腎臓病で「痩せてきた」は危険信号!PEWを防ぎ透析を避ける「攻め」の食事療法

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「先生、最近やっと体重が落ちてきたんです。食事制限、頑張ってますから」

私が事務長を務める在宅医療クリニックでも、診察時にそう笑顔を見せる患者様がいらっしゃいます。
しかし、血液検査の結果を見た医師と私の表情は曇ります。

なぜなら、腎臓病の保存期における「意図しない急激な体重減少」は、腎機能の悪化を加速させ、人工透析を一気に引き寄せる危険なサインだからです。

その正体は「PEW」

PEW(Protein-Energy Wasting)
=たんぱく質・エネルギー消耗状態

真面目に食事制限をする人ほど陥りやすい、筋肉と脂肪が削げ落ちていく低栄養状態のことです。

今回は、この「PEW」の恐怖と、あなたの大切な筋肉と腎臓を守るための「攻め」の食事療法について、現場の視点から深掘りします。

✅この記事はこんな人におすすめ

  • 食事制限を厳格に守っているのに、検査数値が悪化している人
  • 最近、急激に体重が落ちて体力不足・疲れやすさを感じている人
  • 「これ以上何をどう食べればいいのか分からない」と献立に悩んでいる人
目次

なぜ「痩せる」と腎機能が悪化するのか?PEWの正体

一般的に、ダイエットでの体重減少は健康に良いイメージがあります。

しかし、慢性腎臓病(CKD)において、エネルギー不足を伴う体重減少は致命的です。

なぜ「食べないこと」が腎臓を壊すのでしょうか。そのメカニズムを解説します。

筋肉が削られると「毒素」が急増する

私たちの体には、心臓を動かし呼吸をするために最低限必要なエネルギー(カロリー)があります。

食事からのエネルギーが不足し摂取カロリーが消費カロリーを下回ると、体は自らの「筋肉」を分解してエネルギーに変えようとします(異化亢進)。

体の中での流れはこんな感じです。

過度な食事制限

「腎臓のために」と食事量を減らしすぎ、エネルギー(カロリー)不足に陥る。

筋肉の分解開始

不足したエネルギーを補うため、体は自分の筋肉を分解して燃料にする。

老廃物の大量発生

筋肉が分解されると、燃えカスである老廃物(クレアチニンや尿素窒素)が大量に出る。

腎臓への過負荷・悪化

ただでさえ弱っている腎臓に「老廃物のろ過」という重労働を強いることになり、腎機能(eGFR)がさらに低下する。

つまり、「腎臓を休ませるために食事を減らした結果、逆に腎臓を過労死させている」という、恐ろしいパラドックスが体の中で起きているのです。

「痩せ」と透析導入・死亡率の関係

実際に、日本腎臓学会のガイドラインや多くの臨床データにおいて、BMIが低い(痩せている)患者ほど、末期腎不全への進行や死亡リスクが高いことが示されています。

CKD患者において、低BMI(痩せ)は死亡および末期腎不全のリスク因子である。出典:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン

「太りすぎ」も良くありませんが、腎臓病のステージが進むにつれて(特にステージG3b以降)、最も警戒すべきは圧倒的に「低栄養(PEW)」なのです。

「良かれと思って続けた粗食」が、実は透析へのカウントダウンを早めていたかもしれません。
今の努力を無駄にせず、クレアチニン値を下げて透析導入を1日でも遠ざけるための「保存療法の新常識」を今すぐ確認して、大切な腎臓を守り抜いてください。

頑張りすぎた食事制限が招く「低栄養の罠」

私が現場で見てきた中で、PEWに陥りやすいのは「真面目で責任感が強い方」や、それを支える「献身的なご家族」です。

相談者

お医者さんにたんぱく質を減らせと言われたから、肉も魚も半分にしました。ご飯も少なめにしています

この心がけは素晴らしいのですが、ここに大きな落とし穴があります。

たんぱく質制限の「裏」にある必須条件

おかず(たんぱく質)を減らすと、同時に「カロリー(エネルギー)」まで減ってしまうのが最大の問題です。

ここが超重要!

