「さっきまで笑っていたのに、急に涙が止まらなくなる…」
「テレビのCMを見ただけで号泣してしまい、自分が自分でないみたい」
「夫の何気ない一言にひどく傷ついてしまう」
妊娠中、コントロールできない感情の波に襲われ、「私、母親になる自覚が足りないのかな…」と自分を責めていませんか?
看護師として、そして重症心身障害児病棟などで多くのご家族と接してきた経験から、最初にはっきりとお伝えします。
その涙は、あなたが弱いからではありません。
お腹の赤ちゃんを守るための、身体の「正常な防衛反応」です。
この記事では、なぜ妊娠中に急に涙が出るのかという医学的なメカニズムと、今日からできるメンタルケアの具体的な戦略、そして一番の理解者であってほしい「夫への上手な伝え方(スクリプト)」について解説します。
「ホルモンのせいだから仕方ない」という精神論だけでは解決しません。
栄養学的なアプローチや物理的な休養戦略を取り入れ、心のモヤモヤを晴らして、少しでも穏やかなマタニティライフを取り戻しましょう。
妊娠中、急に涙が出て止まらない…これって私だけ?
結論から申し上げますと、妊娠中の情緒不安定(マタニティブルーズの前段階や妊娠中のうつ状態含む)は、決して珍しいことではありません。
研究データによって幅はありますが、妊婦さんの約30〜50%が何らかの情緒不安定を経験すると言われています。
「わけもなく悲しい」は脳のパニック状態
私が学生時代の実習先でも、検診の待ち時間や保健指導の際に「なんだか涙が出てきてしまって…すみません」と仰る妊婦さんは本当に多くいらっしゃいました。
妊娠中は、これまでの人生で経験したことがないスピードで身体内部が変化しています。
脳がその急激な変化に追いつけず、一時的にパニック(感情のコントロール機能不全)を起こしている状態なのです。
よくある「心のSOS」サイン
- 感動的な映像や悲しいニュースを見ると、スイッチが入ったように泣いてしまう
- 夫の帰りが少し遅いだけで「見捨てられた」という極端な孤独感を感じる
- 「ちゃんと育てられるかな」「お金は足りるかな」と将来への漠然とした恐怖に襲われる
- 寝つきが悪く、深夜にふと悲しくなり涙が止まらない
これらは性格の問題ではなく、すべて「生理現象」です。
「お腹が空いたらお腹が鳴る」のと同じくらい、自然な身体の反応なのです。
なぜメンタルが不安定になるの?医学的な「2つの理由」
「気の持ちよう」で片付けられがちな精神状態ですが、実は明確な生理学的根拠があります。
敵(原因)の正体がわかれば、「なんだ、私のせいじゃないんだ」と少し肩の荷が下りるはずです。
1. ホルモンバランスの激変(ジェットコースター状態)
妊娠すると、主要な女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌量が爆発的に増えます。
日本産科婦人科学会の資料などでも示されている通り、これらのホルモンは妊娠を維持するために必須ですが、同時に脳の神経伝達物質にも強力な影響を与えます。
- エストロゲン
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自律神経を活性化させる作用があるが、変動が激しいと感情の起伏(イライラや興奮)につながりやすい。
- プロゲステロン
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妊娠維持に働くが、眠気やダルさ、抑うつ感を引き起こしやすく、「何もできない自分」への自己嫌悪を招きやすい。
出産直前には、これらホルモンの分泌量は妊娠前の数百倍〜数千倍にも達します。
いわば、あなたは今、「常にホルモンのジェットコースターに乗っている状態」で日常生活を送っているようなもの。
情緒不安定にならない方が不思議なのです。
2. 「幸せホルモン」セロトニンの不足
もう一つの大きな原因が、脳内の神経伝達物質「セロトニン」の機能低下です。
セロトニンは精神を安定させ、幸福感や安心感を感じさせる物質ですが、妊娠中のホルモン変動によってその働きが抑制されやすくなります。
厚生労働省の「e-ヘルスネット」でも、セロトニンの不足が不安やうつ状態に関与することが解説されています。
セロトニンが不足すると、不安感のブレーキが効かなくなり、些細なことでパニックになりやすくなります。
つまり、涙を止めるには「根性」ではなく「セロトニンを増やす対策」が必要なのです。
看護師が教える!ホルモンバランスを整える「栄養」の摂り方
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか?
