「グループホームって、老人ホームの一種なの?」「認知症の人しか入れないの?」
グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら介護を受けられる施設 です。
2025年現在、全国に1万を超える事業所があり、特養や老健と並ぶ代表的な介護施設のひとつとなっています。
ここでは、グループホームの基本的な役割、入所条件、他施設との違い、入居までの流れを解説します。
グループホームの特徴は「家庭的な環境」と「認知症ケアの専門性」であり、認知症の方にとって安心できる暮らしを実現しやすい施設です。
グループホームとは?

グループホームとは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら介護を受ける施設です。
特養や老健などと比べて家庭的な雰囲気が特徴で、安心感と自立支援を両立できます。
基本的な役割
グループホームは、認知症の高齢者が 「できることを続けながら生活できる」 ように支援することを目的としています。
- 1ユニット9人程度の少人数制
- 家庭的な雰囲気の中で共同生活
- 食事作りや掃除なども可能な範囲で利用者が参加
- 専門スタッフによる認知症ケア
👉 認知症による混乱や孤立を防ぎ、安心感と自立支援を両立する場 といえます。
入所条件
- 認知症の診断を受けていること
- 要支援2〜要介護5の認定を受けていること
- 原則として入居先のある市区町村に住民票があること
- 少人数での共同生活に支障がないこと
「要支援2以上+認知症の診断」が基本。
グループホームは地域密着型(原則その市区町村の住民が対象)で、1ユニット5〜9人、1事業所1〜3ユニット(定員29人以下)という基準になっています。
他の施設との違い
グループホームは「認知症ケアに特化」している点が最大の特徴です。
他施設との違いを比較表で整理します。
項目 | グループホーム | 特養 | 老健 | 有料老人ホーム | サ高住 | 介護医療院 |
---|---|---|---|---|---|---|
主目的 | 認知症ケア(共同生活) | 長期生活 | 在宅復帰 | 介護+居住サービス | 自立生活+見守り | 医療+介護の長期療養 |
入所条件 | 認知症+要支援2以上 | 要介護3以上 | 要介護1以上 | 自立〜要介護 | 自立〜要介護 | 要介護1以上、医療依存度高い人 |
医療体制 | 基本外部対応 | 看護師常駐 | 医師・看護師常駐 | 施設差大 | 外部医療連携 | 医師常勤・看護師常駐 |
定員 | 少人数(1ユニット9人程度) | 数十〜数百人 | 数十〜数百人 | 数十〜数百人 | 数十〜数百人 | 数十〜数百人 |
滞在期間 | 長期可 | 長期・終身可 | 原則3〜6か月 | 長期可 | 長期可 | 長期可・看取り対応 |
費用相場 | 12〜16万円/月 | 12〜15万円/月 | 8〜13万円/月 | 15〜30万円/月 | 10〜20万円/月 | 12〜20万円/月 |
👉 少人数・家庭的・認知症専門ケアという特徴から、「落ち着いた生活を送りたい認知症の方」に最も適した施設 です。
入居の流れ
- 認知症の診断書を医師から取得
- 要介護認定(要支援2〜要介護5)を受ける
- グループホームに申込書・診断書を提出
- 面談・アセスメント(本人・家族・施設職員)
- 空室が出たら入居契約
👉 特養のように数年待ちになることは少ないですが、地域によっては人気が高く、空室待ちが発生することもあります。
見学時のチェックリスト(現場で見るべき5項目)
- 夜間体制・緊急時対応:夜勤人数、オンコール、救急搬送時の初動。
- 医療連携の範囲:服薬管理、褥瘡・嚥下・脱水などの対応フロー。
- 役割づくり:調理・掃除・買い物の参加機会(自立支援の実態)。
- ご家族の関わり:面会ルール、連絡手段(LINE/電話/連絡帳)。
- 事故・苦情の記録:転倒・ヒヤリハットの件数と再発防止策。
👉 迷ったら2施設以上を見学し、同じ観点で比較すると違いが明確になります。
老人ホーム・介護施設 見学チェックリスト
ℹ️基本情報・契約条件
- 月額費用(家賃・食費・管理費・その他)
- 入居一時金や敷金の有無と返還条件
- 契約形態(終身利用型・定期利用型など)
- 退去条件と手続き方法
⚕️医療・介護体制
- 提携医療機関の有無と診療頻度
- 看護師の配置(看護師1人あたりの利用者数)
- 夜間の医療対応(オンコール体制・緊急搬送先)
- 介護職員の配置(介護職員1人あたりの利用者数)
- 夜勤職員の人数と配置時間
🏠生活環境
- 居室の広さ・設備(トイレ・洗面・収納)
- 共用スペース(食堂・浴室・談話室)の清掃状況
- 食事の内容と提供時間(試食の可否)
- 入浴回数や時間帯の柔軟性
🪅サービス内容
- レクリエーションや外出イベントの頻度
- 個別対応の可否(食事形態・介護方法の調整など)
- 生活支援サービス(掃除・洗濯・買い物代行)
- 家族の面会ルール(時間・予約方法)
🦺安全・安心面
- 防災設備(スプリンクラー・避難経路)
- 認知症対応の経験・実績
- 転倒・誤嚥など事故発生時の対応フロー
- 他入居者や職員の雰囲気(挨拶やコミュニケーションの様子)
グループホームの費用相場