たんぱく質制限を行う際は、減らしたたんぱく質の分だけ、糖質(お米など)や脂質(油)でカロリーを「上乗せ」しなければなりません。

これを怠ると、即座に筋肉の分解(PEW)が始まります。

「お腹が空いていないから」「粗食の方が体に良さそうだから」。
そんな理由で食事量を減らすことは、腎臓にとって自殺行為に近いと言っても過言ではありません。

筋肉を守る「攻め」の食事療法:3つの鉄則

では、どうすればPEWを防ぎ、腎臓を守れるのでしょうか。
これまでの「守り(制限)」の意識を変え、「攻め(確保)」の食事療法に切り替えましょう。

鉄則1:おやつ(補食)でエネルギーを確保する

3回の食事だけで十分なエネルギー(一般的に1600〜2000kcal程度※)を確保するのは、高齢の方や食が細い方には困難です。
※必要エネルギー量は性別・活動量・標準体重により異なります。

✅そこで重要なのが「治療としてのおやつ」です。

  • 低たんぱく・高カロリーなゼリー(粉飴ムースなど)
  • MCTオイル(中鎖脂肪酸)を混ぜたコーヒーや味噌汁
  • でんぷん製品(あめ玉、餅、春雨、くずきり)

これらを活用し、1日200〜300kcalを「補食」として稼いでください。

鉄則2:主食を「低たんぱく米」に完全に切り替える

普通のご飯(白米)には、意外と多くのたんぱく質が含まれています(茶碗1杯150gで約3.8g)。

3食普通のご飯を食べると、それだけで1日のたんぱく質制限枠の30〜40%を使ってしまい、肉や魚などの「良質なたんぱく質(アミノ酸スコアが高い食材)」を食べる余裕がなくなります。

主食を「特殊食品(低たんぱく米)」に変えることで、ご飯からの植物性たんぱく質摂取を抑え、その分をおかずに回せます。

結果、エネルギーはしっかり確保しつつ、満足度も上がります。

鉄則3:1日に必要な栄養素を「正確に」計算する

これが最も難しく、最も重要なポイントです。

PEWを防ぐには、以下の非常に狭いストライクゾーンを狙い続ける必要があります。

  • たんぱく質 制限の上限ギリギリまで摂る(不足すると筋肉が落ちるため)
  • カロリー 基準値を絶対に下回らない(余分なカロリーは必要だが、肥満も避ける)
  • 塩分 厳格に6g未満(高血圧による腎障害を防ぐ)

自炊の限界。なぜ「正確な管理」は家庭で不可能なのか?

厳しいことを申し上げますが、この「狭いストライクゾーン」を毎日3食、家庭の台所で365日続けるのは、プロの管理栄養士であっても至難の業です。

相談者

自分で計算して作っていますが、ダメでしょうか?

素晴らしい努力です。
しかし、食材の個体差、調味料の計量誤差、体内での吸収率の違いなどで、計算上の数値と実態には必ずズレが生じます。

「頑張って計算しているのに数値が悪化する」原因の多くは、この見えない誤差にあります。

さらに、毎食「これは何グラム、あれは何カロリー…」と計算しながら作る食事は、作る側(ご家族)の精神を削り、食べる側(患者様)に「申し訳ない」という罪悪感を生みます。

食事が「楽しみ」から「苦痛な作業」に変わってしまっては、長期間の闘病生活は続けられません。

PEW予防の救世主「腎臓病専用宅配食」という選択肢

そこで私が、医療現場の事務長として強く推奨するのが、1日1食〜2食を「腎臓病専用の宅配食(制限食)」に置き換えることです。

これは「家事の手抜き」ではありません。
「成分表に嘘のない、計算され尽くした医療的な処方箋」を食べるのと同義です。

管理栄養士による「精密な計算」を食べるメリット

腎臓病対応の宅配食(ウェルネスダイニングDr.つるかめキッチンなど)は、腎臓病の専門知識を持つ管理栄養士がメニューを設計しています。

スクロールできます
項目家庭料理での管理専用宅配食
たんぱく質食材のブレで誤差が出やすい制限内かつ良質なアミノ酸を確保
塩分・カリウム減塩=味が薄くなり食欲減退出汁や下処理で味しっかり&除去済み
エネルギー不足しがち(計算が複雑)300kcal以上を確実に確保

