「一晩中、背中をさすってあげても痛みが引かない。代わってあげられないのが本当に辛い……」
「痛み止めを飲んでいるのに、なぜこんなに痛がるの?この先どうなってしまうのか怖くて仕方ない」
膵臓がんを患うご本人、そして寄り添うご家族にとって、最も過酷な試練が「痛み」です。
膵臓がんは、進行とともに耐え難い背部痛や腹痛を引き起こすことが多く、ご家族が「無力感」に押しつぶされそうになる場面を、私は看護師として数多く見てきました。
しかし、まずは安心してください。現代の緩和ケアにおいて、「取れない痛み」はほとんどありません。
大切なのは、痛みを「我慢」することではなく、医療の力と適切なツールを使って、戦略的に「痛みの芽を摘む」ことです。
私は現在、訪問診療クリニックの事務長として、自宅で痛みをコントロールしながら穏やかに過ごす多くの患者さんを支えています。
この記事では、病院では聞ききれない「医療用麻薬の正しい使い方と医師への交渉術」、そしてご家族が共倒れしないための具体的な知恵をお伝えします。
なぜ膵臓がんはこれほど痛むのか?家族が知っておくべき「神経」の話
膵臓がんの痛みが他の癌より強いと言われるのには、明確な理由があります。
「腹腔神経叢(ふくくうしんけいそう)」への浸潤
膵臓のすぐ背中側には、腹部の内臓を司る巨大な神経の束(腹腔神経叢)が走っています。
がんがこの神経の束を圧迫したり、巻き込んだりすることで、突き刺すような激しい腹痛や、背中を突き抜けるような重い痛みが生じるのです。
看護師「痛みは病気だから仕方ない」と諦めないでください。
激しい痛みは食欲を奪い、睡眠を妨げ、免疫力や生きる気力まで低下させます。
つまり、痛みを完全に抑え込むことは、がん治療そのものと同じくらい重要なのです。
「この先の進行が早そうで怖い…」と不安な方へ。
膵臓がんと診断されたらすぐ動くべき「準備リスト」をまとめました。
今のうちにやるべきことが分かれば、心の余裕が生まれます。
医療用麻薬の「正しい」使い方|効かない時の医師への交渉術
膵臓がんの痛みには、通常の鎮痛剤だけでなく「医療用麻薬(モルヒネやオキシコドンなど)」が必須となるケースが多いです。
「麻薬」という言葉に抵抗を持つご家族もいますが、正しく使えば中毒になることも、寿命が縮むことも絶対にありません。
レスキュー(頓服薬)は「痛くなる前」に飲むのが鉄則
定時の薬を飲んでいても、急に強い痛みが出る「突出痛(とっしゅつつう)」が起こります。
その時に飲む追加の薬(レスキュー)は、「我慢できなくなってから」ではなく「痛みが強くなりそうな予感」がした時点で飲むのが鉄則です。
一度マックスまで強くなった痛みを押さえつけるには、何倍もの薬と時間が必要になるからです。
【看護師直伝】医師に「麻薬の増量」を依頼するためのメモ術
ご家族が「すごく痛がっています」と伝えても、医師にはどのくらい薬を増やせばいいのか伝わりません。
訪問診療の現場で、医師が一番知りたいのは「1日に何回レスキューを使ったか(=定時の薬がどれだけ足りていないか)」です。
✅受診前に必ずメモすべき3つのこと
- 痛みの強さ(全く痛くないを0、想像しうる最大の痛みを10とした時の数字)
- 痛んだ時間帯と、レスキューを飲んだ回数(例:夜間に3回飲んだ)
- レスキューの効果(飲んでから何分で、どのくらい楽になったか)
このメモを見せれば、医師は「定時の薬の量が足りていないな」と判断し、安全かつ迅速にベースの薬の量を増やしてくれます。
自宅で最期まで「痛みゼロ」を目指すなら、医師との連携が鍵を握ります。
後悔しないための「在宅看取りガイド」で、クリニックを味方につける具体的な秘訣をチェックしておいてください。
薬だけじゃない!病院で相談できる「神経ブロック」という選択肢
飲み薬を増やしても痛みが取りきれない、あるいは眠気や吐き気などの副作用が強くてこれ以上薬を増やせない場合、「腹腔神経叢ブロック」という専門的な治療の選択肢があります。
これは、痛みを伝えている神経の束に直接注射などでアプローチし、痛みの信号を根本から遮断する治療です。
これによって劇的に痛みが消え、医療用麻薬の量を大幅に減らせるケースがあります。
すべての患者さんに適応できるわけではありませんが、緩和ケア外来やペインクリニックで相談できるため、主治医に「ブロック療法の適応はありますか?」と一度聞いてみる価値は十分にあります。
自宅でできる!痛みを逃がす「姿勢(ポジショニング)」の工夫
お薬の調整は医師の仕事ですが、ご家族の「手」で物理的な痛みを和らげる方法があります。
背中とお腹の痛みを和らげる「シムス位」
膵臓がんの方は、仰向けで寝ると内臓が背中側の神経を圧迫して痛みが強まる傾向があります。
逆に、横向きになって少し前かがみになり、上の膝を曲げて抱え込むような姿勢(シムス位)になると、お腹の緊張が解けて神経の圧迫が解除され、楽になることが多いです。
