「特養ってよく聞くけど、実際どんな施設?」「誰が入れるの?」「いくらかかるの?」
親や家族の介護を考え始めたとき、最初に検討することが多いのが特別養護老人ホーム(特養)です。
本記事では、特養の仕組み・入居条件・費用の相場・申し込みの流れ を初心者にもわかりやすく解説します。
読み終える頃には、特養の全体像と、次に取るべき行動(申込み・見学・他施設比較)が明確になります。
特別養護老人ホーム(特養)とは何か?

特養の基本像をまず押さえます。
ここでは法的位置づけ・運営主体・他施設との違いを整理し、「特養がどんな場なのか」を短時間で把握できるように解説していきます。
特養の法律上の位置づけ(介護老人福祉施設)
特養は、介護保険法に基づいて設置された「介護老人福祉施設」です。
要介護状態となり、自宅での生活が困難な高齢者が長期的に入居できる公的介護施設 として位置づけられています。
入居者は介護職員の支援を受けながら、食事・入浴・排せつなどの介護や生活支援を受けて暮らします。
運営主体と利用目的
運営主体の多くは 社会福祉法人や地方自治体。
営利目的ではなく、地域福祉の一環として高齢者の生活を支援することが目的です。
そのため、民間の有料老人ホームに比べて費用が安く、「最後の住まい」 として選ばれるケースが多いです。
特養と他施設の違い(老健/有料老人ホーム/介護医療院など)
施設種別 | 主な目的 | 入居期間 | 費用の目安 | 医療対応 |
---|---|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 介護が中心、終身利用可 | 長期(終身) | 約12〜15万円/月 | 限定的(看護師常駐) |
介護老人保健施設(老健) | リハビリ中心、在宅復帰支援 | 3〜6か月 | 約12〜18万円/月 | 医師常勤、医療行為対応可 |
介護付き有料老人ホーム | 介護+生活支援、民間運営 | 長期(終身) | 約18〜30万円/月 | 施設により異なる |
介護医療院 | 医療・介護一体、長期療養向け | 長期 | 約15〜20万円/月 | 医療体制強化型 |
特養の入居条件・対象者

入居の可否は要介護度・年齢・生活状況などの要件で決まります。
ここでは原則条件から特例入居、受け入れの実態や自治体の優先基準まで、判断材料をまとめます。
原則条件(年齢、要介護度、特定疾病など)
- 要介護3以上が原則対象
要介護1・2では、原則として入居できません。 - 65歳以上の高齢者
ただし、40歳以上で特定疾病(初老期認知症・脳血管疾患など)がある場合も対象になります。
医療依存度・受入制限
常時医療処置が必要な方(例:人工呼吸器、透析、中心静脈栄養など)は受け入れが難しい場合があります。
一方、胃ろう・インスリン注射・酸素吸入 などは施設によって対応可能だったりします。
特例入居(要介護1・2、家族不在、虐待ケースなど)
要介護1・2でも、以下のような事情がある場合は「特例入居」として認められることがあります。
- 家族による介護が困難(独居・高齢の家族介護など)
- 虐待・ネグレクトのリスクがある
- 認知症による徘徊や火の不始末など、安全に生活できない状態
入居希望者の傾向データ(年齢・介護度分布)
厚生労働省調査(2024年度)によると、入居者の約8割が要介護4以上。
平均年齢は約86歳で、女性比率が約7割を占めています。
各自治体の優先基準(地域格差に注意)
入居の優先順位は自治体ごとに設定されています。
たとえば静岡市では「要介護度・同居家族の有無・緊急性(独居・虐待・退院後など)」などを点数化して判定。
特養にかかる費用:月額・初期費用・軽減制度

