「介護認定の申請に行ったら、分厚い事業所リストを渡されて『自分で探してください』と言われた…」
「名前と電話番号が並んでいるだけで、どこが良いのかさっぱりわからない」
初めての介護で最初にぶつかる壁が、この「ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)選び」です。
ケアマネジャーは、今後の介護生活のすべてを左右する「司令塔」であり、家族の最大の味方となるパートナーです。
適当に「家から近い順」で選んで後悔しないために、元施設長・現役クリニック事務長としての経験から、「プロならここを見る」という選び方の極意を解説します。
この記事でわかること
- 役所で渡された「事業所リスト」の賢い見方
- 医療系・福祉系など「母体」による得意分野の違い
- 初回面談で確認すべき「良いケアマネ」の条件
そもそもケアマネジャーは何をしてくれる人?
選び方の前に、ケアマネジャー(介護支援専門員)の役割を整理しておきましょう。
ケアマネの仕事は単なる「相談係」ではありません。
| 1. ケアプラン作成 | 本人・家族の希望を聞き、限度額(予算)内で最適なサービスを組み合わせた計画書を作ります。 |
|---|---|
| 2. チームの調整 | デイサービス、ヘルパー、訪問看護、医師など、関係機関との連絡調整を一手に引き受けます。 |
| 3. 給付管理 | 介護保険のお金の計算を代行し、国保連への請求を行います。 |
✅ここが重要:費用について
ケアマネジャーの利用料(居宅介護支援費)は、全額が介護保険から支払われるため、利用者の自己負担は0円です。
相談料もプラン作成料も無料ですので、遠慮せずにプロを頼りましょう。
基準1:事業所リストの「母体」を見る
役所や地域包括支援センターでもらったリストを見てください。
ケアマネジャーの事業所(居宅介護支援事業所)の多くは、何らかの施設や病院に併設されています。
親御さんの状態によって、選ぶべき「母体(運営元)」が異なります。
タイプ別のおすすめ母体
- 医療依存度が高いなら「医療系」
(病院・診療所・訪問看護ステーション併設)胃ろう、在宅酸素、インスリン注射などが必要な場合、医師や看護師とツーカーで連携できる医療系が安心です。緊急時の入院調整もスムーズな傾向があります。 - 認知症や介護度が高いなら「福祉施設系」
(特養・老健・有料老人ホーム併設)介護現場の知識が豊富です。将来的にその施設への入居を考えている場合、顔つなぎができるメリットもあります。 - 在宅生活を長く続けたいなら「在宅サービス系」
(訪問介護・デイサービス併設)ヘルパーやデイサービスとの連携が強く、在宅生活の限界まで粘り強く支援してくれる傾向があります。
母体となる「特養」や「老健」などの違いを詳しく知りたい方は、老人ホーム・介護施設の種類と違いを解説した記事も参考にしてください。
基準2:プロはここを見る!「特定事業所加算」
これは業界人しか見ないポイントですが、非常に重要です。
リストの備考欄や「介護サービス情報公表システム」で「特定事業所加算」を取得しているか確認してください。
この加算(I〜IIIなど)を取っている事業所は、厚生労働省が定める以下の厳しい要件をクリアしています。
・24時間連絡体制 夜間や休日でも連絡がつく体制が確保されています。
・困難事例の対応実績 独居高齢者や末期がんなど、対応が難しいケースを受け入れた実績があります。
・研修と連携 定期的な研修実施や、地域包括支援センターとの連携が義務付けられています。
つまり、このマークがある事業所は「組織として体制が整っており、質が担保されている」可能性が非常に高いです。
重介護の方や独居の方は、この加算がある事業所を優先的に探しましょう。
基準3:【実践編】電話と面談で「相性」を見極める
リストから2〜3箇所に絞り込んだら、実際にコンタクトを取ります。
以下のステップで進めてください。
「親の介護認定が下りたので、ケアマネジャーさんを探しています」と伝えます。
チェックポイント:
- 電話口の対応は丁寧か?(忙しそうで早口すぎないか)
