施設から在宅へ戻る時の「ケアマネ不在」トラブル!退居前に絶対確認すべき3つの手順【実録】

当ページのリンクには広告が含まれています。

「住み慣れた我が家で最期まで過ごしたい」

その願いを叶えるために施設を退居し、いよいよ自宅での生活が始まる……。
そんな希望に満ちたはずの日に、「今日から使える介護サービスが何もない」という絶望的な状況に陥るケースがあることをご存知でしょうか?

私はこれまで看護師として、そして現在は訪問診療クリニックの事務長として数多くの「施設から在宅への移行」に立ち会ってきました。

その中で、もっとも危惧しているのが施設ケアマネから居宅ケアマネへの引き継ぎトラブル(ケアマネの空白問題)です。

今回は、私が実際に遭遇した、グループホーム退居当日に発覚した「ケアマネ不在」の衝撃的な事例をもとに、ご家族が絶対に後悔しないための「在宅復帰の手順」を解説します。

✅この記事でわかること

  • 施設から在宅へ戻る際に起きる「ケアマネ消失」のリアルなリスク
  • 「小規模多機能」があれば大丈夫、という思い込みの危険性
  • 無責任な施設ケアマネに当たってしまった時の対処法
  • 在宅介護をスムーズに始めるための「居宅ケアマネ」探しの手順
目次

【実例】「今日から自宅」なのにケアマネがいない?現場で起きた悲劇

ある日、私が勤めるクリニックの訪問診療で、グループホーム(以下、GH)を退居して自宅に戻る患者さんの初診に伺ったときの話です。

当初の計画では、ご本人の強い希望でGHを退居し、自宅を生活の拠点にしつつ、GHに併設されていた「小規模多機能型居宅介護(以下、小多機)」に通いながら過ごす予定でした。

小規模多機能(小多機)とは?
「通い」「泊まり」「訪問」を一つの事業所で柔軟に組み合わせて利用できるサービス。
専属のケアマネジャーがつくため、契約すれば介護プランも作成してもらえます。

「もうあそこには行きたくない」本人の心境変化

退居当日にご自宅を訪問すると、ご本人の口から意外な言葉が飛び出しました。

もう、あの施設(小多機)には行きたくない。最期までずっと、この家だけで過ごしたいんだ。

施設生活でのストレスや、「家に帰れた」という安堵感から来る心境の変化だったのかもしれません。
ご本人の意思は尊重されるべきですが、ここで制度上の大きな落とし穴が口を開けました。

施設ケアマネの衝撃的な回答

私は急いで、契約予定だった併設の小多機ケアマネジャーに連絡を入れました。

しかし、返ってきたのは耳を疑う答えでした。

施設ケアマネ

あ、ご本人からそう聞いています。
ご本人が拒否されているなら、うちのサービス(小多機)は契約しません。今日で終わりです。

私は慌てて尋ねました。

看護師

では、明日からのヘルパーさんやデイサービス、自宅での生活を支えるプランを立てる居宅ケアマネジャー(在宅のケアマネ)への引き継ぎはどうなっていますか?

返ってきたのは、冷ややかな反応でした。

施設ケアマネ

……居宅ケアマネ? なんのことか分かりません。
うちは契約しないので、もう関係ありませんから。
あとはご家族でどうぞ。

この瞬間、この患者さんは介護保険サービスを一切受けられない「無保険状態(プラン未作成状態)」で、在宅生活初日を迎えてしまったのです。

「自分の事業所を使わないなら、その後の生活なんて知らない」。
残念ながら、このような知識不足や無責任な対応をするケアマネジャーが一部に実在します。
被害を受けるのは、準備不足だった患者さんとご家族です。

「あんな無責任なケアマネに当たりたくない…」と不安な方へ。
在宅生活の質はケアマネで決まります。後悔しないための「良いケアマネジャー」を見極める3つの基準と、万が一相性が合わない時に角を立てず交代してもらう手順を必ず確認しておいてください。

