてでは、地域で安心して療養できる体制づくりや、救急医療との連携強化が進められています。

一方、現場では制度への理解不足により、以下のようなギャップが生まれやすいのが実情です。

  • 「医師がいつでもすぐ来てくれるものだと思っていた」
  • 「病院と同じ医療が自宅で受けられると思っていた」
  • 「訪問診療を入れれば介護がかなり楽になると思っていた」

まずは、訪問診療における代表的な誤解を整理して理解を深めましょう。

訪問診療でよくある誤解5選(後悔の原因TOP5)

ここからは、私が病院・高齢者施設・在宅医療クリニックで家族相談をお受けする中で、特にトラブルや後悔につながりやすかった「誤解」を5つに絞って解説します。

誤解①「訪問診療=往診」だと思ってしまう

訪問診療:計画的・定期的に行う診察(外来の代わり)
往診:急変時などの臨時の訪問

「具合が悪くなったら、必ず医師が家に来てくれる」というイメージを持つ方が非常に多く、これが最も大きな誤解です。

訪問診療は「外来に通えない人のための、計画的なかかりつけ診療」とイメージするとわかりやすくなります。
救急車や救命救急のような24時間の救急医療を代替するものではありません。

制度上も、訪問診療は「在宅で療養している患者さんに対する定期的な診療」として位置づけられており、急変時の対応は地域の救急体制や連携病院と役割分担しながら行うことが前提です。

誤解② 24時間いつでも“即時訪問”してもらえる

訪問診療を行う医療機関には24時間対応が求められますが、「24時間対応=24時間いつでも往診」ではありません。
ここを誤解すると、「夜中に電話したのに来てくれなかった」といった不満につながります。

  • 夜間・休日はまず電話でトリアージ(状態の聞き取り)
  • 必要性が高いと医師が判断した場合のみ往診
  • 夜間の対応医が外部委託(当直医)というケースも多い

「24時間=いつでも家に来てくれる」ではないため、事前確認が必須です。
初回面談の際に、必ず次のような質問をしておきましょう。

  • 夜間・休日に電話したら、誰が対応しますか?(医師/看護師/コールセンターなど)
  • どのような状態なら往診になりますか?
  • 往診が決まってから、だいたい何分〜何時間で到着しますか?

誤解③ 自宅で病院と同じ医療が受けられると思っていた

訪問診療はとても心強い仕組みですが、できること・できないことには明確な限界があります。

自宅でできない医療の例
・CT/MRIなどの高度な画像診断
・外科手術
・ICU/HCUレベルの集中治療
・大量輸血や高度急性期治療

訪問診療の中心は、薬剤調整・症状緩和・慢性疾患の管理・在宅での看取り支援です。
病院の完全な代替ではなく、「入院と通院のあいだを埋める在宅医療」と捉えた方が、現実的な期待値になります。

「どこまで自宅でできて、どこからは入院が必要なのか」は、病状によって大きく変わります。
主治医との話し合いの中で、今後想定される急変や病状変化のシナリオを一度整理しておくと安心です。

誤解④ 毎回同じ医師が診てくれると思っていた

複数の医師が在籍する訪問診療クリニックでは、担当医が交代で訪問することも珍しくありません。
「毎回同じ先生に診てもらえる」と思い込んでいると、実際に交代があったときに不信感につながることがあります。

重要なのは、「誰が来ても安心できる引き継ぎ体制」があるかどうかです。
具体的には、次のようなポイントを確認しておきましょう。

  • 担当医をある程度固定してもらえるか
  • カルテ以外に申し送りシートや定期カンファレンスなどのルールがあるか
  • 診察のあとに家族が相談できる窓口(相談時間・連絡方法)が決まっているか

誤解⑤ 訪問診療を使えば介護負担が軽減される

訪問診療はあくまで医療サービスであり、介護そのもの(身体介護や生活援助)を代わりに行ってくれるわけではありません。

  • 排泄介助
  • 入浴介助
  • 夜間の見守り・体位変換

これらは主に介護保険サービス(訪問介護・通所介護〈デイサービス〉・ショートステイなど)の役割です。
介護保険サービスの解説(厚生労働省)でも、医療と介護の役割分担が示されています。

介護負担が大きい家庭では、訪問診療だけでは限界があります。
「医療」と「介護」をセットで考え、ケアマネジャーとも相談しながら、介護保険サービスや必要に応じて施設入居も含めて検討することが大切です。

誤解が起きる理由と後悔を防ぐための5つのチェックポイント

訪問診療で後悔する家庭に共通するのは、最初に確認しておくべき質問が抜けていることです。
ここでは、私が在宅医療クリニックの事務長としてご家族に必ずお伝えしている、「最低限これだけは確認してほしい5項目」を紹介します。

