特養と有料老人ホームの違い|費用・入居条件・選び方をプロが解説

当ページのリンクには広告が含まれています。

「特養と有料老人ホーム、どっちがいいの?」
家族の施設探しをするとき、必ずぶつかる悩みです。

大切なのは、パンフレットをなんとなく見比べることではなく、
「自分(家族)に向いている施設を見分ける判断基準」を先に持つことです。

この記事では、看護師(HCU・重症心身障害病棟)、高齢者施設管理者、在宅医療クリニック事務長として現場を経験してきた筆者が、特養と有料老人ホームの違いと選び方をわかりやすく整理します。
内容は2025年時点の制度・費用水準をもとにしていますが、詳細は必ず各自治体・施設にご確認ください。

まず選び方の結論から。
特養と有料老人ホームで迷ったときは、次の4点で判断すれば大きな失敗は避けられます。

判断ポイント(結論)

  • 介護度が高い → 特別養護老人ホーム(特養)を第一候補に。有料老人ホームなら施設の特徴をしっかり確認してから。
  • 急いで入居したい → 有料老人ホーム
  • 費用を抑えたい → 特養
  • サービス・イベント・リハビリの充実度を重視 → 有料老人ホーム

このあと、「特養とは?」「有料老人ホームとは?」「7項目の比較」「迷ったときの決め方」「向いている人」の順に解説します。

この記事でわかること

  • 特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームの仕組みと役割の違い
  • 費用・入居条件・サービス内容など7つの比較ポイント
  • 看護師・施設管理者・在宅医療の視点から見た、失敗しにくい施設の選び方
目次

特別養護老人ホーム(特養)とは|要介護3以上が対象の公的施設

特別養護老人ホーム(特養)は、在宅生活が難しくなった中〜重度の高齢者が、長期的に生活するための公的介護施設です。

「費用を抑えながら、安定した介護ケアを受けたい」という人に向いています。

特養は介護保険上の「介護老人福祉施設」にあたり、要介護3以上の高齢者を主な対象とした公的色の強い施設です。
運営主体の多くが社会福祉法人・自治体であり、月額費用が比較的安いことが大きな特徴です。

特養の特徴(運営・入居条件・費用)

  • 運営主体:社会福祉法人・自治体
  • 入居条件:原則「要介護3以上」
    ※要介護1〜2でも、自宅での生活が著しく困難な場合は、自治体の判断で特例入所が認められるケースがあります。
  • 月額費用の目安:おおむね7〜15万円前後(食費・居住費込み)
    ※所得・居室タイプ・地域によって変動し、負担軽減(減免)制度が使える場合もあります。
  • 入居方法:自治体の入所指針(優先度方式)に基づき、介護度が重い・在宅生活が難しい人から優先的に入所
  • 目的:長期入居を前提とした“生活の場”(終の住処になるケースも多い)

厚生労働省の介護保険制度でも、特養は「在宅生活が困難な高齢者の生活の場」と位置づけられています。

特養のメリット

  • 公的施設のため費用が安い(多くの場合、民間の有料老人ホームより負担が小さい)
  • 介護職員が24時間常駐し、介護ケアの安定性が高い
  • 看取りケアに対応する施設が増えており、最後まで暮らせるケースが多い
  • おむつ代などを施設が負担する場合もあり、トータルコストが抑えやすい

特養のデメリット

  • 入居基準が厳しい(原則要介護3以上)
  • 待機者が非常に多い(都市部では数十〜数百人待ちも珍しくない)
  • 歴史の長い施設では、建物や設備がやや古い場合もある
  • リハビリやイベントは「生活維持に必要な範囲」にとどまることが多い

特養について大まかなイメージがつかめたら、次は特別養護老人ホームの入居条件・申し込みの流れ・必要書類をまとめた基礎ガイドや、特養の月額費用の目安と自己負担を安くする制度を整理した記事もあわせて確認しておくと、「いつ頃・どれくらいの費用で入所できそうか」を具体的にイメージしやすくなります。

有料老人ホームとは|民間企業が運営する多様な介護施設

有料老人ホームは、民間企業が運営し、サービス内容や費用の幅が非常に広い施設です。

「早く入居したい」「リハビリやイベントも楽しみたい」というニーズに応えやすい一方で、費用は特養より高くなる傾向があります。

有料老人ホームは、老人福祉法に基づく「高齢者向けの住まい」の一種で、
食事・介護・家事・健康管理のうちいずれかを提供することが条件です。
介護サービスの付き方により、次の3種類に分類されます。

