「今日はどうしても料理をする気力がない……」
「家族の食事とは別に、減塩食を作るのが辛い」
毎日、腎臓を守るために食事療法を頑張っているからこそ、そんなふうに思う日は誰にでもあります。
私がこれまで関わってきた患者様でも、真面目な方ほど「一食でも手を抜いたら数値が悪化するのではないか」とご自身を追い込んでしまいがちです。
むしろ、ストレスを溜め込んで食欲不振になるほうが、体力を落としリスクになることもあります。
ただし、何も考えずに選んでしまうと、たった一食で1日分の塩分や、腎臓に負担をかける「リン」を過剰摂取してしまう危険性も潜んでいます。
この記事では、看護師また元施設管理者の視点から、「検査データを守りながらコンビニ・スーパーを利用する鉄則」と「具体的な選び方」を解説します。
⚠️ 注意
本記事は、CKD(慢性腎臓病)保存期(ステージG3〜G4)の方を一般的な対象としています。
カリウム制限等が厳密に指導されている方や透析中の方は、必ず主治医の指示を優先してください。
腎臓病(保存期)でもコンビニ・スーパーの食事は食べていい?
たまの息抜きとして利用するのは「あり」ですが、そこには明確な条件があります。
腎臓病の進行を抑えるために、以下の「3つの絶対基準」をクリアできる商品を選ぶ必要があります。
- 基準1:塩分は1食あたり2.0g前後
(※日本腎臓学会『CKD診療ガイドライン2023』推奨の1日6g未満より算出) - 基準2:タンパク質の「質」と「量」を見極める
- 基準3:「見えない添加物(無機リン)」を徹底して避ける
なぜ「選び方」が重要なのか
コンビニやスーパーのお弁当は、万人に「美味しい」と感じさせるために、どうしても塩分と糖質が高めに作られています。
また、保存性を高めるために使用される「食品添加物」には、腎機能が低下している方にとって大敵である「リン」が含まれていることが多いのです。
「食べてはいけない」わけではありません。
「中身を知って、賢く選ぶ(=リスク管理する)」ことができれば、これらは強力な味方になります。

【実践編】失敗しない商品選びの3ステップ
売り場で迷ったときは、この3つの手順で確認してください。
慣れてしまえば、1分で「腎臓に優しい商品」を見分けられるようになります。
STEP1:栄養成分表示の「食塩相当量」を必ず見る
パッケージの裏面または表面にある成分表示を確認します。ここで見るべきはカロリーよりも「食塩相当量」です。
1つの商品(または組み合わせた合計)が2.0g前後に収まるかを計算してください。
💡 ポイント
古い商品などで「ナトリウム(mg)」しか表示がない場合は、以下の計算式で換算します。ナトリウム量(mg) × 2.54 ÷ 1000 = 食塩相当量(g)
STEP2:避けるべき「NGワード」をチェック
原材料名を見て、以下の「リン酸塩」を含む添加物が記載されていないか確認しましょう。
これらは吸収率の高い「無機リン」です。
⚠️避けるべき添加物(NGワード)
- pH調整剤
- リン酸塩(Na)
- 結着剤
- 乳化剤(一部)
特にハム、ソーセージ、ベーコン、練り物(ちくわ等)は、塩分もリンも高いため、可能な限り避けるのが無難です。
STEP3:「単品」を避け「定食化」する
カツ丼、パスタ、ラーメンなどの「単品メニュー」は、それだけで塩分が3g〜5gを超えることがザラにあります。
「主食(おにぎり・ご飯)+主菜(肉・魚)+副菜(野菜)」の組み合わせで購入することで、塩分を調整しやすくなり、栄養バランスも整います。
看護師が選ぶ!コンビニ活用術(セブン・ローソン・ファミマ)
では、具体的にどのような組み合わせなら安心なのでしょうか。
大手コンビニで入手しやすい商品を例に、理想的な組み合わせを紹介します。
おすすめの組み合わせ例:合計塩分 約1.8g〜2.2g
| 区分 | 選ぶべき商品 | ポイント |
|---|---|---|
| 主食 | おにぎり(昆布・鮭) または 白飯パック | 「チャーハン」や「炊き込みご飯」は塩分が高いのでNG。具材がシンプルで、お米自体に味付けがないものを選びましょう。 |
| 主菜 | サラダチキン(プレーン) 焼き魚(塩焼き) | 「ハーブ味」や「照り焼き」は塩分が高くなりがちです。プレーンを選び、1個を2回に分けて食べる等の工夫も有効です。 |
| 副菜 | カップサラダ (ドレッシング別売り) | ドレッシングは「全部かけない」のが鉄則。ノンオイルタイプを少しだけ使うか、自宅のマヨネーズ(大さじ1で塩分約0.2g)を使いましょう。 |
ホットスナックには要注意
レジ横にあるホットスナック(唐揚げ、コロッケ、フランクフルトなど)は魅力的ですが、腎臓病の方にはおすすめできません。
理由は、衣自体にしっかり味がついている(塩分が高い)ことと、加工段階でリン酸塩が多く使われている可能性が高いためです。
「衣を剥がせば大丈夫」と思われる方もいますが、下味が肉や具材に染み込んでいるため、リスクは避けきれません。
スーパーのお惣菜コーナーで買うならコレ!