グループホームの費用は、月額12〜16万円程度 が全国的な相場です。
特養や老健に比べるとやや高額ですが、有料老人ホームほどではありません。
認知症ケアに特化した少人数制の施設であることから、費用は一定の水準で安定しており、入居一時金が不要なケースが多いのも特徴です。
ここでは、グループホームの費用相場を詳しく見ていきます。
入居一時金
- 基本的に 不要
- ごく一部の施設で敷金や保証金(10〜50万円程度)が必要になる場合あり
👉 有料老人ホームと違い、まとまった初期費用がかからないため、入居のハードルは比較的低いです。
月額費用
グループホームの月額費用は、12〜16万円程度が一般的です。
内訳の目安:
- 家賃(居室料):3〜7万円
- 食費:3〜5万円
- 水道光熱費:1〜2万円
- 管理費・共益費:1〜2万円
- 介護サービス費(自己負担分):2〜4万円
👉 大都市圏では16万円前後、地方では12万円程度と地域差があります。
🩺医療費は別でかかる
日中:利用者3人に介護職1人(常勤換算)/夜間:ユニットごとに1人が配置基準の目安。
病院受診や訪問診療・訪問看護などの医療は外部連携中心なので、ご本人様の状態に応じて医療費が別途必要となります。
介護サービス費(自己負担)
自己負担は所得区分や負担割合(1〜3割)により異なります。
さらに「高額介護サービス費」や「医療費控除」を活用すると、月々の支出を抑えられる場合があります。
制度の詳細や申請書の入手先は自治体・厚労省サイトで必ず確認しましょう。
例:要介護3(1割負担)の場合
- サービス費総額:約22万円
- 自己負担:約22,000円
👉 要介護度が高いほど費用は増えますが、高額介護サービス費制度により月額上限が設けられるため、極端に高額になることはありません。
また、介護保険の「高額介護サービス費」や「医療費控除」などを利用することで、自己負担をさらに抑えることが可能です。
他施設との比較(費用面)
施設種別 | 費用相場(月額) | 入居一時金 | 特徴 |
---|---|---|---|
グループホーム | 12〜16万円 | 不要(敷金程度) | 認知症ケア特化、小規模共同生活 |
特養 | 12〜15万円 | 不要 | 公的で安価、待機者が多い |
老健 | 8〜13万円 | 不要 | 医療+リハビリ重視、中間施設 |
有料老人ホーム | 15〜30万円 | 数百万円〜数千万円 | サービス・快適性重視 |
サ高住 | 10〜20万円 | 敷金程度 | 賃貸住宅型、自由度が高い |
介護医療院 | 12〜20万円 | 不要 | 医療依存度が高い人も可 |
👉 グループホームは「特養よりやや高いが、有料老人ホームよりは安い」という位置づけで、費用と安心感のバランスが良い施設 といえます。
グループホームの費用の内訳

