介護保険の申請方法5ステップ|必要書類・認定調査の裏ワザ・親の説得法まで

当ページのリンクには広告が含まれています。

「最近、親の様子がおかしい気がする…」
「転ぶ回数が増えたし、そろそろ介護保険の申請をした方がいいのかな?」

親御さんの変化に気づいた時、最初に直面するのが「介護保険の申請」というハードルです。
役所の手続きと聞くと「なんだか難しそう」「書類が面倒くさそう」と感じてしまいますよね。

私はこれまで、訪問診療クリニック事務長・看護師や老人ホームの施設長として、数えきれないほどのご家族の相談に乗ってきました。そこで皆さんが口を揃えて言うのがもっと早く申請しておけばよかった」という後悔です。

介護保険の申請は、決して怖いものではありません。

この記事では、初めての方でも迷わず手続きできるよう、申請から認定までの流れを5つのステップで解説します。

※介護保険制度の仕組みや、費用・サービスの種類について詳しく知りたい方は、全体ガイドの記事もあわせてご覧ください。

この記事はこんな人におすすめ

  • 親の物忘れや足腰の衰えが気になり始めた人
  • 介護保険を申請したいが、役所のどこへ行けばいいかわからない人
  • 認定調査で「自立(非該当)」と判定され、失敗したくない人
  • 親が「介護なんていらない」と申請を拒否して困っている人
目次

申請のタイミングは?こんな「サイン」があったら要検討

「まだ元気だし、申請なんて早いかも」と考えているご家族は多いですが、以下のようなサインが見られたら、申請(=要介護認定を受けること)を検討すべきタイミングです。

日常生活のチェックリスト

  • 冷蔵庫に同じ食材がたくさん入っている(買い忘れ・重複)
  • お風呂に入るのを面倒くさがるようになった(衛生観念の低下)
  • 部屋が片付けられず、散らかるようになった
  • 「薬を飲んだか」がわからなくなることがある
  • 外出がおっくうになり、趣味をやめてしまった
  • 些細なことで怒りっぽくなった(感情コントロールの低下)

これらのサインは、認知機能の低下やフレイル(虚弱)の初期症状であることが多いです。
「サービスを使うか」は後で決めればいいので、まずは「認定(パスポート)」だけ持っておくのが、親御さんとご家族を守る最大のリスク管理になります。

申請前に知っておきたい介護保険の自己負担額や、費用を抑える軽減制度についてはこちらをご覧ください。

申請から認定までの5ステップ(全体像)

申請から認定結果が出てサービスが使えるようになるまでは、原則として30日以内とされていますが、自治体の混雑状況によっては1〜2ヶ月かかることもあります。

まずは全体の流れを把握しましょう。

STEP
相談に行く

相談・申請(窓口へ) 市区町村の役所窓口、または「地域包括支援センター」へ申請書を提出します。

STEP
調査に来るのを待つ

認定調査(訪問調査) 調査員が自宅(または入院先)を訪問し、本人の心身の状況を確認します。
※ここが最も重要な分岐点です!

STEP
医師に書類を書いてもらう(役所-病院間のやり取り)

主治医意見書の作成 市区町村からの依頼により、かかりつけ医が医学的な見地から意見書を作成します。

STEP
判定会が終わるのを待つ

審査・判定 「認定調査の結果(一次判定)」と「主治医意見書」をもとに、介護認定審査会で二次判定が行われます。

STEP
結果が届いたのを確認する

認定結果の通知 結果(要支援・要介護区分)が記載された新しい被保険者証が郵送で届きます。

それでは、失敗しやすいポイントを中心に、各ステップを具体的に解説していきます。

Step1:申請窓口と必要書類【準備編】

どこに行けばいい?(おすすめは地域包括支援センター)

申請書を提出する場所は、主に以下の2箇所です。

  1. 市区町村の役所(介護保険課・高齢福祉課など)
  2. 地域包括支援センター(おすすめ!)