スーパーマーケットのお惣菜コーナーは、コンビニよりも選択肢が広く、より安全なメニューを選びやすい傾向があります。
✅ 狙い目は「刺身」と「天ぷら」
刺身の盛り合わせ
最強の腎臓病食の味方です。
素材そのものには塩分が含まれていないため、「減塩醤油」を自分で計量して使えば、塩分を大幅にカットできます。
新鮮な魚は良質なタンパク源でもあります。
野菜やエビの天ぷら
意外かもしれませんが、天ぷらは「衣」でエネルギー(カロリー)を確保できるため、エネルギー不足になりがちな腎臓病の方には適しています。
ただし、「天つゆ」や「塩」はかけず、そのままで食べるか、減塩だし割り醤油などで調整してください。
衣が厚すぎる場合は、少し外して調整するのもテクニックの一つです。
❌ 注意が必要なお惣菜
- 煮魚・煮物:時間が経つほど味が染み込み、煮汁の塩分・糖分を吸い込んでいます。
- 焼き鳥(タレ):タレの塩分と糖分が非常に高いです。選ぶなら「塩」を選び、食べる時にキッチンペーパー等で塩を少し拭き取るくらいが丁度よいでしょう。
自宅で食事をするなら、主食を「低たんぱく米」に変えるだけで、おかずの品数を増やせます。
看護師が実食して選んだ「本当に美味しいパックご飯」はこちら。

【重要】コンビニ・スーパー食の「隠れたリスク」とは?
ここまで「選び方」をお伝えしてきましたが、医療従事者として、どうしてもお伝えしなければならない「不都合な真実」があります。
それは、「加工食品のリン(無機リン)は、ほぼ100%体に吸収される」という事実です。
普段、お肉や魚などの自然食品から摂取するリン(有機リン)は、吸収率が20〜60%程度です。
しかし、コンビニ弁当や惣菜に使われる食品添加物のリン(無機リン)は、水に溶けやすく、吸収率が90%以上とも言われています。
リンの数値が高くなると、血管の石灰化が進み、将来的に動脈硬化や心筋梗塞のリスク、そして透析導入を早める原因にもなりかねません。
また、コンビニ弁当の野菜は、変色を防ぐ処理(pH調整剤など)がされていることが多く、カリウムがどの程度残っているか、あるいは添加されているかが不透明です。
つまり、「成分表示上の数値はクリアしていても、腎臓への負担は手作り食よりも大きい」というリスクがあるのです。
「計算が面倒」「悪化が怖い」なら、医療対応の宅配弁当をストックしよう
コンビニやスーパーの食事は、あくまで「緊急時の避難用」や「たまの楽しみ」として考えるのが正解です。
しかし、体調が悪くて料理ができない日は、月に何度かやってくるものです。
そんな日のために、私が最も推奨しているのが「腎臓病食(制限食)の宅配弁当(メディカルフードサービスなど)を冷凍庫にストックしておくこと」です。
市販の弁当 vs 医療用宅配弁当
| 項目 | コンビニ・スーパー弁当 | 医療用宅配弁当 |
|---|---|---|
| 塩分・タンパク質 | 自分で計算・調整が必要 (誤差が出やすい) | 管理栄養士が計算済み (塩分2.0g以下など正確) |
| リン・カリウム | 表示義務がなく不明確 無機リンが多い | 数値が明記されている 添加物に配慮されている |
| 手間 | 買いに行く手間がある | レンジで温めるだけ |
「今日は料理したくない」と思ったその瞬間に、電子レンジで温めるだけで、医師に胸を張って報告できる食事が完成します。
「これさえあれば大丈夫」という保険が冷凍庫にあるだけで、毎日の食事療法の精神的な負担は劇的に軽くなります。

腎臓病の食事に関するよくある質問
- カップラーメンはスープを飲まなければ食べてもいいですか?
