「会社の付き合いで飲み会を断れない……」
「お酒が唯一の楽しみなのに、HbA1cのために我慢するのは辛い」
糖尿病の診断を受けると、居酒屋はまるで「立ち入り禁止区域」のように感じるかもしれません。
看護師として多くの患者さんと接してきましたが、「隠れて飲んで悪化させる」パターンが最も治療を長引かせます。
この記事では、医療現場の視点から、血糖値スパイクを防ぎながらお酒の席を楽しむための「医学的に正しいオーダー術」を伝授します。
この記事の結論
- お酒は「糖質ゼロの蒸留酒」(ハイボール・焼酎)を選ぶ
- 適正量は純アルコール20g/日まで(厚労省指針)
- おつまみは「食物繊維→タンパク質」の順で食べる
- シメのラーメンは厳禁。「温かい汁物」で代替する
【大前提】飲む前に知っておくべき「適正量」の真実
お酒の種類を選ぶ前に、まずは「量」の話をさせてください。
どれだけ糖質ゼロのお酒でも、飲みすぎれば肝臓に負担がかかり、インスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)が悪化します。
厚生労働省が推進する「健康日本21」では、節度ある適度な飲酒量を「1日平均純アルコールで約20g程度」と定義しています。
純アルコール20gの目安
| ビール | 中瓶1本(500ml) |
|---|---|
| 日本酒 | 1合(180ml) |
| ウイスキー | ダブル1杯(60ml) |
| 焼酎(25度) | グラス半分(100ml) |
| ワイン | グラス2杯弱(200ml) |
この量を守ることが、翌日の血糖値を守る第一歩です。
ルール① お酒は「蒸留酒」一択!ビールは最初の一杯だけ
アルコール選びの鉄則は、「醸造酒(じょうぞうしゅ)」を避け、「蒸留酒(じょうりゅうしゅ)」を選ぶことです。
| 種類 | 判定 | 理由・解説 |
|---|---|---|
| ウイスキー 焼酎 ジン・ウォッカ | 推奨 (蒸留酒) | 製造過程で糖質が取り除かれているため、基本的に糖質ゼロです。 ハイボール、ウーロンハイ、緑茶ハイ、水割りがベストな選択肢です。 |
| ビール 日本酒 ワイン | 注意 (醸造酒) | 原料(麦や米)の糖質が残っています。 特に日本酒や甘口ワインは糖度が高いので注意。ビールは「最初の一杯だけ」にして、二杯目からはハイボールに切り替えましょう。 |
| 梅酒 カクテル 甘いサワー | NG (混成酒) | カシスオレンジやレモンサワー(甘口)には、大量の砂糖やシロップが添加されています。 これらは「お酒」というより「アルコール入りジュース」です。血糖値が急上昇するため避けましょう。 |
注意:ノンアルコールビールも成分表示を確認
「ノンアルだから安心」は大間違いです。
アルコールはゼロでも、味を整えるために「糖質」が含まれている商品が多くあります。
必ずパッケージ裏の成分表示を見て「糖類ゼロ・糖質ゼロ」と書かれているものを選んでください。
居酒屋では置いていないことも多いですが、家飲みなら「糖質ゼロビール」を常備しておくのが正解です。最近の製品は驚くほどビールに近い味になっています。
ルール② おつまみは「食物繊維」ファーストで血糖値をブロック
お酒以上に重要なのが「おつまみ」です。空腹時にいきなりアルコールや高カロリーな食事を摂ると、血糖値が跳ね上がります(血糖値スパイク)。
以下の順序で注文・食べることで、糖の吸収を穏やかにしましょう。
✅STEP1:まずは「食物繊維」でバリアを張る
乾杯と同時に口にするべきは、野菜や海藻類です。
- 枝豆:食物繊維とタンパク質が豊富。
- 海藻サラダ:水溶性食物繊維が糖の吸収を抑えます(ドレッシングはかけすぎ注意)。
- 冷やしトマト:リコピンなどの抗酸化作用も期待できます。
✅STEP2:メインは「高タンパク・低脂質」
血糖値を上げにくいタンパク質をしっかり摂ります。
- 焼き鳥(塩):タレは砂糖の塊です。必ず「塩」で注文しましょう。
- お刺身:DHA/EPAが摂れる最高のメニューです。醤油はつけすぎないように。
- 冷奴・だし巻き卵:甘い厚焼き玉子ではなく、だし巻きを選びます。
避けるべき「糖質爆弾」メニュー
逆に、以下のメニューは「糖質+脂質」の組み合わせであり、血糖値を長時間高く維持してしまう最悪の組み合わせです。
- ポテトサラダ:ジャガイモ(糖質)×マヨネーズ(脂質)の塊です。
- フライドポテト・唐揚げ:衣(小麦粉)とジャガイモで糖質が高い上、酸化した油は動脈硬化のリスクを高めます。
- ピザ・シメのご飯もの:シェアするとしても、一口程度に留めましょう。
ルール③ 「シメのラーメン」が危険な医学的理由
お酒を飲んだ後、無性にラーメンやお茶漬けが食べたくなりませんか?
実はこれ、アルコールの分解に肝臓が忙しくなり、糖を作り出す機能(糖新生)が一時的に抑制され、軽度の低血糖状態になっているサインの場合があります。
⚠️ここで本能のままにラーメンを食べるとどうなるか?
- 血糖値が急激に垂直上昇する(スパイク)。
- そのまま就寝するため、エネルギーとして消費されず、脂肪として蓄積される。
- 翌朝の高血糖(暁現象の悪化)を招く。
シメが欲しくなったら、ラーメンではなく「温かいお味噌汁(シジミ汁やアオサ汁)」を飲んでください。
温かい水分で満腹感が得られ、オルニチンなどの成分が肝臓の働きを助けてくれます。
服薬中・インスリン治療中の方は注意
SU薬(スルホニル尿素薬)やインスリンを使用している方が飲酒すると、重篤な低血糖(意識障害など)を起こすリスクが高まります。必ず主治医に「飲酒の可否」と「補食のルール」を確認してください。
飲み会の翌日は「低糖質弁当」で肝臓を休ませる
飲み会を楽しんだ翌日は、アルコール分解とおつまみの消化で、肝臓も膵臓もお疲れモードです。
翌日の食事は、徹底的に「糖質オフ & 肝臓ケア」を意識してリセットしましょう。
とはいえ、二日酔いや疲れで「栄養バランスの整った食事」を作るのは大変ですよね。
そんな時のために、私は患者さんに「糖尿病対応の冷凍宅配弁当」のストックを強くおすすめしています。
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まとめ:賢く飲めば、居酒屋は怖くない
糖尿病治療は「我慢大会」ではありません。適度な息抜きこそが、長く治療を続けるコツです。
- 適正量(ビール中瓶1本、ハイボール2杯程度)を守る。
- 2杯目からは「蒸留酒」に切り替える。
- おつまみは「枝豆・海藻」→「焼き鳥(塩)」の順で。
- シメのラーメンは厳禁。味噌汁で代用する。
このルールをポケットに入れて、安心して飲み会を楽しんできてくださいね。

