訪問診療は月何回来る?「基本月2回」の理由と急変時の守り方

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「親の通院が難しくなってきたから、そろそろ訪問診療を考えたい。」
そう思って調べ始めたものの、実際に利用するイメージが湧かずに悩んでいませんか?

特に皆さんが気にされるのが、「先生は月に何回来てくれるの?」という点です。

よくあるご家族の不安

  • 「月2回だけって聞いて不安になった。急に具合が悪くなったらどうするの?」
  • 「もっと頻繁に来てもらうことはできないの?」
  • 「医師が来ない週はどう過ごせばいい?」

私は現在、在宅医療クリニックの事務長として、多くの患者様の診療スケジュールを管理しています。
また、過去には看護師として現場でケアに当たってきました。

その経験から結論を申し上げますと、訪問診療の基本は「月2回(隔週)」です。
しかし、これはあくまで「病状が安定している時」の話。状態が悪くなれば週1回、毎日と頻度は柔軟に変わります。

この記事では、パンフレットには書かれていない「医師の訪問頻度のリアル」と、「医師が来ない時間の守り方」について、現場の裏側を交えて包み隠さず解説します。

目次

訪問診療は「月に何回」来る?基本は月2回です

まず、もっとも一般的なケースから解説します。
訪問診療を契約すると、多くのクリニックでは「月2回(隔週)」の訪問スケジュールが提案されます。

なぜ「月2回」がスタンダードなのか

「月2回で本当に足りるの?」と感じるかもしれませんが、これには明確な理由があります。

  • 医学的な安全管理のライン
    慢性疾患(高血圧や糖尿病、認知症など)の状態が安定している場合、2週間に1回診察を行えば、大きな変化を見逃さずに薬の調整ができるという医学的な判断基準があります。
  • 国の制度(診療報酬)の要件
    厚生労働省が定める「在宅時医学総合管理料(在医総管)」などの点数は、原則として「月2回以上の訪問診療」を行っている場合に算定できる仕組みになっています。
    ※出典:厚生労働省「在宅医療の現状について」

現場の感覚としても、月1回だと間が空きすぎてしまい、ご家族の介護疲れや小さな体調変化(脱水気味、褥瘡の兆候など)に気づくのが遅れるリスクがあります。
逆に週1回だと、安定している方にとっては「毎週医師が来る」ことが生活の負担になることもあります。

そのため、「つかず離れず、変化に気づける距離感」として月2回が基本となっているのです。

⚠️ 月1回や単発の往診は「訪問診療」ではない?
「具合が悪い時だけ来てほしい」という依頼は「往診」と呼ばれ、定期的な健康管理を行う「訪問診療」とは区別されます。
病状が極めて安定しており、医師が「月1回でも医学管理が可能」と判断した例外的なケースを除き、基本は月2回からのスタートとなります。

「具合が悪い時だけ来てほしい」という方は、訪問診療と往診の決定的な違いを確認しておきましょう。

【状態別】医師の訪問頻度と診療内容のリアル

「基本は月2回」とお伝えしましたが、在宅医療の最大の特徴はオーダーメイド性です。
患者様の状態ステージに合わせて、私たちの動き方はガラリと変わります。

1. 【安定期】月2回(隔週訪問)

認知症や老衰、慢性心不全などで、状態が落ち着いている時期です。

項目内容のリアル
頻度第1・第3火曜日の14時など、曜日固定が多い。
診療内容・聴診、血圧測定、酸素飽和度の確認
・床ずれのチェック
・処方箋の発行(2週間分)
・ご家族との雑談(これが実は一番重要です)
滞在時間10分〜15分程度

この時期は、医療処置よりも「変わったことはないか?」の定点観測がメインです。
医師が来ることで、介護しているご家族が「この2週間も無事に過ごせた」と安心する節目にもなります。

2. 【不安定期・退院直後】週1回〜(頻回訪問)

退院直後で自宅の環境に慣れていない場合や、熱が続いている、痛みが強いといった場合です。

特定の病気や状態(末期の悪性腫瘍や難病、急性増悪時など)の方は、「頻回訪問」として週1回以上の訪問が必要になるケースがあります。

🩺訪問診療の現場から:

例えば「肺炎を起こして点滴が必要」となった場合、1週間〜2週間の期間限定で、医師や看護師が毎日交代で訪問することもあります。状態が落ち着けば、また月2回のペースに戻します。

3. 【お看取り・終末期】週1回〜毎日

人生の最期をご自宅で迎える時期です。この時期、スケジュールという概念はなくなります。

  • 痛みのコントロールのため、必要に応じて毎日訪問。
  • 朝に訪問した後、夕方に容態が変われば再度訪問(往診)。
  • ご家族の不安を取り除くための対話。

【事例】こんな人は「月何回」利用している?

