親の体調が不安定で、通院のたびにタクシーを手配し、車椅子で病院まで連れて行く。
そんな生活が何か月も続くと、介護する側も心身ともに疲れ果ててしまいます。
「病院に連れて行きたいけど、移動が大変…」
「体調が悪くても、病院まで行くのが難しい…」
このような悩みに応えるのが訪問診療です。医師や看護師が定期的にご自宅に訪問し、病院とほぼ同等の診療・治療を提供してくれる制度です。
本記事では、訪問診療の定義・対象者・費用の仕組み・負担軽減制度まで、介護家族目線で分かりやすく解説します。
訪問診療とは? – 定義、往診との違い、医療保険の適用

訪問診療と往診の違い
混同されがちな「訪問診療」と「往診」ですが、実は明確な違いがあります。
- 訪問診療:医師が定期的に(例:月2回)計画的に訪問し診療を行う
- 往診:急な体調変化など臨時対応で訪問する
訪問診療は「計画的」、往診は「緊急対応」と覚えると理解しやすいでしょう。
医療保険と介護保険の使い分け
訪問診療は医療保険が基本です。ただし、診察後のリハビリや生活支援などは介護保険が適用されることもあります。
- 医療保険:診察、薬の処方、検査、医療処置など
- 介護保険:訪問リハビリ、日常生活の介助など
訪問診療を受けられる対象者はどんな人?

主な対象者
訪問診療を受けられるのは、通院が困難な方です。具体的には:
- 高齢で外出が難しい
- 寝たきり、もしくは歩行が困難
- 認知症で外出が不安
- がん末期で在宅療養を希望
- 慢性疾患で通院負担が大きい
申し込みの流れ
- かかりつけ医やケアマネジャーに相談
- 医師が訪問診療の必要性を判断
- 訪問診療計画を作成し、月2回などの訪問スケジュールを決定
訪問診療の費用はいくら?構造と目安

訪問診療の費用は、基本診療費と追加加算費用で構成されます。
基本診療費
- 在宅時医学総合管理料:1か月あたり(例:4,500〜15,000円)
- 訪問診療料:1回あたり(例:800〜2,500円)
追加加算費用
- 検査や処置(採血、心電図など)
- 時間外・休日・深夜の対応
- チーム医療加算(訪問看護との連携など)
自己負担割合と月額目安
- 1割負担:月約7,000円前後(訪問2回+軽度の検査)
- 2割負担:月約14,000円
- 3割負担:月約20,000円前後
費用負担を減らす!活用できる制度

高額療養費制度
医療費が一定額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
例:年収約370万円の方(70歳以上)は1か月の自己負担上限が約18,000円に抑えられます。
医療費控除
年間の医療費が10万円を超える場合、確定申告で所得税の一部が戻ります。
自治体の助成
一部自治体では高齢者の在宅医療費補助があります。市区町村の福祉課に確認しましょう。
実際の費用シミュレーション/体験談

事例:80歳女性、要介護4、在宅療養中
- 月2回訪問
- 採血あり
- 1割負担
費用明細
在宅時医学総合管理料:4,500円
訪問診療料(2回):1,600円×2=3,200円
検査料:1,000円
合計:8,700円/月
娘さんは「病院までの移動がなくなり、母も私も精神的に楽になった」と話します。
自治体による費用助成・支援制度の活用方法

横浜市の事例
- 訪問診療に直接的な助成制度はないものの、「在宅医療連携拠点」を各区に整備。
- ケアマネジャーや看護師が常駐し、訪問診療導入や制度活用の相談が可能。
他自治体の支援事例
- 青森県:訪問診療や訪問看護のための医療機器・車両購入費を補助
- 滋賀県:医療資器材、タブレット端末、訪問用車両の整備に助成
- 長野県:訪問診療に必要な車両整備等を福祉医療の一環として支援
助成制度を探すコツ
- 市区町村の公式サイトで「在宅医療 助成」や「訪問診療 補助」を検索
- 福祉課・高齢福祉課に電話で確認
- ケアマネジャー経由で情報を入手
まとめ:訪問診療のメリット・注意点と次のステップ

訪問診療は、通院困難な方にとって大きな安心と生活の質向上をもたらします。
メリット
- 移動負担ゼロ
- 医師と継続的に関われる
- 緊急時も安心
注意点
- 訪問可能エリアが限定される
- 医療処置の種類に制限がある場合も
まずは、かかりつけ医かケアマネジャーに相談して、訪問診療の導入可否を確認しましょう。