「HbA1cが高めだから、お寿司なんて夢のまた夢……」
「回転寿司に誘われたけど、私だけお茶を飲んで過ごすべき?」
診察室でもよく相談を受けますが、結論から言います。
糖尿病の方でも、工夫次第でお寿司は楽しめます。
ただし、何も考えずにパクパク食べるのは自殺行為です。
お寿司はヘルシーな「魚料理」であると同時に、酢飯という「糖質の塊」でもあるからです。
ネタ(刺身)は良質なタンパク質ですが、その下にあるシャリ(酢飯)には、お米だけでなく「砂糖」もたっぷり使われています。
空腹状態でいきなりお寿司を食べると、食後の血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」を引き起こし、血管を傷つけて合併症のリスクを高めてしまいます。
しかし、「食べる順番」と「組み合わせ」という戦略さえあれば、お寿司は決して敵ではありません。
美味しく楽しく食べるために、インスリンを無駄遣いせずに回転寿司を楽しむための「5つの鉄則」を解説します。
鉄則① いきなり握りを食べない。「ベジファースト」が命
席に着いてすぐに、タッチパネルで好きな握り寿司を注文していませんか?
それは、空っぽの胃袋に糖質を直撃させる行為であり、血糖コントロールにおいて最も避けるべきことです。
回転寿司では、以下の手順で注文してください。これが「天然のインスリン」のような働きをし、食後高血糖(グルコーススパイク)を抑制します。
まずは食物繊維を胃に敷き詰めます。
特に「枝豆」は優秀です。タンパク質と食物繊維が豊富で、糖質の吸収を物理的にブロックしてくれます。
サラダを選ぶ場合は、ポテトサラダ(糖質)やクルトンが入っていないものを選び、ドレッシングはかけすぎないようにしましょう。
温かいものを摂取して代謝を促し、満腹中枢を刺激します。
あおさ汁やわかめ汁に含まれる水溶性食物繊維は、ゲル状になって糖を包み込み、吸収を緩やかにします。
茶碗蒸しも高タンパク・低糖質でおすすめですが、銀杏や栗が入っている場合は糖質に注意です。
STEP1〜2で5分〜10分ほど時間をかけるのが医学的なポイントです。
インスリンの初期分泌が遅れがちな糖尿病の方でも、このタイムラグを作ることで血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。
鉄則② インスリン抵抗性に挑む「青魚」を選ぶ
糖尿病の方は、インスリンの効きが悪くなっている(インスリン抵抗性)ことが多いです。
そこで積極的に選びたいのが、イワシ、アジ、サバなどの「青魚」です。
推奨:青魚(EPA・DHA)
青魚に豊富な不飽和脂肪酸(EPA・DHA)には、インスリンの働きを改善したり、中性脂肪を下げたり、血液をサラサラにする効果が期待できます。
逆に、脂質が多すぎる「大トロ」はカロリー過多になりやすく、インスリン抵抗性を悪化させる可能性があるため、1皿程度に留めるのが無難です。
もし血糖値だけでなく、健康診断でコレステロールや中性脂肪も指摘されている場合は、ネタ選びの基準が少し変わります。
あわせて脂質異常症の方のための回転寿司ガイドも読んでおくと、より安心して外食を楽しめます。

鉄則③ 「5皿(10貫)」を上限にする【糖質量計算】
これが最も現実的な制限となりますが、数字で理解すると納得しやすいはずです。
文部科学省のデータに基づくと、お寿司のシャリ1貫は約15g〜20gです。
- シャリ1貫の糖質:約7〜8g
- 10貫(5皿)の糖質:約70〜80g
これは、お茶碗大盛り1杯分(約200g)のご飯を食べたのと同じ糖質量になります。
糖尿病の食事療法において、1食あたりの適正糖質量(主食)は人によりますが、一般的に50g〜70g程度に抑えることが推奨されるケースが多いです。
したがって、「5皿(10貫)」が限界ラインです。
最近の回転寿司チェーン(くら寿司など)にある「シャリハーフ(シャリ半分)」を活用すれば、単純計算で倍の種類のネタを楽しめるので、満足度を下げずに糖質カットが可能です。
鉄則④ 隠れ糖質!「甘いタレ」と「ガリ」はNG
お寿司屋さんには、シャリ以外にも注意すべき「隠れ糖質」が潜んでいます。
| 要注意メニュー | 理由と対策 |
|---|---|
| 玉子焼き | 砂糖がたっぷり使われています。 「出汁巻き」なら比較的マシですが、甘い厚焼き玉子はスイーツと考えましょう。 |
| 甘ダレ(ツメ) | 穴子やウナギにかかっているタレは、砂糖・みりん・醤油を煮詰めた濃縮糖液です。 「塩」や「わさび」で食べるのが通の食べ方であり、ヘルシーです。 |
| いなり寿司 | 油揚げを砂糖醤油で煮ているため、「糖質×脂質」の最強爆弾です。 糖尿病の方は原則避けるべきメニューNo.1です。 |
| ガリ(生姜) | 口直しに良いですが、甘酢漬けには大量の砂糖が使われています。 食べ過ぎには注意が必要です。 |
「外食以外は気をつけているのに、なぜか検査数値が良くならない…」
そんな悩みをお持ちの方は、HbA1cが下がらない時の3つの見直しポイントも参考にしてみてください。努力の方向性が少しズレているだけかもしれません。

鉄則⑤ 食べすぎた翌日は「低糖質弁当」で調整する
もし、ついつい食べすぎてしまっても、自分を責めてストレスを溜めるのは逆効果です(コルチゾールというストレスホルモンは血糖値を上げます)。
大切なのは「翌日〜2日以内の食事で帳尻を合わせること」です。
お寿司で糖質を摂りすぎた翌日は、主食(ご飯)を半分以下にし、野菜やキノコ類、脂質の少ない肉・魚を中心にした食事にする必要があります。
しかし、自炊で「低糖質かつ満足感のあるおかず」を作り、さらに塩分やカロリー計算まで行うのは、プロでも面倒な作業です。
そこで活躍するのが、糖尿病対応の「制限食(宅配弁当)」です。
管理栄養士が計算したお弁当なら、糖質が厳密にコントロール(例:1食糖質15g以下など)されているため、複雑な計算なしで「調整日」を作れます。
以下の記事で、HbA1cや血糖値が気になる方におすすめの「美味しくて低糖質な宅配食」をランキング形式で紹介しています。
「外食を楽しんだ後のレスキュー食」として冷凍庫にストックしておけば、糖尿病治療と食事の楽しみを両立できます。

まとめ:我慢ではなく「戦略」でお寿司を楽しもう
- まずは枝豆・サラダ・汁物で「ベジファースト」を徹底する。
- 血液サラサラ効果のある「青魚」を中心に選ぶ。
- 上限は5皿。シャリハーフを活用して種類を楽しむ。
- いなり寿司、甘い玉子、ガリの食べ過ぎは避ける。
- 翌日は「低糖質弁当」で血糖値をリセットする。
糖尿病の治療は「一生続くマラソン」です。
たまには息抜きも必要です。正しい知識という武器を持って、賢く回転寿司を楽しんでください。