「月2回が基本」と言われても、自分(親)のケースに当てはまるか不安ですよね。
よくある疾患別のスケジュール実例を挙げていきます。

ケースA:認知症(要介護3)の80代女性

頻度月2回(隔週)
主な処置血圧測定、便秘薬の調整、ご家族への介護アドバイス

体調は安定していますが、服薬管理が難しいため、隔週で医師が残薬や生活状況を確認します。
「先生が来る日はお風呂に入って待っている」などと、生活の張り合いになっているケースです。

ケースB:末期がん(肺がん)の70代男性

頻度週1回 〜 毎日
主な処置痛みの緩和(麻薬の調整)、酸素吸入の管理、点滴

痛みのコントロールが最優先です。
最初は週1回でしたが、痛みが強くなってきた段階で週2回、最期の数日間は毎日訪問し、穏やかな時間を支えました。

ケースC:パーキンソン病(要介護4)の70代男性

頻度月2回 + 訪問看護(週2回)
主な処置神経内科薬の微調整、誤嚥性肺炎の予防チェック

特定疾患(難病)の方は、医師だけでなく、リハビリや看護師の手厚い介入が必要です。
医師は月2回で全体を統括し、日々のケアは訪問看護師が担う「チーム戦」の典型例です。

🍱 「食事の準備」で燃え尽きないために

「栄養バランス」や「誤嚥(飲み込みの失敗)」が心配な方の場合、介護しながらの家事。
ご家族の負担になるのが「毎日の食事の準備」です。

「親のために柔らかく煮込んだり、刻んだりするのが大変…」
そんな悩みをお持ちなら、介護食専門の宅配サービスを活用してください。

レンジで温めるだけで、管理栄養士が計算した「柔らかくて栄養満点の食事」が用意できます。
訪問診療の先生も、「家族が笑顔でいること」が一番の薬だと言います。無理せず便利なサービスに頼りましょう。

医療面からはメディカルフードサービスをおすすめしていますが、ご本人様の状態・各社の特徴を確認して決めてもらうのがベストだと思います。

医師が来ない週の「空白」はどう埋める?

月2回の訪問診療の場合、医師が来ない週(空白の週)が必ず発生します。
ここが最も不安なポイントかと思いますが、在宅医療は医師単独で行うものではありません。

「訪問看護師」が医師の目と耳になる

多くの場合、訪問診療とセットで「訪問看護」を利用します。
医師が来ない週に看護師が訪問し、バイタルチェックや入浴介助を行います。

理想的な連携イメージ

第1週:医師の訪問(診察・処方)

第2週:看護師の訪問(状態確認・医師へ報告)

第3週:医師の訪問(報告を受けて診察)

第4週:看護師の訪問(ケアの継続)

看護師は「先生に言うほどでもないけど…」というご家族の悩みを拾い上げ、私たちクリニックに報告してくれます。
この「多職種連携」があるからこそ、医師の訪問が月2回でも安全が守られるのです。

医師と看護師、役割はどう違う?訪問診療と訪問看護の併用メリットや費用の違いはこちらで詳しく解説しています。

もしもの急変時は「往診」で24時間対応

定期的な訪問以外に、突発的な体調不良(転倒、発熱、呼吸苦など)が起きた場合は、24時間365日対応の連絡先へ電話ができます。
状況に応じて医師が臨時で駆けつける、これを「往診」と呼びます。

「月2回しか来ない」のではなく、「基本は月2回チェックしつつ、何かあればいつでも呼べる権利を持っている」と考えていただくと、イメージしやすいかもしれません。

急変以外は文明の利器を使う

とはいえ、医師も看護師も、24時間365日ずっと家の中にいるわけではありません。
ご家族が仕事に行っている間や、深夜の就寝中など「誰の目もない時間」はどうしても発生します。

「離れて暮らす親が、一人の時間に倒れていたらどうしよう…」
そんな不安がある場合は、医療サービスと合わせて「見守りセンサー」の導入をおすすめします。

  • 会話ができるカメラタイプ
  • プライバシーに配慮した電球・センサータイプ

工事不要で「置くだけ」で使えるものも増えています。
医師が来ない、家族も付いていられない時間を埋めるのは、こうした文明の利器です。

「月2回」が始まるまでの流れ(契約から初回まで)

「訪問診療をお願いしたい」と思ってから、実際に定期訪問が始まるまでには、通常1〜2週間の準備期間が必要です。
私が担当するクリニックでの一般的なフローをご紹介します。

STEP
問い合わせ・相談

まずはケアマネジャー、または病院の相談員(MSW)を通じてクリニックに連絡が入ります。
ご家族から直接お電話いただくことも可能です。

STEP
契約+事前面談(必要時)

相談員がご自宅(または入院先)へ伺い、今の病状や「家でどう過ごしたいか」を確認します。
ここで「月2回でいくか、週1回にするか」の初期プランを話し合います。

STEP
初回訪問診療

医師、看護師のチームで訪問します。診察を行い、お薬を処方して主治医としての担当がスタートします。

急ぎの場合も相談を
「明日退院することになった!」といった急なケースでも、地域のクリニックは柔軟に対応しようと努力します。
まずは正直に事情を話してみてください。

訪問回数が増えると「費用」はどうなる?

