「これ、近所の人にいただいたんだけどね。私は食べられないから、アンタ持って帰っておくれよ」
身元保証の定期訪問で伺った際、A様が寂しそうに差し出したのは、地元で有名な和菓子屋さんの「大きな栗まんじゅう」でした。
慢性腎臓病(CKD)ステージG4。
保存期治療中のA様にとって、あんこ(小豆)はたんぱく質とカリウムが多く、栗はカリウムの塊。
そして何より、和菓子はリンや塩分も含まれる「制限の地雷原」のような存在です。
「病気になってから、甘いものを心から楽しんだことなんて一度もないよ」肩を落とすA様の本音
甘いものを断つことは、単に糖分を控えることではありません。
お茶の時間という「心のゆとり」を失うことでもあります。
私は看護師として、A様に伝えました。
「Aさん、そのまんじゅうは我慢しましょう。でも、代わりに私が持ってきた“特製のおやつ”を一緒に食べませんか?」
この記事では、腎臓病のA様と共有した「数値を汚さないお菓子の選び方」と、制限の中でも笑顔を守るための工夫についてお話しします。
腎臓病(保存期)にお菓子は「毒」ではなく「薬」になる?
意外に思われるかもしれませんが、保存期の食事療法において、お菓子(間食)は非常に重要な役割を持っています。
「エネルギー不足」が一番怖い
たんぱく質を制限すると、どうしても総エネルギー(カロリー)が不足しがちです。
エネルギーが足りなくなると、体は自分の筋肉を壊してエネルギーに変えようとします。
その結果、腎臓のゴミである「尿素窒素」が増え、かえって腎機能を悪化させてしまうのです(異化作用)。
つまり、「たんぱく質を含まず、エネルギーが高いお菓子」は、腎臓を守るための強力な味方になるのです。
実は、多くの腎臓病患者さんが「制限のしすぎ」で筋肉を失い、透析を早めてしまっている事実をご存知でしょうか?
「痩せてきた」は数値悪化の危険信号です。エネルギーを確保し、透析を回避するための食事術を解説しました。
【実録】私がA様に差し入れした「数値に響かない」3つのお菓子
私が当日、A様の自宅に持参したのは、一般的なスーパーでも買えるものから、専門の低たんぱく食品まで、厳選した3種類です。
1. 「でんぷん」で作られたおせんべいやクッキー
普通のおせんべいは米で作られていますが、腎臓病専用の「でんぷん食品」は、たんぱく質をほぼゼロに抑えつつ、油分でしっかりエネルギーを補給できます。



「軽い食感で、いくらでも食べられちゃうね。これなら罪悪感がないよ」
甘さ控えめなクッキーですが、かなり気に入ってもらえました。
2. 「純粋なゼリー」や「水ようかん」
フルーツそのものはカリウムが高いですが、果汁を使ったゼリーや、たんぱく質をカットした「低たんぱく水ようかん」なら安心です。
✅特に夏場や食欲がない時のエネルギー補給に最適です。
3. 市販品なら「マシュマロ」や「飴」
実は、マシュマロは卵白(たんぱく質)を使っていますが、1個あたりは微量。
脂質が少なく、どうしても甘いものが欲しい時の強い味方です。
A様には「1日2個までですよ」と約束していただきました。
【要注意】保存期の方が避けるべきお菓子
チョコ、ナッツ、牛乳をたっぷり使った洋菓子、小豆を使った和菓子。
これらは「たんぱく質・カリウム・リン」のトリプルパンチになります。
「何が食べられるか」を一人で調べる限界
A様は以前、自分でネットを使い「腎臓病 お菓子」と検索したことがあったそうです。



「でもね、サイトによって書いてあることが違うし、何より『成分表』の細かい数字なんて、老眼で見えやしないんだよ」
そう言って笑うA様の言葉には、独り身で病気と向き合う方の切実な苦労が詰まっていました。
成分表の「カリウム mg」や「リン mg」の数字を追いかけ、1日の合計を計算する……。
これを毎日続けるのは、専門家でも骨が折れる作業です。
プロが選ぶ「間違いないおやつ」をストックしておく
私はA様に、一つの方法を提案しました。
「Aさん、毎回計算して悩むのはやめましょう。最初から『これならOK』と計算されているおやつを、箱でストックしておけばいいんです」
最近では、腎臓病専門のメーカーが作る、宅配食や驚くほど美味しいクッキーやゼリーの詰め合わせがあります。
それらを常備しておくことで、「食べてもいいのかな…」という不安から解放され、心置きなくお茶の時間を楽しめるようになります。
「具体的にどのお菓子なら食べていいの?」と迷う方へ。
コンビニや市販で手軽に買える「低たんぱく・高エネルギー」なおすすめお菓子を厳選しました。
また、夕食の工夫ひとつで「毎日どら焼きが食べられる」裏ワザも公開しています。
計算不要で数値も改善する、腎臓病食ランキングを活用して、心と体のゆとりを取り戻しませんか?
まとめ:賢く選べば、おやつは「腎臓の味方」になる
腎臓病だからといって、甘いものを一生我慢する必要はありません。
正しい知識と、ちょっとした工夫があれば、お菓子はエネルギー不足を補い、心を豊かにする「良薬」になります。
A様の笑顔が、この記事を読んでいるあなたや、あなたのご家族にも届くことを願っています。