  1. 緊急時の訪問までの平均所要時間(目安目標:60分以内)
  2. 医師の人数・引き継ぎ体制・担当医固定の可否
  3. 対応可能な医療処置の範囲(点滴・在宅酸素・褥瘡処置・カテーテル管理など)
  4. 訪問看護との連携の有無と連携方法(連携の質で満足度が大きく変わる)
  5. 急変時の入院先(連携病院)が明確に決まっているか

この5つを押さえるだけで、「選ばなきゃよかった」という後悔はかなりの確率で防げます。初回説明や契約前の面談で、遠慮せずに具体的に質問してみてください。
医療者側も、これらの質問をしっかりしてくれるご家族には、むしろ安心感を持つことが多いです。

後悔しない訪問診療クリニックの選び方

ここからは、実際に訪問診療クリニックを選ぶ際に見ておきたいポイントを、「診療内容」「24時間体制」「連携」「費用」の4つの視点から整理します。

① 診療実績・専門領域が家族の状態と合っているか

がんの緩和ケア、認知症、神経難病、心不全、慢性呼吸不全など、クリニックごとに得意とする領域は異なります。
あなたの家族が必要とする医療に強いかどうかを、必ず確認しましょう。

ホームページに「対応疾患」「年間の看取り件数」「がん・難病の在宅医療実績」などが掲載されている場合、それらは一つの目安になります。
見学や面談の際に、「同じような病状の方の診療経験があるか」を率直に聞いてみるのもおすすめです。

② 24時間対応の実働体制(ここが最重要)

「24時間対応」と書かれていても、その中身は大きく違います。
特に次の3点を確認しましょう。

  • 夜間の電話対応者(医師か看護師か?コールセンター経由か?)
  • 往診が必要になった場合の平均到着時間の目安
  • 夜間・休日の当直医がクリニックの医師か、外部委託の医師か

特に夜間や休日は、「電話相談のみで終わるケース」と「往診に来てくれるケース」の違いが、精神的な安心感に直結します。
「実際にはどれくらいの頻度で夜間往診をしていますか?」と、実務に近い質問もできるとベストです。

③ 訪問看護との連携

訪問診療と訪問看護を組み合わせると、「医師の診察」と「看護師による日常のフォロー」がセットで受けられ、在宅生活が安定しやすくなります。

同じ医療法人の訪問看護ステーションと連携している場合や、地域の訪問看護と定期的にカンファレンスを行っている場合は、情報共有がスムーズで、急変時の対応も連携しやすい傾向があります。

面談の際には、「訪問看護とどのように連携していますか?」「普段から情報共有の仕組みはありますか?」といった点も確認してみてください。

④ 急変時の入院先が明確か

在宅医療だからといって、入院が全くなくなるわけではありません。
むしろ急変時に「どこの病院にどうやって運ぶか」が決まっているほど、在宅療養は続けやすくなります。

「どの病院と連携していますか?」「救急搬送になった場合の流れを教えてください」と聞き、救急要請〜搬送〜受け入れの流れを一度イメージしておきましょう。
これはご家族の不安を大きく下げるポイントです。

⑤ 費用の透明性

訪問診療の費用は、医療保険の種類・自己負担割合(1〜3割)・訪問回数・加算の有無などによって変わります。

  • 在宅患者訪問診療料・在宅時医学総合管理料などの管理料
  • 夜間・休日・深夜対応の加算
  • 医師・看護師の交通費や出張費

説明が丁寧で明朗なクリニックほど、費用トラブルは少ない印象があります。
「今の病状で、月にどのくらいの自己負担がかかりそうか」を、モデルケースとして試算してもらうと安心です。


毎月どのくらいの自己負担になるのか具体的な目安を知りたい方は、訪問診療の導入手順とモデルケース別の金額をまとめた訪問診療の費用シミュレーション解説や、自宅療養と比べたときの負担感をイメージしやすい老人ホーム・介護施設の費用相場比較ガイドもチェックしておくと安心です。

訪問診療より施設入居が向いているケース

在宅医療クリニックで家族相談を受けていると、「本当は施設のほうが安全なのに、がんばりすぎて在宅を続けている」ケースに出会うことがあります。
次の条件に複数当てはまる場合、訪問診療よりも施設入居のほうが安全・負担軽減につながることがあります。

  • 夜間の見守りが常に必要で、家族がほとんど眠れていない
  • 家族の介護負担が限界に近く、体調不良や離職の危険がある
  • 医療依存度が高い(酸素・点滴・褥瘡処置・カテーテル管理など)
  • 自宅が介護に向かない構造(段差が多い・トイレや浴室が狭いなど)
  • 一人暮らしで転倒リスクが高い/日中ほとんど見守りができない

訪問診療と施設入居は「どちらが良い悪い」ではありません。
ご本人の希望・家族の介護力・医療的な必要度・住環境などを総合的にみて、もっとも安全で続けやすい形を選ぶことが大切です。

在宅医療を続けながら、早めに老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの見学・情報収集を進めておくと、「もう限界なのに何も決まっていない」という状態を避けられます。
私は施設管理者としても、「限界になる前の相談」を強くおすすめしています。