費用は介護サービス費・居住費・食費が中心。
初期費用の考え方や、負担限度額認定・高額介護サービス費などの軽減制度も併せて、月額の目安を具体的に示します。
月額費用の構成要素
費用項目 | 目安 | 内容 |
---|---|---|
介護サービス自己負担 | 約2〜5万円 | 要介護度・加算により変動 |
居住費 | 約2〜5万円 | 居室タイプ(個室・多床室)で差 |
食費 | 約3〜4万円 | 1日3食+おやつ含む |
日用品・医療費など | 約0.5〜1万円 | 理美容、薬代、嗜好品など |
➡ 合計:約12〜15万円/月 が一般的。
多床室を選べば10万円前後、ユニット型個室なら15万円超となる場合もあります。要介護度・居室タイプ別の実例
入居一時金・初期費用は基本不要
特養は公的施設のため、入居一時金・敷金・礼金は不要。
入居時にかかる費用は健康診断書代や日用品購入費程度です。
費用軽減制度
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
所得に応じて、食費・居住費の自己負担上限を設定。
申請により補助を受けられます(例:月額上限1万1,300円など)。
高額介護サービス費制度
1か月の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
対象は介護サービス費のみ。
生活保護との関係(扶助で賄える項目)
生活保護を受給している場合、居住費・食費・医療費 などが扶助の対象。
自己負担なしで入居できるケースもあります。
▷ 自治体独自の減免制度
一部自治体では、低所得世帯向けに居住費や食費を追加補助する制度を設けています。
注意点
- 補助を受けるには所得証明・預金通帳などの提出が必要
- 入居後も年1回の更新手続きあり
- 加算費用(夜勤・リハビリ・行事費など)は別途請求される場合もあり
入居の流れとスケジュール目安

申し込みから入居までには相談→見学→申込→判定→待機→契約のステップがあります。
各段階のチェックポイントと、地域差のある待機期間の目安を解説します。
相談・情報収集(ケアマネ/地域包括支援センター)
最初にケアマネジャーまたは地域包括支援センターへ相談し、希望地域の施設情報を集めます。
施設見学の予約や申込書の取り寄せもここで行います。
見学・施設比較チェックポイント
見学時に確認すべきポイント:
- 職員の対応、入居者の様子
- 医療連携体制(協力病院など)
- 居室や共用部の清潔さ
- 看取り対応の有無
以下にチェックリストを添付しておくので、参考にしてみてください。
老人ホーム・介護施設 見学チェックリスト
ℹ️基本情報・契約条件
- 月額費用(家賃・食費・管理費・その他)
- 入居一時金や敷金の有無と返還条件
- 契約形態(終身利用型・定期利用型など)
- 退去条件と手続き方法
⚕️医療・介護体制
- 提携医療機関の有無と診療頻度
- 看護師の配置(看護師1人あたりの利用者数)
- 夜間の医療対応(オンコール体制・緊急搬送先)
- 介護職員の配置(介護職員1人あたりの利用者数)
- 夜勤職員の人数と配置時間
🏠生活環境
- 居室の広さ・設備(トイレ・洗面・収納)
- 共用スペース(食堂・浴室・談話室)の清掃状況
- 食事の内容と提供時間(試食の可否)
- 入浴回数や時間帯の柔軟性
🪅サービス内容
- レクリエーションや外出イベントの頻度
- 個別対応の可否(食事形態・介護方法の調整など)
- 生活支援サービス(掃除・洗濯・買い物代行)
- 家族の面会ルール(時間・予約方法)
🦺安全・安心面
- 防災設備(スプリンクラー・避難経路)
- 認知症対応の経験・実績
- 転倒・誤嚥など事故発生時の対応フロー
- 他入居者や職員の雰囲気(挨拶やコミュニケーションの様子)
申し込み(必要書類・手順)
必要書類:
- 介護保険被保険者証
- 健康診断書
- 入所申込書
- 家族情報・介護状況調査票 など
複数施設に同時申込が可能です。
入居判定会議と優先度決定基準
各施設が設ける「入居判定委員会」で、以下を総合的に判断します。
- 要介護度
- 在宅介護の困難度
- 緊急性(独居・虐待など)
待機期間の実態(地域別)
- 都市部(東京・神奈川):1〜3年待ち
- 地方都市(静岡・山梨など):半年〜1年
- 郡部・中山間地:即日〜3か月で入居可の例もあり
契約・入居準備
入居決定後は契約を締結し、家具・衣類・日用品を準備。
介護保険負担割合証や銀行引落書類の提出も行います。
注意点
数か月~数年待ちがほとんどです。
なので施設に入りたいタイミングで入居申し込みをしても、入居できなくて困ってしまいます。
「最後の時間をどこで過ごしたいか」「自宅を希望しているのか、施設に入りたいのか」を早い段階から話し合って、少しでも施設を検討しているのであれば見学・申し込みをしておいて、「順番待ち」の状況にしておきましょう。
特養を選ぶときのポイント・注意点