回数が増えれば費用も変わります。ここでは、後期高齢者医療制度(1割負担)の方の目安をお伝えします。
※金額は目安です。検査内容、お薬代、クリニックの体制(機能強化型かどうか)によって変動します。

基本の費用(月2回訪問)

月額 6,000円 〜 8,000円 程度
(在宅時医学総合管理料 + 訪問診療料 × 2回)

頻回訪問の場合(週1回・月4回など)

月額 12,000円 〜 15,000円 程度
(訪問回数分の診療料が加算されます)

ただし、医療費が高額になった場合は「高額療養費制度」が適用されます。
一般的な75歳以上(一般所得区分)の方であれば、月額の上限は18,000円(※2024年時点の外来上限)となるケースが多く、際限なく費用が増えるわけではありません。

「思ったより請求額が高い…」と驚かないために。費用が高くなる仕組みや「交通費」の落とし穴を知っておくと安心です。

「やっぱり合わない…」とならないために

訪問診療は、医師が自宅というプライベートな空間に入ってくるサービスです。
技術以上に「相性」が重要になります。

もし「先生が高圧的で話しにくい」「月2回も来なくていい気がする」と感じたら、我慢せずに以下の行動を取ってください。

  • まずはケアマネジャーに相談する
    直接クリニックに言いにくい不満は、ケアマネジャーを通じて伝えてもらうのがスムーズです。
  • 「セカンドオピニオン」も可能
    訪問診療も変更可能です。「他の先生の話も聞いてみたい」と相談することは、決して失礼ではありません。

長く付き合う関係だからこそ、最初の数ヶ月で「話しやすさ」や「緊急時の対応スピード」をしっかり見極めることが大切です。

そもそも「合わない」事態を避けるために。失敗しないクリニック選びの7つの基準と、よくある後悔ポイントも参考にしてください。

訪問診療の訪問頻度に関するよくある質問

家族が仕事で平日いないのですが、土日に来てもらえますか?

原則は平日の診療時間内です。
定期の訪問診療は、平日(日中)に行うのが基本です。どうしても家族の同席が必要で、かつ平日の調整が難しい場合は、土日対応が可能なクリニックをエリア内で探す必要がありますが、数は多くありません。

施設に入居している場合の回数は?

施設でも基本は月2回です。
有料老人ホームやグループホームでも同様です。施設看護師と連携が取れるため、医師の滞在時間は自宅より短くなる傾向があります。

回数を増やしてほしいと要望してもいいですか?

もちろんです。まずは相談を。
「不安だから毎週来てほしい」という要望はよくあります。ただし、医療保険のルール上、医学的な必要性が認められない(状態が安定している)場合は、自費診療となる可能性があるため、医師や相談員とよく話し合うことが大切です。

まとめ:回数よりも「いつでも繋がる安心感」を

訪問診療の回数について解説してきましたが、重要なポイントを振り返ります。

  • 基本は月2回(隔週)の訪問。
  • 状態が悪くなれば、週1回〜毎日と柔軟に対応してくれる。
  • 医師が来ない週は、訪問看護師がカバーする連携体制がある。
  • 緊急時は24時間365日、往診の対応が可能。

「月に2回しか顔を見ない医者」ではなく、「24時間365日、生活の裏側で待機してくれている医療チーム」と捉えてみてください。

もし、具体的な頻度やスケジュールについて不安があれば、契約前の面談で「もし急変したら、どんな体制で来てくれますか?」と率直に聞いてみることをお勧めします。

良いクリニックなら、具体的な体制を丁寧に説明してくれるはずです。

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kawauchi
看護師/訪問診療クリニック事務長/計画相談員
私は、看護師として重症心身障害病棟・救命救急HCUに従事した後、有料老人ホームの管理者・看護部長・福祉事業部統括として、入居者の生活と医療連携の現場に携わってきました。

現在は、訪問診療クリニックの事務長として在宅医療の運営に関わると同時に、計画相談員・医療福祉コンサルタントとして、東海エリアを中心に施設紹介・身元保証・医療介護連携の支援を行っています。

病院・施設・在宅という立場の異なる現場をすべて経験してきたからこそわかる、制度論だけではない「現場のリアル」や「家族が直面する苦悩」を踏まえた発信を大切にしています。

このブログでは、現場経験に基づく実践的な情報を軸に、後悔しない選択のための情報を発信しています。
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