在宅介護を続けるか施設入居に切り替えるか迷っている方は、医療体制や家族の負担・費用を総合的に比較できる在宅医療と施設入居の選び方ガイドや、ご家族に合うタイプの施設を整理しながら検討できる老人ホーム・高齢者施設の選び方の解説もあわせて読んでみてください。

なお、東海エリア(愛知・岐阜・三重・静岡)にお住まいの方で、在宅医療と施設入居のどちらが良いか迷っている場合は、私がこれまでの経験(重症心身障害病棟・救命救急HCUの看護師/有料老人ホーム管理者・看護部長・福祉事業部統括/在宅医療クリニック事務長としての施設紹介支援や医療介護連携の実務)を踏まえて、無料で施設紹介のご相談もお受けしています。

医療依存度やご家族の介護負担、予算感、希望する看取りのイメージなどを整理しながら、訪問診療との相性も含めて候補施設を一緒に絞り込んでいきます。
「どの種類の施設が合うのか分からない」「まずは話を聞きながら方向性だけ決めたい」といった段階でも大丈夫ですので、東海エリアでの施設探しに悩んでいる方は、下のボタンからお気軽にご相談ください。

よくある質問

訪問診療と往診の違いは何ですか?

訪問診療は月1〜2回など計画的・定期的に医師が訪問し、外来の代わりとなる診療です。一方、往診は急変時などに臨時で実施される例外対応で、普段から訪問診療を利用している方に対して行われます。
日常診療は訪問診療、急変時は往診と整理すると分かりやすくなります。

「24時間対応」と書いてあれば、夜中でも必ず来てもらえますか?

「24時間対応」は多くの場合「24時間連絡が取れる」という意味であり、必ずしも夜間に往診してくれるわけではありません。
夜間はまず電話で状態を確認し、緊急性が高い場合のみ往診となるのが一般的です。契約前に「往診判断の基準」「到着の目安時間」を確認しておきましょう。

訪問診療と訪問看護の違いは?どちらを先に使うべき?

訪問診療は医師による診察・処方・病状判断、訪問看護は看護師による日常の療養支援・状態観察・医師指示に基づく処置が中心です。
どちらが先というより、主治医とケアマネと相談しながら併用するケースが多く、在宅生活の安定につながります。

自宅でどこまでの医療が受けられますか?

在宅では点滴、在宅酸素、褥瘡処置、疼痛コントロール、カテーテル管理、在宅での看取りなど幅広い慢性期・終末期医療が可能です。
一方、CT/MRI、手術、ICUレベルの治療は病院でしか行えません。今後の変化を見据え「どこまで自宅で、どこから入院が必要か」を主治医と共有しておくことが重要です。

訪問診療と施設入居、どちらが良いか迷っています

どちらが良い・悪いではなく、①本人の希望 ②家族の介護力 ③医療的必要度 ④自宅環境の4つで判断するのがおすすめです。
夜間の見守りが必要な場合や、家族の負担が限界に近い場合は、早めに施設入居を検討した方が安心なケースも多くあります。迷っている段階で、地域包括支援センターや施設相談窓口に相談すると整理しやすくなります。

訪問診療の費用がどのくらいかかるか不安です

費用は医療保険の種類、自己負担割合、訪問回数、夜間・休日加算などで変わります。一般的には1〜3割負担で月数千円〜1万円台後半程度となることが多いですが、病状や処置内容により差があります。
契約前に「今の病状なら月額いくらくらいか」をクリニックに試算してもらうことをおすすめします。

まとめ|訪問診療で後悔しないための本質

訪問診療は、通院が難しい方にとって非常に心強い制度ですが、正しく理解せずに「なんとなく安心できそうだから」と導入すると、期待とのギャップから後悔につながることがあります。

  • 訪問診療と往診の違い、病院との違いなどの誤解を解消する
  • 「24時間対応」「緊急時の動き方」など、医療体制の中身を具体的に確認する
  • 介護負担や生活状況によっては、施設入居という選択肢も早めに検討する

在宅医療・介護の推進に関する資料でも示されているように、日本では「自宅で療養したい」と考える人が多い一方で、介護力や住環境の制約も現実として存在します。

あなたの家族にとって最適な療養環境は、訪問診療・訪問看護・介護サービス・施設の組み合わせで決まります。
一人で抱え込まず、主治医やケアマネジャー、地域包括支援センターなどの専門職に早めに相談しながら、「今できる最善の選択」を一緒に考えていきましょう。

外部公的リンク

  • 内閣府「令和6年版高齢社会白書」高齢化の現状と将来像
    https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_1_1.html
  • 厚生労働省「在宅医療の推進について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
  • 厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/zaitakuiryou_00.pdf
  • 厚生労働省「介護保険の解説(サービス編:在宅サービス)」
    https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/service.html
  • 政府統計e-Stat「高齢化に関する統計(住宅・土地統計調査など)」
    https://www.e-stat.go.jp/
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