まずは、身体の内側からセロトニンを作り出すための「栄養戦略」です。
メンタルケアというとカウンセリングなどをイメージしがちですが、まずは「物理的な材料」を脳に届けることが先決です。
セロトニンの材料は「食事」からしか摂れない
セロトニンは体内で勝手に湧いてくるものではありません。
材料となる栄養素が必要で、特に以下の3つが重要です。
- トリプトファン
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セロトニンの直接の原料。大豆製品(豆腐・納豆)、乳製品、バナナなどに多く含まれます。
- ビタミンB6
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トリプトファンをセロトニンに合成するのを助ける「接着剤」のような役割。カツオ、マグロ、レバー、ピスタチオなど。
- 葉酸
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新しい細胞(赤血球など)を作り、神経伝達物質の合成を強力にサポートする。
特に重要なのは「葉酸」の継続摂取
厚生労働省も妊娠前からの摂取を強く推奨している「葉酸」。
赤ちゃんの「神経管閉鎖障害」という先天異常を防ぐために有名ですが、実は母体のメンタル安定(神経伝達物質の合成)や貧血予防にも深く関わっています。
しかし、現実的に考えてみてください。
つわりがあったり、お腹が大きくて胃が圧迫されていたりする中で、毎日の食事から十分な葉酸(妊婦推奨量:480µg/日)やビタミンB6を摂り続けるのは至難の業です。
看護師「栄養バランスの良い食事を作らなきゃ」というプレッシャー自体が、最大のストレス要因になっていませんか?
賢い妊婦さんは、食事は「楽しめる範囲」にとどめ、必須栄養素のベースラインはサプリメントで確実に確保していますよ。
自律神経を整え、赤ちゃんの健やかな成長もサポートする「葉酸サプリ」の選び方や、妊娠時期別の推奨量については、以下の記事で徹底解説しています。
サプリ選びで迷子になっている方は、ぜひ参考にしてください。
【葉酸サプリ】いつまで飲めばいい?妊娠時期別の推奨量と失敗しない選び方
「種類が多すぎて選べない…」という方へ。
現役看護師が成分とコスパを徹底比較し、「これを選べば間違いない」という葉酸サプリを3つだけに厳選しました。
赤ちゃんの神経発達を守るための「最初のプレゼント」として、失敗しない選択をしてください。
▶︎【看護師厳選】葉酸サプリおすすめ3選!成分・コスパで選ぶならこれ一択
夫にどう伝える?男性脳に響く「説明の技術」
「なんで泣いてるの?」「俺、何かした?」
夫の悪気のない(しかし的はずれな)言葉に、さらに傷ついてしまうこと、ありますよね。
男性は基本的に「察する」のが苦手で、「解決策」を探そうとする生き物です。
感情をそのままぶつけるのではなく、「今はこういう『症状』が出ている」と客観的事実として伝えるのが、夫婦喧嘩を避ける最大のコツです。
そのまま使える!魔法の会話ステップ
夫に「面倒くさい」と思われず、むしろ「僕がサポートしなきゃ」という責任感を持たせる伝え方をご紹介します。
「今、妊娠ホルモンの影響で、脳がちょっとパニック状態になってるみたい。(お医者さんやネットの記事にも書いてあったよ)」
「だから急に泣いたりイライラしたりするけど、あなたが嫌いなわけじゃないの。
もし私が泣き出したら、理由を聞かずにただ背中をさすってくれると助かる。それだけで落ち着くから。」
「そうしてもらえると、赤ちゃんも私もすごく安心できると思う。いつもありがとう。」
「これはホルモンの仕業だから、チームとして一緒に乗り越えよう」と提案してみましょう。
LINEで送っておくだけでも効果的です。
赤ちゃんのために「頑張らない」勇気を持とう
最後に、メンタルを安定させるために最も物理的に効果がある方法をお伝えします。
それは、「家事の負担を徹底的に減らすこと」です。
家事の手抜きは「母体の安全管理」です
お腹に数キロの「重り(赤ちゃん+羊水+胎盤)」を抱えている状態で、買い物に行き、重い荷物を持ち、火を使って料理をする。
これは、医療現場の視点で見れば「重症患者が無理やりリハビリをしている」レベルの重労働です。
身体的な疲労は、ダイレクトにメンタルに響きます。
「私がやらなきゃ」と無理をすることは、結果的に情緒不安定を招き、母体にも赤ちゃんにもストレスを与えてしまいかねません。
✅今すぐできる「戦略的撤退」を実行しましょう。
- 買い出しはネットスーパーや生協にする
- 掃除は週末に夫に任せるか、ロボット掃除機に頼る
- 料理は「冷凍宅配食(宅食)」をフル活用する
特に「食事作り」は毎日のことなので、ここを手放すだけで心の余裕が劇的に変わります。
「お惣菜や冷凍食品ばかりで申し訳ない…」と思う必要はありません。
最近の宅配食は、管理栄養士が監修し、美味しいだけでなく塩分やカロリー計算が完璧なものが多くあります。
むしろ「私が無理して作るより、栄養バランスが整った食事を摂るほうが赤ちゃんのためになる」と割り切りましょう。
これは手抜きではなく、立派な「胎児を守るためのリスク管理」です。
「今日はもうキッチンに立ちたくない」
そう思った瞬間に頼れるのが、妊婦さん向けに特化した宅配弁当です。
添加物や塩分への配慮はもちろん、「つわり中でも食べやすい味付け」かどうかも含めて、看護師が実食して選び抜きました。
▶︎【つわり・産後も安心】妊婦におすすめの無添加・栄養満点な宅配弁当ランキング
質問
- 泣いてばかりで、お腹の赤ちゃんに悪影響はありませんか?