有料老人ホームの種類

  • 介護付有料老人ホーム
    24時間体制の介護サービスがセットになっているタイプ。
    施設内で特定施設入居者生活介護として介護サービスを提供します。
  • 住宅型有料老人ホーム
    生活支援が中心で、介護は訪問介護など外部サービスを組み合わせて利用します。
  • 健康型有料老人ホーム
    自立した高齢者向け。
    食事・生活支援・アクティビティが中心で、介護が必要になった場合は退去・住み替えが必要になることも。

有料老人ホームの特徴

  • 運営主体:民間企業(株式会社など)
  • 入居条件:施設ごとに異なる(自立〜要介護5まで幅広く受け入れる施設も多い)
  • 月額費用の目安15〜35万円前後(地域やグレードにより、50万円以上の施設もあり)
  • 目的:生活支援+介護に加え、リハビリ・アクティビティ・イベントなどの充実を図る
  • 入居金:0円〜数百万円以上と幅広い(最近は「入居金0円プラン」も増加)

有料老人ホームのメリット

  • 設備が新しく、居室や共用スペースの快適性が高い施設が多い
  • イベント・リハビリ・レクリエーションが充実している施設が多い
  • 空室があれば、比較的すぐに入居できる
  • 立地やサービスのバリエーションが豊富で、希望に合う施設を選びやすい

有料老人ホームのデメリット

  • 費用が高くなりやすい(入居金が必要な場合もある)
  • 運営会社・施設ごとの差が大きく、サービスの質にばらつきがある
  • 特に住宅型では、介護度が上がると追加費用や退去・転居の相談が必要になる場合がある
  • 医療・看取り体制は施設ごとに異なり、事前確認が必須

有料老人ホームについて概要をつかんだら、次は介護付き・住宅型・健康型など有料老人ホームの種類ごとの特徴と違いを整理した記事でタイプ別の違いを押さえつつ、有料老人ホームの費用相場・内訳・利用料を抑える制度を解説した記事も併せて確認しておくと、「どのタイプならサービスと費用のバランスが取りやすいか」を判断しやすくなります。

特養と有料老人ホームの違いを7項目で比較

「費用の安さ」と「介護の安定性」は特養が有利で、
「入居のしやすさ」と「サービスの豊富さ」は有料老人ホームが有利です。

特養と有料老人ホームは、「運営」「入居条件」「費用」「サービス」など複数の点で大きく異なります。
施設選びで迷うポイントを整理するため、以下の7項目で比較します。

比較表|特養と有料老人ホームの違い

スクロールできます
比較項目特別養護老人ホーム(特養)有料老人ホーム
運営主体社会福祉法人・自治体民間企業
入居条件原則:要介護3以上(要介護1・2は特例入所)施設ごとに自由(自立〜要介護5まで幅広い)
月額費用約7〜15万円(所得・居室タイプによって変動)約15〜35万円(高額帯は50万円以上も)
入居しやすさ待機者多数で入居まで時間がかかりやすい空室があればすぐ入居可
サービス内容生活介護中心(必要最小限を安定提供)生活支援+介護+リハビリ+アクティビティなど多様
設備公的基準で安定(古めの施設もある)新しく快適な施設が多い
対象者中〜重度の介護が必要な人自立〜中重度まで幅広い

7項目の要点まとめ

  • 費用の安さ → 特養が有利
  • 入居しやすさ → 有料老人ホームが圧倒的に有利
  • サービスの豊富さ → 有料老人ホーム
  • 介護の安定性 → 特養(公的施設で人員配置が安定)
  • 対象者の幅 → 有料老人ホームが広い
  • 重度介護への対応 → 特養が強い
  • 設備の快適性 → 有料老人ホームが勝ることが多い

費用やサービス内容などを一覧で見比べると、「他の種類の施設も含めて全体の費用感を知りたい」「公的な支援を使えばどこまで自己負担を減らせるのか」が気になってきます。
その際は、特養・老健・有料・サ高住など6種類の老人ホーム・介護施設の費用相場を横並びで比較した記事と、老人ホーム費用を軽減できる公的制度(減額・払い戻し・控除など)を整理したガイド、さらに施設選びの前提として6種類の老人ホームの特徴と違いをまとめた総覧記事も確認しておくと、選択肢全体の中で特養・有料をどう位置づけるかがわかりやすくなります。

迷ったときの選び方|現場で使われる判断基準

迷ったときは、「介護度」「費用」「緊急性」の3つを軸に考えると、選択を大きく間違えにくくなります。
ここに「生活スタイル」「看取りの希望」を加えると、かなり方向性が絞り込めます。