-
基本的にはおすすめしません。
カップラーメンは麺自体に塩分(練り込み)が多く含まれており、スープを全量残しても麺だけで塩分2.0gを超える商品が多いからです。また、麺の食感を良くするための「かんすい」や加工デンプンには無機リンが含まれます。
どうしても食べる場合は、「減塩タイプ」を選び、麺を半分残す、茹でこぼす(カップ焼きそば等)などの工夫が必要ですが、頻度は控えめにしましょう。
- おにぎりで「腎臓に優しい具材」はありますか?
-
「昆布」「鮭」「おかか(醤油少なめ)」など、シンプルな具材がおすすめです。
逆に避けるべきなのは、塩分が高い「チャーハン」「オムライス」や、魚卵(塩分とリンが高い)を含む「明太子・たらこ・すじこ」です。海苔にはカリウムが含まれますが、おにぎりに巻かれている量程度であれば、厳格な制限がない限り過度に心配する必要はありません。
- パン(サンドイッチや菓子パン)を選んでも大丈夫ですか?
-
パンは意外と塩分が高い食品ですので注意が必要です。
食パン1枚(6枚切り)で塩分約0.8g〜0.9gが含まれます。ハムやチーズが入った惣菜パンは、塩分と無機リンが重なるため避けましょう。
選ぶなら「レタスサンド」などの野菜中心のサンドイッチや、シンプルな「ロールパン」などを選び、成分表示で塩分量を確認してください。
- おやつ・スイーツが食べたいです。選び方は?
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エネルギー(カロリー)確保のためにおやつは有効です。
おすすめは、タンパク質とリンが少ない「わらび餅」「くず餅」「ゼリー」「シャーベット」などです。
一方、生クリームや卵をたっぷり使った「シュークリーム」や「プリン」はリンが高くなりやすく、焼き菓子(カステラ等)はベーキングパウダー(膨張剤)に無機リンが含まれることがあるため、成分表示の確認が必要です。
- 野菜不足が気になるので、コンビニの野菜ジュースを飲んでもいいですか?
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腎機能が低下している場合、自己判断での野菜ジュース摂取はリスクがあります。
濃縮還元の野菜ジュースはカリウム値が非常に高い商品が多く、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。飲む場合は、主治医に相談するか、パッケージに「低カリウム」と明記された腎臓病対応の商品を選ぶようにしてください。
- 飲み物は「お茶」なら何でも良いのでしょうか?
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「麦茶」や「ほうじ茶」「玄米茶」がおすすめです。
これらはカリウムやリンが比較的少なめです。注意が必要なのは「玉露」や「濃い抹茶」などで、これらはカリウムが多いため飲み過ぎないようにしましょう。
また、ペットボトルのお茶を選ぶ際も、特定の健康成分が強化された「トクホ(特定保健用食品)」の中には成分が凝縮されているものもあるため、普通の麦茶や水が無難です。
「たまには甘いものが食べたい」という時のために。
コンビニや市販で買える、腎臓に負担をかけないお菓子の実名リストを作りました。

まとめ:コンビニも活用しつつ、長く腎臓を守ろう
腎臓病の食事療法は、長距離マラソンのようなものです。たまにはコンビニやスーパーのお惣菜で息抜きをすることは、走り続けるために必要なことでもあります。
- 塩分は必ず計算する(食塩相当量2.0g以下を目指す)
- 単品ではなく、定食スタイルで揃える
- 無機リン(添加物)のリスクを知っておく
この3点を意識しつつ、ベースとなる食事には安全な「宅配弁当」などを上手く取り入れて、無理なく、賢く、大切な腎臓を守っていきましょう。