【ご家族の必須アイテム】痛みを逃がすポジショニングクッション
楽な姿勢を維持するには、家庭用の普通の枕では高さや硬さが足りず、逆に体が疲れてしまいます。
- 背中や膝下を支える:
体の重みを分散し、好きな角度で固定できる「介護用クッション(バナナ型やL字型など)」を背中や膝の間に挟んであげてください。 - 睡眠の質が劇的に変わる:
体圧が分散されることで、夜の眠りの深さが全く変わります。
※Amazonや楽天で「介護用 ポジショニングクッション」と検索し、大きめのもの(背中や足の下・間に入れるもの)を2〜3個用意しておくことを強くお勧めします。
痛みが和らいだ後に直面するのが「食べられない」悩みです。
下痢(脂肪便)を防ぐ食事術や、少量で栄養を摂る「高密度栄養」のコツを知り、親の体重と体力を守りましょう。
「夜中に痛がらないか怖い」家族の不眠を防ぐ2つのIT見守り術
膵臓がんの看病で、ご家族が最も疲弊するのは「いつ激しい痛みが襲ってくるか分からない恐怖」です。
隣の部屋で寝ていても、「今、痛がっていないか?」「苦しくて身もだえしていないか?」と気になって、ご家族自身が不眠症になり、倒れてしまうケースが後を絶ちません。
「24時間ずっと監視していなければ」という呪縛からご家族を解放するために、プライバシーと不安の度合いに合わせて2つのツールを使い分けてください。
1. 別室から「痛がる様子や姿勢」を直接確認したいなら「見守りカメラ」
「痛そうな顔をしていないか」「痛みを逃がすためのシムス位のクッションが外れていないか」を視覚で確認したい場合は、スマホと連動する室内用見守りカメラが非常に役立ちます。
【不安をなくす】スマホからいつでも確認「防犯プレミアム」
- ドアを開けずに様子見ができる:
別室のベッドで横になりながらでも、スマホの画面で「顔をしかめていないか」をいつでも確認できます。
ドアの開け閉めで本人の眠りを妨げることもありません。 - 双方向の会話機能:
本人が痛くて目を覚ました時、スマホ越しに「すぐにお薬(レスキュー)持っていくからね」と声をかけ、安心させることができます。
※介護・見守り用として導入実績の多い専門店です。配線工事不要の置き型タイプが数千円の低予算で手に入り、即日出荷ですぐに使えます。
2. プライバシーを守り「異常な動き」を察知するなら「見守りプラグ」
まだ本人が「カメラで見張られるのは嫌だ」と感じる時期や、ご家族自身が「カメラの映像が気になって逆に眠れない」という場合は、モーションセンサーで静かに見守るKDDIの「au 見守りプラグ」が最適です。
【看護師推奨】カメラなしで安心の「見守りプラグ」
- 夜間の異常な動き(痛みのサイン)を検知:
痛みで寝返りを激しく繰り返したり、のたうち回ったりする不穏な動きをセンサーが察知し、スマホに通知します。 - つきっきりの緊張からの解放:
ずっと側で見守り続ける必要はありません。
「痛みが強くなればスマホが教えてくれる」という安心感こそが、ご家族が別室で深く眠るための唯一の薬になります。
コンセントに挿すだけ|au 見守りプラグで家族の「不眠」を解消する
がん闘病は「お金」と「生活」の戦いでもあります。
後悔しないための3つの生活防衛を確認し、将来的な介護破産を防ぐための実家活用術も視野に入れておきましょう。
今動くことが、家族全員を守ることにつながります。
家族の心のケア|「痛がっている姿」を見るのが辛いあなたへ
激しい痛みに苦しむ親を前にして、「背中をさすることしかできない」「代わってあげられない」と自分を責めないでください。
あなたがオロオロしたり、泣いたりしてしまうと、ご本人は「自分のせいで家族が悲しんでいる」「これ以上痛いと言ってはいけない」と気を遣い、さらに精神的な苦痛を抱え込んでしまいます。
あなたがすべきことは、自分の手で痛みを止めることではなく、「痛みを止めるためのプロ(医師・看護師)」を迅速に動かすことです。
そして、痛みが和らいだ空き時間で、ただ静かに手を握ったり、他愛ない話をしたりする。
「家族」にしかできない役割に集中してください。
まとめ|痛みゼロは「わがまま」ではない。穏やかな日々を取り戻すために
膵臓がんの痛みは、決して「耐えるべきもの」ではありません。
現代医療と、姿勢を支えるクッション、そして異変を知らせる見守りツール。
これらを組み合わせることで、必ず穏やかな時間を取り戻せます。
✅痛みをコントロールする3つの鉄則
- 医療用麻薬を正しく使い、レスキューの使用回数をメモして医師に増量を交渉する。
- ポジショニングクッションを使って「シムス位」を作り、神経の圧迫を逃がす。
- 見守りカメラやau 見守りプラグを活用し、「見逃す恐怖」を手放して家族も休息をとる。
痛みが消えれば、会話が増えます。笑顔が戻ります。
まずは、主治医や訪問看護師に「今の痛み」をありのままに伝えることから始めてみませんか?











