「REF-P1と栄養剤、どっちを先に入れるんだっけ?」「内服薬はどのタイミングで注入するのが正解?」「注入速度はどれくらい?」
経管栄養のケアに入った際、このような疑問を抱いたことはありませんか?
現在、私は訪問診療クリニックで事務長を務めていますが、以前は救急病棟や重症心身障害児(者)施設で看護師として働き、その後は有料老人ホームの管理者も経験してきました。
現場で多くの新人看護師やブランク明けの復職看護師を指導してきましたが、「REF-P1(レフピーワン)の正しい使い方と、その根拠」をしっかりと理解できている人は意外と多くありません。
手順や注入速度を間違えると、胃瘻チューブの閉塞(詰まり)や患者さんの嘔吐・誤嚥といった重大なインシデントに繋がりかねません。
この記事では、看護師×在宅医療の専門家という視点から、REF-P1と内服薬の正しい注入手順、メーカーのガイドラインに基づく明確な注入速度、チューブが詰まった際の対処法を、医学的な根拠とともに徹底解説します。
これを読めば、明日からの経管栄養ケアに確かな自信を持てるようになりますよ。
REF-P1(レフピーワン)とは?なぜ経管栄養で使うの?
そもそも、なぜ液体の栄養剤だけでなく、REF-P1を使用するのでしょうか?
まずはその「目的」と「仕組み」を正しく理解することが、安全なケアの第一歩です。
厚生労働省や関連学会のガイドラインなどでも、安全な経管栄養の実施には栄養剤の適切な粘度調整が推奨されています。
胃瘻からの逆流・漏れを防ぐ「半固形化」の仕組み
従来の経管栄養では、液体の流動食をそのまま胃に注入していました。
しかし、寝たきりの方や胃の働きが低下している高齢者の場合、液体のままだと以下のようなリスクが伴います。
- 胃から食道への逆流(それに伴う誤嚥性肺炎)
- 胃瘻周囲からの栄養剤の漏れ(スキントラブルの原因)
- 急速に腸へ流れ込むことによる下痢(ダンピング症候群)
これらのリスクを軽減するために開発されたのが、「胃の中で栄養剤を半固形化(ゼリー状・ヨーグルト状に)する」というアプローチです。
REF-P1は、液体の流動食と混ざることで、胃内でドロっとした状態に変化させるための粘度調整食品なのです。
半固形化することで、胃の中に留まりやすくなり、逆流や漏れを防ぎ、人が本来持っている生理的な消化吸収のプロセスに近づけることができます。
ペクチンとカルシウムの化学反応(根拠の解説)
では、なぜREF-P1を入れると固まるのでしょうか?
その理由は、REF-P1に含まれる成分と、栄養剤に含まれる成分の「化学反応」にあります。
REF-P1の主成分は「ペクチン」という水溶性の食物繊維です。
(リンゴやみかんなどに含まれる、ジャムを固める成分と同じです)
このペクチンは、濃厚流動食(栄養剤)に含まれる「カルシウム(Ca)」と胃の中で混ざり合うことで反応し、ゲル化(半固形化)します。
つまり、「冷やして固める」のではなく、「成分同士の反応で固める」という仕組みです。
この根拠を知っていると、「なぜ手順を間違えるとチューブの中で固まってしまうのか」が明確に理解できるはずです。
【基本マニュアル】REF-P1の正しい手順・薬のタイミング・速度
それでは、現場で最も迷いやすい「内服薬のタイミング」を含めた、具体的な注入の一連の手順と速度について解説します。
結論から言うと、「内服薬 → REF-P1 → 栄養剤」の順番が絶対的な基本ルールです。
手順① 内服薬の注入とフラッシュ
基本ルールとして、簡易懸濁法などで溶かした内服薬は一番最初(REF-P1を入れる前)に注入します。
なぜ薬が一番最初なのか?