介護度で選ぶ

  • 要介護3以上 → 特養が第一候補
  • 要介護1〜2でも生活困難な場合は、自治体判断で特例的に特養入所が認められることがあります。
  • まだ元気で活動性が高い場合は、有料老人ホーム(特に健康型・住宅型)も選択肢になります。

費用で選ぶ

  • 費用を抑えたい → 特養
  • 特養は月額7〜15万円前後と、民間施設に比べて負担が小さいのが最大のメリットです。
  • 有料老人ホームは、リハビリやイベントが充実する一方、トータル費用は高くなりやすい点に注意が必要です。

緊急性で選ぶ

  • 急いで入居したい → 有料老人ホーム
  • 特養は待機者が多く、「すぐ入居」はほぼ不可能です。
  • 一旦有料老人ホームに入居し、並行して特養の空きを待つケースもあります(ケアマネジャーと要相談)。

生活スタイルで選ぶ

  • リハビリ・アクティビティ重視 → 有料老人ホーム(介護付)
  • 安定した生活の場を重視 → 特養
  • 「とにかく静かに穏やかに暮らしたい」「にぎやかなイベントが好き」など、本人の性格や希望も重要な判断材料です。

看取りまで任せたい場合

  • 特養 or 介護付有料老人ホームが候補になります。
  • 近年は特養の看取り対応が拡大しており、在宅や病院からの看取り転入も増えています。
  • 住宅型有料老人ホームでは、医療連携が弱い場合もあるため、訪問診療・訪問看護との連携体制を事前に確認しましょう。

介護度・費用・緊急性を軸に考える方法を読んで、「結局わが家の場合はどの施設が合うのかを整理したい」と感じた方は、まず家族の状態・価値観・予算から逆算して施設タイプを選ぶためのチェックリスト付きガイドを使って候補を絞り込み、まだ在宅で頑張るか施設に切り替えるか迷っている場合は在宅医療と施設入居を費用・家族負担・医療体制から比較した記事

それぞれの施設が向いている人|特養・有料の適性を整理

特養と有料老人ホームは、特徴が異なるため「どんな人に向いているか」も変わります。
家族の状況に合わせて、以下を判断の参考にしてください。

特養が向いている人

  • 要介護3以上で、日常生活に常時介助が必要な人
  • 自宅介護が難しく、家族の介護負担が限界に近い人
  • 費用を抑えて、安定した介護ケアを受けたい人
  • 長期的に住み続けられる「生活の場」を求めている人
  • 看取りまで含めて最期まで過ごせる場所を探している人

有料老人ホームが向いている人

  • 比較的元気で、活動性がある人
  • リハビリ・イベント・レクリエーションを楽しみたい人
  • 家族がすぐに面会できる、立地の良さを優先したい人
  • サービスの質や設備の新しさを重視する人
  • 空きがあればすぐ入居できる環境を求めている人

施設見学・相談のときに確認したいポイント

特養・有料老人ホームのどちらを選ぶにしても、見学と相談の質で失敗リスクは大きく下げられます。
看護師として同行したとき、必ずチェックするポイントをまとめます。

  • 職員の様子:挨拶や声かけ、入居者への接し方は丁寧か
  • 清潔さ:居室・トイレ・浴室・食堂のニオイや清掃状態
  • 夜間の体制:夜勤の人数、緊急時の対応方法
  • 医療連携:訪問診療・訪問看護との連携状況、急変時の搬送先
  • リハビリ・生活リハビリ:歩行・トイレ・食事など、「できることを維持する支援」をしているか
  • 看取り方針:どこまで施設内で看取りを行えるか、家族への説明やサポート体制

パンフレットや料金表だけではわからない部分こそ、見学時のチェックが重要です。

老人ホーム・介護施設 見学チェックリスト

ℹ️基本情報・契約条件

  • 月額費用(家賃・食費・管理費・その他)
  • 入居一時金や敷金の有無と返還条件
  • 契約形態(終身利用型・定期利用型など)
  • 退去条件と手続き方法

⚕️医療・介護体制

  • 提携医療機関の有無と診療頻度
  • 看護師の配置(看護師1人あたりの利用者数)
  • 夜間の医療対応(オンコール体制・緊急搬送先)
  • 介護職員の配置(介護職員1人あたりの利用者数)
  • 夜勤職員の人数と配置時間

🏠生活環境

  • 居室の広さ・設備(トイレ・洗面・収納)
  • 共用スペース(食堂・浴室・談話室)の清掃状況
  • 食事の内容と提供時間(試食の可否)
  • 入浴回数や時間帯の柔軟性

