「病院なら安心だけど、家で先生がいない時間はどうすればいいの?」
「訪問診療って、月2回だけで本当に足りるものなの?」
病院の相談員から在宅復帰を提案されたとき、ご家族が最も不安に感じるのは「医療の空白」です。
病院のような24時間の監視体制がない自宅で、どうやって命を守るのか。その鍵を握るのが「訪問頻度」です。
私は現役の在宅医療クリニック事務長として、年間数百件の契約に立ち会っています。
結論を申し上げます。訪問診療は「月2回」が標準ですが、それはあくまで“最低限の定期便”に過ぎません。
この記事でわかること
- 月2回が基本となる「医学的・制度的」な裏付け
- がん・認知症・退院直後のリアルな訪問スケジュール例
- 月1回への減数が推奨されない「リスクと報酬」の真実
- 高額療養費で守られる医療費と、守られない「交通費」の格差
訪問診療の基本が「月2回」とされる絶対的な理由
なぜ多くのクリニックが「2週間に1回(月2回)」を提案するのか。そこには、単なる慣習ではない2つの強力な根拠があります。
医学的スパン
内服薬(血圧や血糖等)の調整には、効果が安定するまで約2週間必要です。この周期で診察することで、副作用や悪化の兆しを「未然」に防ぐことが可能になります。
診療報酬の壁
厚生労働省は、月2回以上の訪問を「継続的な医学管理」の主軸として評価しています。月1回では24時間の緊急体制を維持するコストが賄えないという側面もあります。
事務長のアドバイス
先生が来ない日に熱が出たり、苦しそうにした時、電話で一番最初に聞かれるのが「酸素濃度(SPO2)」です。
呼吸状態が最も生命に関わり医療従事者が最初に確認するので、呼吸の回数や酸素濃度(SPO2)が分かると大きな判断材料になります。
※医療機器認証を受けている日本メーカー製(ドリテック等)が正確でおすすめです。

【病状別】医師が自宅に来る回数のリアルな目安
在宅医療は「病気」を診るのではなく「生活」を診ます。そのため、病状の変化に応じて柔軟に回数を変動させます。
| 患者さんの状況 | 標準的な回数 | 事務長からのワンポイント解説 |
|---|---|---|
| 慢性期(認知症・高血圧など) | 月2回 | 状態が安定していても、薬の飲み忘れや生活環境を確認します。 |
| 退院直後(リハビリ期) | 週1回〜 | 病院との環境差で体調を崩しやすいため、1ヶ月間は頻度を高めます。 |
| がん末期(緩和ケア) | 週2回〜毎日 | 痛みの強さに合わせ、麻薬製剤の調整を細かく行うため頻回になります。 |
| 看取り直前(数日〜1週) | 1日1回〜複数回 | ご家族が「一人にさせる不安」を感じないよう、医師・看護師が密に訪問。 |
重要:訪問看護との「合わせ技」
医師が月2回でも、訪問看護師が週2回入れば、合計で週3回の「プロの目」が入ります。
医師は看護師からの報告を受け、即座に処方指示を出せるため、回数以上の安心感が得られます。

「状態が良いから月1回でいい」は可能か?
面談でよく「費用を抑えたいから月1回にしたい」というご相談を受けます。
結論から言うと、多くのクリニックでお断りされるか、24時間対応の保証が外れる可能性があります。
⚠️月1回訪問のリスク
訪問診療の本質は「24時間365日の緊急対応体制を買うこと」にあります。月1回の診察では、患者さんの最新の状態を把握しきれず、いざ夜間に急変した際、医師が責任を持った判断を下せないからです。
「空白の時間」を埋めるには?
医師が来ない間、最も怖いのは「家族が気づかない間の転倒や急変」です。
ずっと側についているわけにはいきませんが、トイレや枕元に「呼び出しボタン」があるだけで、お互いの安心感が劇的に変わります。
✅工事不要ですぐ使えるタイプがおすすめです。
回数増加による「費用」の不安を解消する
回数が増えても、日本の医療費制度はご家族を支える仕組みになっています。
医療費には「天井」がある
どれだけ頻繁に往診を受けても、高額療養費制度により、1ヶ月の医療費自己負担額には上限があります。
75歳以上(一般所得)なら月18,000円、現役並み所得でも一定額以上は返ってきます。
見落とすと危険な「交通費」の罠
事務長として最も注意していただきたいのが「交通費」です。
これは保険がきかず、各クリニックが自由に設定できる「実費」です。
- Aクリニック:1回 500円(月2回なら1,000円)
- Bクリニック:1回 1,500円(月2回なら3,000円)
頻回訪問になった際、この「1回あたりの差」が家計を圧迫します。
契約前に必ず「往診時の交通費はどうなるか」を確認してください。

よくある質問(FAQ)
- 状態が安定しているので、費用を抑えるために「月1回」に減らせますか?
-
原則として、多くのクリニックで「月2回」を最低基準としています。月1回では「24時間体制の維持」を評価する診療報酬の算定が難しくなるほか、急変時に医師が最新の状態を把握できず、責任を持った対応が困難になるリスクがあるためです。
- 夜間や休日に電話をしても本当に大丈夫ですか? 迷惑ではありませんか?
-
全く問題ありません。24時間365日の対応は、在宅時医学総合管理料を算定するクリニックの義務であり「仕事」です。遠慮して病状が悪化し、緊急入院になる方が患者さんの負担も大きくなります。少しでも不安があれば迷わずご連絡ください。
- 訪問診療の日は、家族が必ず仕事を休んで立ち会う必要がありますか?
-
必ずしも必要ではありません。ご本人の同意があれば、独居での受診や、ケアマネジャー、訪問介護(ヘルパー)の入室時間に合わせて訪問することも可能です。鍵の預かり管理に対応しているクリニックも多いため、事前に相談してみましょう。
- 「訪問診療」と「往診」は何が違うのですか?
-
「訪問診療」は計画的に決まった日時へ伺う定期健診のようなものです。一方、「往診」は急な発熱や腹痛など、患者さんやご家族の要請に応じて、予定外の時間に緊急で伺う対応を指します。
- 月2回の訪問日はどのように決まりますか? 曜日の指定は可能ですか?
-
多くの場合は、クリニック側の巡回ルートに合わせて曜日や時間帯が提案されます。ただし、デイサービスや他の介護サービスとの兼ね合いがある場合は、考慮して調整を行うのが一般的ですので、契約時に希望を伝えることが重要です。
- がん末期で毎日先生に来てもらう場合、医療費は跳ね上がりますか?
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医療費(診察代)については「高額療養費制度」の上限があるため、回数が増えても月額の自己負担額は一定以上になりません。ただし、保険適用外の「交通費」は訪問回数分だけ加算されるため、毎日訪問の場合は交通費の総額を確認しておく必要があります。

まとめ:適切な頻度は「クリニックとの対話」で決まる
事務長直伝:訪問診療クリニックに聞くべき3つの質問
- 「このクリニックは、最期の時に毎日来てくれますか?」
- 「往診1回あたりの交通費(実費)はいくらですか?」
- 「医師が来ない日は、どの訪問看護ステーションと連携していますか?」
在宅医療は、人生の最期まで自分らしく生きるための強力なサポーターです。不安は、私たちのような事務スタッフがすべてクリアにします。まずは、その一歩を踏み出してみませんか。