それは、栄養剤が胃の中で半固形化した後に薬を入れると、薬がゼリーの塊の上に乗っかってしまい、胃の粘膜に触れず正しく吸収されない恐れがあるからです。
- 内服薬の注入
- 微温湯フラッシュ(チューブ内の薬を完全に胃に押し込む。20ml程度)
※注意点:高齢者に処方されることが多い「酸化マグネシウム(便秘薬)」などは、ペクチンやカルシウムと相互作用を起こし、ゲル化を阻害したり薬の効き目が落ちたりする可能性があります。
このような薬は「食間に単独で注入する」などの指示が出ることがあるため、必ず薬剤師や処方指示を確認してください。
手順② REF-P1の注入とフラッシュ
胃を空っぽにした状態(内服薬と微温湯だけが入った状態)に、REF-P1を単独で注入します。
用手またはシリンジで、強い圧をかけずに一定のペースで注入してください。
【💡超重要ポイント:微温湯フラッシュ】
REF-P1を注入し終わったら、必ず20ml〜30ml程度の微温湯(白湯)でチューブ内を確実にフラッシュ(押し流し)してください。
チューブ内にREF-P1が残っていると、次に栄養剤を入れた瞬間にチューブ内で化学反応が起き、完全に詰まってしまいます。
手順③ 栄養剤の注入(★時間と速度の厳守)
チューブ内が綺麗になったことを確認してから、指示された栄養剤を注入します。
ここで重要なのが、栄養剤の注入完了までの「時間」と「速度」です。
メーカー(株式会社クリニコ)の公式ガイドラインに基づく、エビデンスレベルの基準は以下の通りです。
- 胃内投与の場合:REF-P1注入後、60分以内に栄養剤の投与を完了する。
- 小腸(十二指腸・空腸)投与の場合:REF-P1注入後、30分以内に投与を完了する。
【なぜ時間制限があるのか?】
液体の経管栄養では「200ml/h〜300ml/h」程度の速度で時間をかけて滴下することが一般的ですが、REF-P1を使用する場合は異なります。
もし2時間など長時間かけて栄養剤をダラダラと落としてしまうと、後から栄養剤が入ってくる前に、先に注入したREF-P1が胃から腸へ排出されてしまい、胃の中で混ざらず半固形化しないからです。
したがって、「1時間に200ml落とす」という発想ではなく、「処方された全量(例:300mlや400ml)を、必ず60分以内に落とし切る速度に調整する」ことが正解となります。
※注入完了後は、再度20ml程度の微温湯で最終フラッシュを行い、清潔を保ちます。
REF-P1使用時の「あるあるトラブル」と対処法
マニュアル通りにやっていても、現場では予期せぬトラブルが起こります。
ここでは、私が施設管理者・救急看護師時代によく直面した「あるあるトラブル」の対処法をお伝えします。
トラブル① チューブが詰まった!
「シリンジが硬くて押せない!チューブが詰まりました!」
これは、REF-P1と栄養剤がチューブ内で混ざってしまい、チューブの中で固まってしまった(ゲル化してしまった)ことが最大の原因です。
【対処法】
無理にシリンジを押し込むと、チューブが破裂したり、胃瘻ボタンが抜けたりして非常に危険です。
40度前後の微温湯を使って、優しくシリンジで引いたり押したり(ポンピング)を繰り返し、少しずつ溶かしながら開通を試みます。
どうしても開通しない場合は、チューブの交換が必要になることもあります。
【予防策】
予防策はただ一つ。各工程の間に、必ず20ml以上の微温湯で確実にフラッシュを行うことです。
トラブル② 下痢や嘔吐が見られる
半固形化しているにも関わらず、下痢や嘔吐が見られる場合があります。
その際のアセスメントポイントは以下の通りです。
- 投与時間を守っているか?
-
60分以上かけてしまうと胃内で固まらず、液体のまま腸へ流れ込んで下痢(ダンピング症候群)を引き起こします。
逆に、シリンジ等で数分で全量を一気に押し込むと、胃袋が急激に膨張して嘔吐を誘発します。 - 体位は適切か?
-
注入中〜注入後30分は、ギャッチアップ(30度〜45度)で上半身を起こすのが基本です。
- 便秘(宿便)はないか?