-
ママが泣くこと自体が、直接赤ちゃんに悪影響を与えることはありません。赤ちゃんは羊水の中で守られています。
「泣いてしまった」と自分を責めるストレスの方が心配ですので、涙を流すことでデトックスできたと考えて大丈夫です。泣いた後は、温かい飲み物を飲んでリラックスしてくださいね。 - この情緒不安定はいつまで続くのでしょうか?
-
個人差がありますが、ホルモンバランスが急激に変化する「妊娠初期(つわりの時期)」と、出産への不安が高まる「妊娠後期〜臨月」にピークを迎える方が多いです。
妊娠中期(安定期)に入ると、身体がホルモンに慣れて心が落ち着くケースもよくあります。「ずっと続くわけではない」と割り切って過ごしましょう。 - どの程度の症状なら病院に相談すべきですか?
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「食事が全く喉を通らない」「夜一睡もできない」「死にたい気持ちが消えない」といった状態が2週間以上続く場合は、一人で抱え込まず必ず医師や助産師に相談してください。
産婦人科での相談はもちろん、必要に応じて心療内科や地域の保健師さんと連携してサポートを受けることができます。 - 夫に説明しても「考えすぎ」と理解してくれません。
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男性は目に見えない心の変化を理解するのが苦手な傾向があります。感情で伝えるよりも、この記事や厚生労働省のサイトなどを見せて「ホルモンの影響で脳がパニックを起こしている医学的な状態」であることを客観的に伝えてみてください。
第三者の情報を挟むと、納得してくれることが多いです。 - イライラを抑えるために漢方や市販薬を飲んでもいいですか?
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自己判断での服薬は控えてください。妊娠中でも飲める漢方薬(当帰芍薬散や抑肝散など)はありますが、体質や妊娠経過によって合うものが異なります。
必ず主治医に「イライラや不安が強い」と相談し、処方してもらうようにしましょう。 - 仕事に行くのが辛いです。休職してもいいのでしょうか?
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もちろんです。つわりや体調不良で就業が困難な場合、医師に「母性健康管理指導事項連絡カード」を書いてもらうことで、通勤緩和や休暇の取得を会社に申請できます(法的な効力があります)。
無理をして切迫早産などになっては大変ですので、早めに医師へ相談してください。
まとめ:今の涙は赤ちゃんを大切に想っている証拠
妊娠中に急に涙が出るのは、おかしいことでも、あなたが弱いわけでもありません。
💡記事のポイント
- 原因はホルモン変動とセロトニン不足(生理現象なので自分を責めない!)
- 葉酸やビタミンB6など、サプリを活用して「心の栄養」を補給する
- 夫には「症状」として伝え、「背中をさする」等の具体的ToDoを頼む
- 家事は「手抜き」ではなく「安全管理」として、宅食などにアウトソーシングする
涙が出るほど不安になるのは、それだけお腹の赤ちゃんのこと、そしてこれからの家族のことを真剣に考えている証拠です。
どうかご自身を責めず、「今はそういう時期」と割り切って、周りの力や便利なサービスを頼ってください。
あなたが笑顔でいることが、赤ちゃんにとって何よりの胎教になります。
まずは今日、何か一つでも「やらなくていい家事」を見つけて、ゆっくり身体を休めてくださいね。