グループホームの費用は、家賃・食費・光熱費・介護サービス費 などから構成されます。
有料老人ホームと違って「入居一時金」が不要な場合が多いため、毎月のランニングコストをどう捻出するかがポイントです。
ここでは、主要な費用項目を詳しく解説します。
家賃(居室料)
- 1人部屋の個室が基本
- 月3〜7万円程度
- 地域や施設の新しさによって差がある
👉 大都市圏や新設の施設は高額になりやすいですが、地方では低めに抑えられています。
食費
- 1日3食+おやつを提供
- 月3〜5万円程度
- 介護食やきざみ食など特別対応が必要な場合は追加費用あり
👉 家庭的な食事を提供する施設も多く、「食の安心感」が利用者の満足度につながります。
水道光熱費
- 月1〜2万円程度
- 冷暖房費が夏季・冬季に上乗せされるケースあり
👉 個室の電気代を実費請求する施設もあります。
管理費・共益費
- 月1〜2万円程度
- 共用スペースの維持、清掃、スタッフ人件費などを含む
介護サービス費(自己負担分)
介護サービスは介護保険が適用され、自己負担は1〜3割です。
目安(1割負担の場合):
- 要介護1:約20,000円/月
- 要介護3:約22,000円/月
- 要介護5:約27,000円/月
👉 高額介護サービス費制度により、一般世帯で月44,400円までに上限 が設けられているため、負担が膨らみすぎる心配はありません。
医療費(自己負担分)
- 定期的な通院・投薬:数千円〜1万円程度
- 往診・訪問診療:1回数千円
- 処置(点滴・褥瘡治療など):数千円〜数万円
👉 グループホームは医療体制が外部連携中心のため、別途医療費がかかる点に注意 が必要です。
月額費用のシミュレーション(要介護3・1割負担)
- 家賃:50,000円
- 食費:45,000円
- 水道光熱費:12,000円
- 管理費:15,000円
- 介護サービス費:22,000円
- 医療費:8,000円
👉 合計:約15.2万円
特養よりはやや高いですが、有料老人ホームよりは抑えやすい傾向があります。
入居までの流れ

グループホームに入居する際は、医師の診断や介護度の確認が必要になります。
特養や老健のように大人数の判定会議はありませんが、入居判定会議が行われるのが一般的です。
一般的な流れ
- 相談・情報収集
・ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談
・希望する地域の施設をリストアップ - 見学・面談
・施設を見学して居室や生活環境を確認
・本人や家族との面談で生活歴や認知症の状態をヒアリング - 申込書類の提出
・介護保険証、認知症診断書、健康診断書などを提出 - 入居判定会議
・医師、施設職員、介護支援専門員らが、認知症の程度や生活の適応を審査 - 契約・入居
・判定で入居可能と判断されれば契約し、生活開始
ポイント
グループホームは少人数制のため、空室が出るまで待機が必要なケースもあります。
人気のある地域では待ち時間が長くなることもあるため、複数施設に申し込みをしておくと安心です。
どんな人に向いているか

グループホームは、認知症の高齢者が家庭的な環境で安心して暮らせる場所です。
大規模施設に比べて生活のペースに合わせやすく、個別ケアが行き届きやすい点が特徴です。
利用に向いているケース
- 認知症の方
・医師の診断を受けており、在宅介護では対応が難しくなってきた人 - 少人数の落ち着いた環境を希望する人
・大人数での集団生活が苦手な方
・家庭的な雰囲気で暮らしたい方 - 地域での暮らしを続けたい人
・グループホームは地域密着型のため、住み慣れた市区町村内での入居が前提 - 家事や役割を持ちながら生活したい人
・料理や掃除などをスタッフと一緒に行い、役割を持つことで生活に張り合いが生まれる
ポイント
グループホームは、認知症の方が安心して長く暮らせる選択肢ですが、医療的なサポートが必要になった場合には別の施設への移動が必要になる可能性があります。
そのため、入居前に「医療対応の範囲」を確認しておくことが重要です。
グループホームのメリット・デメリット