- 「すぐに担当を決められますか?」と聞いた時の反応
自宅に来てもらい、本人を交えて話をします。ここで契約するかどうか決めます。
チェックポイント:
- 本人(親)に向かって話しているか(家族ばかり見ていないか)
- こちらの話を遮らずに聞いてくれるか
- 「これしか無理」と決めつけず、選択肢を提示してくれるか
「重要事項説明書」の説明を受け、契約書にサインします。
もし相性が悪いと感じたら、この時点でお断りしても問題ありません。
面談で聞いておくと良い「キラークエスチョン」
実力を見抜くために、以下の質問を投げかけてみてください。
「緊急時(夜間や休日)は、携帯電話に繋がりますか?それとも留守電ですか?」
特に独居や医療処置が必要な方の場合、24時間繋がる安心感は絶大です。
また、「フットワークの軽さ」も重要です。事務的な対応だけでなく、「すぐに見に行きますね」と言ってくれるケアマネジャーは信頼できます。
もし「合わない」と感じたら変更してもいい
これが最も大切ですが、ケアマネジャーはいつでも変更が可能です。
「一生懸命やってくれているから悪い…」と我慢する必要はありません。
「話を聞いてくれない」「連絡が遅い」「プランが一方的」と感じたら、地域包括支援センターに相談して、担当者や事業所を変えてもらいましょう。利用者本人の利益が最優先です。
「今のケアマネを変えたいけれど、気まずくなりたくない」という方へ。角が立たない断り方の例文と手順をまとめました。

ケアマネージャーに関するよくある質問
- ケアマネジャーに心付け(現金やお菓子)は必要ですか?
-
一切必要ありません。介護保険法や事業所のコンプライアンス規定で、利用者からの金品の受け取りは厳しく禁止されています。「お世話になっているから」という気持ちだけで十分ですので、お気遣いなく。
- ケアマネジャーと相性が悪い場合、途中で変えてもいいですか?
-
もちろん可能です。ケアマネジャーの変更は利用者の正当な権利です。本人に直接言いにくい場合は、地域包括支援センターや新しいケアマネジャー候補の事業所に相談すれば、角が立たないように調整してくれます。
- 私(家族)が平日働いているので、土日や夜間に面談できますか?
-
事業所によりますが、対応してくれるところは多いです。最初の電話で「平日は仕事があるので、土日か平日の18時以降にお願いできますか?」と確認してみましょう。フットワークの軽い事業所を選ぶのがポイントです。
- まだ介護認定の結果が出ていませんが、先に相談してもいいですか?
-
はい、むしろ早めの相談をおすすめします。ケアマネジャーは「認定申請の代行」も行っていますし、認定が下りるまでの間に「暫定プラン」を作成して、とりあえずサービスを使い始めることも可能です。
- 「男性がいい」「女性がいい」といった希望は通りますか?
-
希望を出すことは可能です。「お風呂の介助の話もしたいから同性がいい」「父は男性の言うことなら聞くから」といった事情を伝えれば、可能な限り配慮してくれます。ただし、事業所の人員状況によっては希望に添えない場合もあります。
- 親と離れて暮らしていますが、私の家の近くのケアマネに頼めますか?
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基本的にはできません。ケアマネジャーは「親御さんが住んでいる地域(住民票がある自治体)」の事業所から選ぶのが原則です。月に1回以上の訪問義務があるため、親御さんの家の近くにある事業所を探しましょう。
まとめ:まずは地域包括支援センターに相談を
リストを見ても決められない場合は、リストをくれた「地域包括支援センター」の職員に正直に相談するのも一つの手です。
公務員の立場上「ここにしなさい」とは言えませんが、「お母様の状態なら、医療連携が強い〇〇エリアの事業所が良いかもしれませんね」と、やんわりヒントをくれることがあります。
✅次のステップ
ケアマネジャーが決まったら、いよいよ具体的なサービス選びが始まります。
どんなサービスが使えるのか、一覧で確認しておきましょう。