🪅サービス内容

  • レクリエーションや外出イベントの頻度
  • 個別対応の可否(食事形態・介護方法の調整など)
  • 生活支援サービス(掃除・洗濯・買い物代行)
  • 家族の面会ルール(時間・予約方法)

🦺安全・安心面

  • 防災設備(スプリンクラー・避難経路)
  • 認知症対応の経験・実績
  • 転倒・誤嚥など事故発生時の対応フロー
  • 他入居者や職員の雰囲気(挨拶やコミュニケーションの様子)

見学時に見るべきポイントが整理できたら、次は実際に候補施設をどう探すかが課題になります。
効率よく情報を集めたい場合は、老人ホーム紹介サービスの選び方と注意点をまとめたガイドや、サービスを利用するか迷っている方向けに老人ホーム紹介サービスを使うメリット・デメリットを整理した記事を参考にしつつ、入院・入所時の壁になりやすい身元保証人がいない場合の現場での対応策も事前に押さえておくと、相談や契約の場面で慌てずに済みます。

よくある質問

要介護2でも特別養護老人ホーム(特養)に入れますか?

条件を満たせば入れます。
原則は要介護3以上ですが、

  • 自宅での生活が著しく困難
  • 家族の介護力が限界に近い

など、自治体が必要と判断した場合は要介護1〜2でも特例入所(例外的な入所)が認められることがあります。
実際に判断するのは市区町村と特養側なので、ケアマネジャーや地域包括支援センターに早めに相談しましょう。

有料老人ホームは高い分、サービス内容も必ず良いのですか?

「高い=良い」とは限りません。
多くの場合は設備や食事、イベントが充実しますが、「施設による差」が非常に大きいのが実情です。

見学時には、次の点を重点的に確認しましょう。

  • 職員の人数・雰囲気・定着率
  • 居室・トイレ・浴室などの清潔さ
  • リハビリや生活リハビリ(歩行・トイレ・食事)の支援内容
  • 夜間・緊急時の対応方法
特養の待機期間はどれくらいですか?

地域や本人の状態によって大きく異なります。
都市部では数十〜数百人待ち、入居まで1年以上かかることもあります。一方、地方では比較的早く入れる場合もあります。

入所指針により、次のような人が優先される傾向があります。

  • 要介護3以上で、介護度が高い人
  • 在宅生活が困難(独居・老老介護・認知症の進行など)
  • 在宅での虐待リスクや、医療的ケアの必要性が高い人
有料老人ホームは途中で退去しなければならないことがありますか?

場合によってはあります。
特に住宅型有料老人ホームは介護サービスが外部提供のため、
介護度が大きく上がると受けられないサービスが増え、退去・転居を求められるケースがあります。

一方、介護付有料老人ホームは施設内で介護を完結しやすく、退去リスクは比較的低めです。
契約前に「どの程度の医療・介護状態まで受け入れ可能か」を必ず確認しておきましょう。

看取りまでお願いできる施設はどちらですか?

看取りまでをお願いできるのは、特養と介護付有料老人ホームの両方にあります。
近年は特養の看取り体制が整備されており、
医療的ケアが必要なタイミングでも対応できる施設が増えています。

住宅型有料老人ホームの場合は、訪問診療や訪問看護との連携体制が重要になります。
看取りを希望する場合は、「どの医療機関と連携しているか」「最期をどこで迎えられるか」を具体的に確認しましょう。

安くてすぐ入れる施設はありますか?

残念ながら、「安さ」と「すぐ入居」は両立しにくいのが現実です。

  • 安さ重視 → 特養(ただし待機が多い)
  • 早く入居 → 有料老人ホーム(ただし費用は高め)

ただし地域によっては、
比較的安い住宅型有料老人ホームで空室があるケースもあります。
1〜2施設だけでなく、複数施設を同時に問い合わせ・見学するのがおすすめです。

まとめ|迷ったら「介護度・費用・緊急性」で判断するのが最も失敗しない

特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームには、
入居条件・費用・サービス内容・入居スピードなど多くの違いがあります。

迷ったときは、次の3つを基準にすれば大きくは間違いません。

判断ポイント

  • 介護度が高い → 特養
  • 急いで入居したい → 有料老人ホーム
  • 費用を抑えたい → 特養
  • サービス・設備重視 → 有料老人ホーム

家族の状態、介護度、経済状況、緊急性をふまえ、最適な施設を選択していきましょう。
一人で判断するのが難しい場合は、地域包括支援センターやケアマネジャー、
高齢者施設の相談窓口など専門職に相談しながら進めることをおすすめします。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
目次