「自分で計算しなくていい」「これを食べていれば大丈夫」という安心感は、何物にも代えがたい精神安定剤になります。

3食すべて置き換える必要はありません。
夕食だけ置き換えて、朝と昼は好きなものを軽く食べるなど、メリハリをつけることで継続もしやすくなります。

実際に、宅配食を取り入れてから「体重減少が止まった」「数値が安定した」という患者様を数多く見てきました。

何より、「食事のことで喧嘩しなくなった」と、ご家族の笑顔が増えるのが一番の治療効果だと感じています。

「頑張っても数値が下がらない」と一人で献立に頭を抱えるのはもう終わりにしませんか?
プロの管理栄養士に任せるだけで、驚くほど数値が安定し、家族の笑顔も増えます。看護師が実食して選んだ「本当に効果が出る」腎臓病宅配食ランキングから、あなたに最適な一箱を見つけてください。

腎臓病の食事療法に関するよくある質問

体重が減るのは良いことではないのですか?

腎臓病において「脂肪や筋肉が落ちて痩せる」のは危険信号です。ただし、治療によって余分な水分(むくみ)が抜けて体重が減る場合は良い傾向です。数日で2〜3kg変動するのは「水」、月単位で徐々に減るのは「体」の変化です。後者の場合は、担当医や管理栄養士に至急相談してください。

筋肉を戻したいので、市販のプロテインを飲んでもいいですか?

自己判断での市販プロテイン摂取は危険です。一般的なプロテインはたんぱく質含有量が非常に高く、腎臓に過度な負担をかけ、クレアチニン値を急上昇させる恐れがあります。筋肉を維持するには、まず「十分なカロリー(エネルギー)」を摂ることが最優先です。

食欲がなく、指定されたカロリーを摂りきれません。

無理に量を食べようとせず、「密度」を上げましょう。MCTオイル(中鎖脂肪酸)を味噌汁やコーヒーに入れたり、腎臓病用の高カロリーゼリー(粉飴ムースなど)を活用するのがおすすめです。これらは少量で高エネルギーを確保でき、腎臓への負担も少ない食品です。

宅配食(制限食)は毎日3食食べないと意味がありませんか?

いいえ、1日1食の置き換えでも十分な効果が期待できます。夕食だけ宅配食にして「正確な成分管理」を行い、朝と昼はご自身の好きなものを軽く食べるなど、メリハリをつけることでストレスなく継続でき、数値の安定につながりやすくなります。

家族と同じメニューで、私の分だけ量を減らして食べています。

それは「低栄養(PEW)」の最大要因です。量を減らすと、たんぱく質だけでなくエネルギーまで不足してしまいます。同じメニューにするなら、ご自身の分だけ春雨サラダを追加したり、ご飯を低たんぱく米に変えて大盛りにするなど、エネルギーを「足す」工夫が必須です。

宅配食は自炊より割高に感じてしまいます。

確かに1食あたりは高く見えますが、食材の廃棄ロスや、個別に違う料理を作るガス代・手間(時間単価)を考えると、実はコストパフォーマンスは悪くありません。何より、透析導入を遅らせることができれば、将来的な医療費や生活の質において数百万円単位のメリットがあります。

まとめ:体重維持は、腎臓を守る「最大の治療」です

「痩せてきた」は、腎臓からのSOSです。
数値の悪化を止めるために必要なのは、さらなる我慢や制限ではなく、「正しく食べて、筋肉を守る」こと。

しかし、それを家庭の調理だけで完璧に行うには限界があります。

あなたの腎臓を守り、透析導入を1日でも遠ざけるために。
プロの技術が詰まった「宅配食」という武器を、今の生活に取り入れてみてください。

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kawauchi
看護師/訪問診療クリニック事務長/計画相談員
私は、看護師として重症心身障害病棟・救命救急HCUに従事した後、有料老人ホームの管理者・看護部長・福祉事業部統括として、入居者の生活と医療連携の現場に携わってきました。

現在は、訪問診療クリニックの事務長として在宅医療の運営に関わると同時に、計画相談員・医療福祉コンサルタントとして、東海エリアを中心に施設紹介・身元保証・医療介護連携の支援を行っています。

病院・施設・在宅という立場の異なる現場をすべて経験してきたからこそわかる、制度論だけではない「現場のリアル」や「家族が直面する苦悩」を踏まえた発信を大切にしています。

このブログでは、現場経験に基づく実践的な情報を軸に、後悔しない選択のための情報を発信しています。
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