同じ“特養”でも体制や環境は施設ごとに差があります。
医療体制・職員配置・居室タイプ・生活環境など、見学時に外せない比較観点をチェックリスト形式で押さえます。
医療体制・看護師常駐・対応処置
胃ろう・インスリン・在宅酸素など、医療対応可否を事前確認。
看護師の夜間体制にも差があります。
居室タイプ・プライバシー
- ユニット型個室:快適だが費用高め
- 多床室:安価だがプライバシー制限あり
職員配置・スタッフ体制
介護職員1名あたりの利用者数(配置基準)は3:1。
ただし夜勤時は手薄になることもあるため確認を。
立地・通いやすさ
家族が通いやすい場所を選ぶと、面会・衣類交換などがスムーズ。
レクリエーション・生活環境
生活の質を左右するため、入居者の表情や雰囲気を見て判断を。
契約書・退去・看取り対応
- 看取りの可否を必ず確認
- 退去時の費用精算・解約条件も事前に把握
特養に向く人・向かない人

特養は長期的な介護が必要な人に向く一方、医療依存度が高い人や自由度を求める人には不向きな場合も。
ここでは向き・不向きの目安と代替選択肢を提示します。
向いている人
- 要介護3以上で日常生活の全面的支援が必要
- 在宅介護が限界
- 経済的に有料ホームが難しい
向かない人
- 要介護1・2で自立度が高い
- 医療処置が常時必要
- プライバシーや自由度を重視する人
特養に入れない場合の代替施設
- 住宅型有料老人ホーム
- 老健・介護医療院・グループホーム
- サ高住・在宅支援サービス(訪問介護・ショートステイ)
特養ほど安く過ごせる施設は他にありませんが、「自宅ではもう限界」「安くなくていいから施設に入ってほしい」という方は、他の施設を検討した方が早く施設に入れる可能性が段違いに上がります。
よくある質問(FAQ)

読者が検索しがちな疑問に即答します。
入居条件・待機期間・費用上限・医療対応・退去可否など、決断前に知っておきたいポイントを端的に解消します。
- 要介護2でも入れますか?
-
特例入居が認められるケースを除き、原則は不可です。
- 待機期間はどのくらい?
-
地域差あり。都市部で1〜3年、地方で半年〜1年。
- 費用の上限は?
-
月額12〜15万円程度。所得により補助あり。
- 医療処置が必要でも入れる?
-
軽度なら可。透析・呼吸器などは不可のことが多い。
- 入居後の退去は?
-
原則なし。看取りまで対応する施設もあります。
まとめと次のステップ

最後に要点を整理し、今日できる具体アクション(相談窓口・見学・書類準備・併願戦略)を提示。関連リンクで深掘り記事に誘導し、迷いなく動ける状態にします。
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の高齢者が低料金で長期的に暮らせる安心の住まいです。
ただし入居条件が厳しく、待機期間も長いため、早めの相談・複数申込・併用検討がカギとなります。
👉 次にやるべきこと
- 地域包括支援センターやケアマネに相談
- 希望地域の施設を3〜5か所見学
- 費用・対応内容を比較して検討