なぜ施設から自宅へ戻る時に「ケアマネ不在」が起きるのか

施設に入所する際は、施設の相談員やケアマネジャーが手厚く案内してくれます。

しかし、「施設から出る」ときは、誰も守ってくれないケースが多いのが現実です。
その原因は、ケアマネジャーの「管轄の違い」にあります。

スクロールできます
種類役割と管轄自宅に戻る際の対応
施設ケアマネ
(特養・老健・GH等)
施設内での生活プランを作成退居した時点で契約終了。
自宅のことは管轄外。
小多機ケアマネ小多機サービス内のプランを作成小多機を使わない(辞める)なら、即座に契約終了。
居宅ケアマネ
(居宅介護支援事業所)
自宅での生活全般を設計自宅に戻る前に、
新たに契約・計画が必要。

1. ケアマネジャーの「守備範囲」の誤解

多くの方が誤解していますが、グループホームや有料老人ホームのケアマネジャーは、あくまで「施設の中」の専門家です。

施設ケアマネは、居宅介護支援(自宅のケアマネジメント)の制度や地域の社会資源(ヘルパー事業所など)を詳しく知らないことがあります。

2. 介護プランがなければ「全額自己負担」の恐怖

介護保険サービス(訪問介護やデイサービス、福祉用具レンタルなど)は、原則としてケアマネジャーが作成する「居宅サービス計画書(ケアプラン)」に基づいて提供されます。

もし、ケアマネがいない状態でヘルパーを呼んだ場合、その費用は介護保険が適用されず、10割負担(全額自己負担)になるリスクがあります。

これは経済的に大きな打撃です。

「10割負担」という最悪の事態を防ぐために、あらかじめ制度の仕組みを知っておくことが身を守る武器になります。
知らずに損をしないよう、介護保険の自己負担目安と、支払いを抑えるための軽減制度を今のうちにチェックしておきましょう。

後悔しないために。施設から在宅へ戻る際の「3つの鉄則」

「家に帰る」と決めたなら、施設側の「なんとかなりますよ」という言葉を鵜呑みにせず、家族が主体となって動かなければなりません。

現役事務長として推奨する、確実なアクションプランは以下の通りです。

STEP
退居の1ヶ月以上前に「居宅ケアマネ」を決める

施設ケアマネに「自宅に戻った後もケアマネをやってほしい」と頼んでも、制度上(資格や指定基準の違いで)不可能な場合がほとんどです。
必ず退居日が決まる前に、地域の「地域包括支援センター」に相談し、自宅エリアを担当できる居宅介護支援事業所を紹介してもらい、契約を済ませておきましょう。

STEP
「退居時共同カンファレンス」を要求する

これが最も重要です。退居前に以下のメンバーを一堂に集める会議(カンファレンス)を施設側に開催してもらってください。

  • 施設ケアマネ(現在の担当)
  • 居宅ケアマネ(新しい担当)
  • 訪問診療医・訪問看護師
  • 患者本人・家族

ここで情報を引き継がないと、自宅に戻った初日から「薬が足りない」「おむつの種類が違う」「緊急連絡先がわからない」といった混乱が起きます。

STEP
「小規模多機能」はあくまで選択肢の一つと考える

今回の事例のように、ご本人が「施設っぽい場所」を拒絶する可能性は常にあります。
小多機一本に絞らず、居宅ケアマネを介して、訪問介護やデイサービスなど柔軟に組み替えられる体制(プランB)を作っておくのが安全です。

「本当に家で最期まで診きれるだろうか…」と迷いがあるなら、一度冷静に比較することも大切です。在宅医療と施設入居の「費用・家族負担・医療体制」のリアルな違いを把握して、家族全員が納得できる道を選んでください。

在宅生活の現実は「理想」だけでは回らない

「住み慣れた家」はご本人にとって素晴らしい場所ですが、介護をするご家族にとっては、24時間365日の責任がのしかかる「戦場」にもなり得ます。

施設から戻るということは、以下の壁にご家族だけで立ち向かう可能性があるということです。

在宅介護で直面する「3つの壁」

  • 夜間の対応:夜中の排泄介助や徘徊。ご家族はいつ眠るのでしょうか?
  • 緊急時の対応:急な発熱、転倒。その時、誰がすぐに駆けつけて判断しますか?
  • 介護者の休息(レスパイト):あなたが倒れたら、共倒れです。