-
腸が便で詰まっていると、上から入れた栄養剤が行き場を失い、逆流・嘔吐の原因になります。
患者さんの状態を観察し、異常があれば早急に主治医へ報告しましょう。
今の職場の「教え方・マニュアル」に不安を感じたら
ここまでREF-P1の正しい手順と根拠を解説してきましたが、いかがでしょうか。
「私の職場では、先輩によってやり方が全然違う…」「根拠を聞いても『昔からこうやってるから』としか教えてもらえない」と悩んでいませんか?
医療や介護の現場において、「エビデンスのない古い手順」が横行している環境は、患者さんにとって危険であるだけでなく、看護師自身の免許やキャリアを脅かす大きなリスクになります。
万が一、チューブの閉塞による破裂や、誤嚥性肺炎による重篤なインシデントが起きた時、古い慣習を理由に「先輩がそう言っていたから」は通用しません。誰もあなたを守ってはくれないのです。
「もっと安全で、教育マニュアルが整った環境で働きたい」「根拠に基づいた正しい看護を学び直したい」と感じているなら、一度外の世界の情報に触れ、職場環境を見直すタイミングかもしれません。
その「自己流マニュアル」、あなたの免許と人生を壊す準備はできていますか?
「先輩によって言うことが違う」「根拠を聞いても『昔からこうだから』で終わり」……。
もしあなたが今、そんな環境でREF-P1(胃瘻栄養)の手順に違和感を抱いているなら、その直感は正しいです。
そして、その違和感を放置するのは、ブレーキの効かない車で高速道路を走るより恐ろしいことです。
想像してください。
古い慣習に従った結果、チューブが破裂し、患者さんが苦痛に悶える姿を。あるいは、誤嚥性肺炎で急変する夜を。
その時、あなたを指導した先輩はこう言います。
「私はそんな教え方はしていない」「最終的に判断したのは本人(あなた)でしょ?」と。
病院も先輩も、裁判所もあなたを守ってはくれません。
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REF-P1に関する良くある質問
- REF-P1を入れた後、フラッシュを忘れて栄養剤を入れてしまいチューブが詰まりました。どうすればいいですか?
-
無理にシリンジを押し込むとチューブが破裂する危険があります。
40度前後の微温湯をシリンジに入れ、優しく引いたり押したり(ポンピング)を繰り返して少しずつ溶かしてください。どうしても開通しない場合は医師に報告し、チューブの交換が必要になります。 - 酸化マグネシウムなどの便秘薬は、なぜ一緒に注入してはいけないのですか?
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酸化マグネシウムは、REF-P1の成分(ペクチン)や栄養剤の成分(カルシウム)と相互作用を起こし、胃内でのゲル化(半固形化)を阻害したり、薬自体の吸収率を低下させたりする恐れがあるためです。
食間など、時間をずらして単独で注入する指示が出ることが多いです。 - 液体のままの栄養剤と比べて、REF-P1を使うと注入に時間がかかって大変です。一気に押し込んでもいいですか?
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絶対に避けてください。
半固形化しているとはいえ、短時間で一気に胃へ押し込むと、胃袋が急激に膨張して嘔吐や逆流の原因になります。患者さんの状態を見ながら、ゆっくりと適切な速度で注入してください。
まとめ|REF-P1の正しい使い方で安全な経管栄養を!
REF-P1を使った経管栄養のポイントをまとめます。
- 目的:胃の中で栄養剤を半固形化させ、逆流・漏れ・下痢を防ぐため。
- 順番:内服薬 → REF-P1 → 栄養剤 の順が絶対ルール!
- 投与時間:REF-P1が胃から排出される前に、必ず「60分以内(小腸は30分以内)」に栄養剤の注入を完了させる。
- 重要ポイント:チューブ内で化学反応が起きて固まらないよう、各工程の間に必ず「微温湯フラッシュ」を挟むこと。
「ペクチンとカルシウムが反応して固まる」「時間をかけすぎると胃から排出されてしまう」という医学的な根拠さえ理解していれば、順番や速度を間違えたり、チューブを詰まらせたりするリスクは激減します。
この記事で学んだ正しい手順とエビデンスを活かし、明日からの経管栄養ケアに自信を持って取り組んでくださいね!