グループホームは「認知症ケアに特化した小規模施設」という点で大きな強みがありますが、一方で制約も少なくありません。利用を検討する際は、両方を理解しておくことが大切です。
メリット
- 認知症に特化したケア
→スタッフが認知症介護に熟知しており、専門的な対応を受けられる - 少人数制で家庭的な雰囲気
→1ユニット9人程度の生活環境で、落ち着いて過ごせる - 役割を持てる暮らし
→調理や掃除を一緒に行うことで、生活にハリが生まれ、認知症の進行を緩やかにする効果も期待される - 地域での生活継続
→住み慣れた市区町村内で生活を続けられる
デメリット
- 入居条件が限定的
→認知症の診断が必須で、対象者は限られる - 地域制限がある
→原則として「施設と同じ市区町村に住民票がある人」に限られる - 医療対応が難しい
→常時医療行為が必要な人は入居できないケースが多い - 費用が中程度
→特養より高く、有料老人ホームより安い位置づけ。負担感はややある
ポイント
グループホームは「認知症でも自分らしく暮らしたい」という希望に応えられる施設です。
ただし、医療依存度や地域制限のハードルがあるため、事前に条件を確認してから検討するのが安心です。
よくある質問(FAQ)
- 要支援でも入居できますか?
-
原則は要支援2以上または要介護の認定と、認知症の診断が必要です。詳細基準は自治体や事業所で異なるため、必ず事前確認を行いましょう。
- 看取りは可能ですか?
-
看取り対応の可否は事業所ごとに異なります。協力医療機関との連携体制、夜間帯の対応、終末期の方針(延命・鎮静など)を見学時に確認してください。
- 住民票は同じ市区町村でないと入れませんか?
-
グループホームは地域密着型のため、原則は同一市区町村の住民が対象です。例外の取り扱いは自治体によって異なる場合があります。
- 待機期間はどれくらいですか?
-
地域差が大きく、人気エリアでは待機が発生します。複数施設に同時申し込みし、空室状況を定期的に確認するのがおすすめです。
- 医療行為(点滴・胃ろう・インスリン注射など)には対応できますか?
-
対応範囲は事業所と医療連携の体制によって異なります。常時の医療行為が必要な場合は受け入れ困難なことがあるため、具体的な可否と緊急時のフローを必ず確認しましょう。
- 認知症が進行したら退去になりますか?
-
進行のみを理由に即時退去となるわけではありませんが、医療依存度の上昇・常時見守りが必要・重度の行動障害などで安全確保が難しい場合は、他施設(特養・介護医療院・住宅型有料老人ホームの医療特化型など)への移行を検討します。入居前に退去基準を確認しておくと安心です。
グループホームのまとめ

グループホームは、認知症の高齢者が少人数で家庭的な生活を送りながら介護を受けられる施設です。
1ユニット9人程度の小規模環境でスタッフの目が行き届きやすく、認知症ケアに特化した安心感があります。
- 入居条件:認知症の診断があり、原則要支援2以上/65歳以上/同一市区町村に住民票がある人
- 費用の目安:月額12〜16万円程度、入居一時金は不要
- 特徴:家庭的で落ち着いた雰囲気、地域密着型、役割を持ちながら生活できる
- 注意点:医療依存度が高い人は入居困難。地域によっては待機が必要
👉 グループホームを検討するときの次のステップ
- ケアマネや地域包括支援センターに相談し、地域の施設をリストアップ
- 複数施設を見学し、生活環境やスタッフの対応を比較
- 将来的な医療対応や費用負担についても確認し、家族に合った選択肢を見極める
グループホームは「認知症でも安心して暮らしたい」という方にぴったりの施設です。
家庭的な温かさを感じられる環境で、本人も家族も安心できる暮らしを選びましょう。