これらの壁を乗り越えるためには、優秀なケアマネジャーによる「隙のないケアプラン」と、医療・介護チームの連携が不可欠です。

決して家族の犠牲だけで成り立たせてはいけません。

在宅介護で最も心が折れやすい「食事作り」の負担は、プロに頼って賢く減らしましょう。
看護師が厳選した、高齢者が美味しく完食できる宅配弁当や、噛む力が弱い親でも安心な誤嚥を防ぐムース食・やわらか食を活用すれば、あなたの休息時間を劇的に増やせます。

よくある質問

施設を退居したいのですが、誰に相談すればいいですか?

まずは施設のケアマネジャーや相談員に意向を伝えますが、同時に「お住まいの地域の地域包括支援センター」にも相談してください。施設側は自宅でのサービス調整ができない場合が多いため、包括支援センターを通じて「居宅ケアマネジャー」を紹介してもらうのが最も安全です。

施設ケアマネに「そのまま自宅のケアマネもやって」と頼めますか?

基本的にはできません。施設のケアマネジャーと、自宅を担当する居宅ケアマネジャーは、所属する事業所や指定基準が異なります。稀に併設事業所で兼務している場合もありますが、原則として「新しいケアマネとの契約」が必要になると考えてください。

退居した日からすぐに介護サービスを使いたい場合は?

退居日が決まる前に「居宅ケアマネジャー」を選定し、暫定的なケアプラン(サービス計画書)を作成してもらう必要があります。退居前に「担当者会議(カンファレンス)」を開き、退居当日からヘルパーや訪問看護が入れるよう調整しましょう。

まとめ|空白期間を作らない「賢い在宅復帰」を

施設から自宅への移行は、介護生活における「再スタート」です。

しかし、そこには「ケアマネジャーの引き継ぎ」という巨大な落とし穴が待っています。

もし、今の施設側から「自宅に戻った後のことは分からない」と言われたり、具体的な引き継ぎ案が出てこなかったりする場合は、すぐに地域の地域包括支援センターや、信頼できる訪問診療クリニックに相談してください。

私たちのクリニックでも、今回のような事例を受けて、退居前から強力に介入し、ケアマネジャーの選定からお手伝いする体制を整えています。

大切なのは、「空白の時間」を作らないことです。

さて、無事にケアマネが決まり、在宅生活が始まったとします。
次に待ち受けているのは、「想像以上に過酷な日常」かもしれません。

多くのご家族が悲鳴をあげる「在宅介護で本当に大変なこと」と、その具体的な解決策について、次の記事で包み隠さずお話しします。
◆「介護保険だけ」じゃない!在宅介護を劇的にラクにする「自費サービス」神5選と費用対効果
◆在宅介護の限界サイン10選|施設入所へ切り替える判断基準を専門家が解説

【出典元】
厚生労働省:介護保険制度の概要
厚生労働省:小規模多機能型居宅介護について

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
kawauchi
看護師/訪問診療クリニック事務長/計画相談員
私は、看護師として重症心身障害病棟・救命救急HCUに従事した後、有料老人ホームの管理者・看護部長・福祉事業部統括として、入居者の生活と医療連携の現場に携わってきました。

現在は、訪問診療クリニックの事務長として在宅医療の運営に関わると同時に、計画相談員・医療福祉コンサルタントとして、東海エリアを中心に施設紹介・身元保証・医療介護連携の支援を行っています。

病院・施設・在宅という立場の異なる現場をすべて経験してきたからこそわかる、制度論だけではない「現場のリアル」や「家族が直面する苦悩」を踏まえた発信を大切にしています。

このブログでは、現場経験に基づく実践的な情報を軸に、後悔しない選択のための情報を発信しています。
目次