役所まで行くのが大変な場合は、お住まいの地域(中学校区ごとなど)にある「地域包括支援センター」へ相談してください。
手続きを無料で代行してくれる上に、今後の生活相談にも乗ってくれる頼れる場所です。
※「〇〇市 地域包括支援センター」で検索すると連絡先が出てきます。

必要な持ち物リスト

申請に行く際、以下のものを用意しましょう。申請書(要介護・要支援認定申請書)は窓口に置いてあります。

スクロールできます
対象者必要なもの
65歳以上の方
(第1号被保険者)
介護保険被保険者証(65歳で郵送されたピンクやオレンジの証書)申請者の本人確認書類(免許証など)マイナンバーカード(または通知カード)
40歳〜64歳の方
(第2号被保険者)
医療保険証(社保・国保など)申請者の本人確認書類マイナンバーカード(または通知カード)

家族が代理申請する場合
ご本人が行けず家族が代理で行く場合は、上記に加えて「申請に来る人の身分証明書」「印鑑(認印)」を持参しましょう。
※委任状が必要な自治体もあるため、念のため事前に電話確認するとスムーズです。

【注意】40歳〜64歳の方は「特定疾病」のみ対象

65歳未満(第2号被保険者)の方は、原因が「加齢に伴う病気(特定疾病)」である場合のみ申請が可能です。交通事故による障害などは対象外(障害福祉サービスの管轄)となります。

特定疾病16種類の一覧を見る
  1. がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靭帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

出典:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」

Step2:認定調査の攻略法【最重要】

申請後に行われる「認定調査」は、要介護度を決めるための最も重要なプロセスです。
調査員(市区町村の職員や委託されたケアマネジャー)が自宅に来て、ご本人に「お名前は言えますか?」「お風呂は一人で入れますか?」などの聞き取り調査を行います。

ここで多くのご家族が陥る、致命的な「落とし穴」があります。

親は調査員の前で「よそ行き」の顔をする

普段は物忘れがひどくても、調査員という「お客様」が来ると、親御さんはシャキッとして「できます」「問題ありません」と答えてしまうことが非常によくあります(業界用語でも「よそ行きの顔」と呼びます)。

これをそのまま記録されると、実際よりも軽い認定(自立や要支援)が出てしまい、必要なサービスが受けられない事態になりかねません。

家族ができる対策:こっそり「カンペ」を渡す

調査の場では、親のプライドを傷つけないよう配慮が必要です。

本人が「できる」と言っているのに、横から家族が「嘘よ!昨日はできなかったじゃない!」と否定すると、親御さんは傷つき、調査に非協力的になってしまいます。

✅認定調査を成功させる3つのコツ

  1. 「困りごとメモ」を事前に用意する
    普段の失敗談や、困っている具体的なエピソードを書いたメモを用意します。
    例:「鍋を焦がすことが週2回ある」「夜中にトイレの場所がわからず廊下で失禁した」
  2. 調査員にこっそり渡す
    調査の最後や、親御さんがトイレに行った隙、あるいは玄関先での見送りの際に「本人の前では言いにくいのですが、これが普段の姿です」とメモを渡してください。
  3. 認知症の症状(BPSD)を伝える
    「足腰が動くか」だけでなく、「意思疎通ができるか」「直前のことを覚えているか」「作り話(作話)をしていないか」などの認知面もしっかり伝えてください。

Step3:主治医意見書の作成依頼

認定調査と並行して、市区町村からかかりつけの医師へ「主治医意見書」の作成依頼が送られます。
この書類は、医学的な観点から介護の手間を判断する重要な資料です。

かかりつけ医がいない場合は?

「最近ずっと病院に行っていない」という場合は、申請窓口で相談してください。市区町村が指定する医師(指定医)を紹介してくれますので、そこで診察を受けることで意見書を書いてもらえます。

🩺訪問診療の現場から:

【ここだけの話】
医師も多忙なため、診察室での短い時間だけでは患者さんの普段の生活能力まで把握しきれません。
認定調査の時と同じように、「家での困りごとメモ」を受付や看護師を通じて医師に渡しておくと、意見書に「認知機能の低下あり」「見守りが必要」など実態に即した内容を反映してもらいやすくなります。

よくある悩み:親が「介護なんて必要ない」と拒否する場合

これが一番の悩みどころかもしれません。
プライドの高い親御さんに「介護の申請をしよう」と真正面から伝えると、「俺を年寄り扱いするな!」「施設に入れる気か!」と激怒されることがあります。

そんな時は、「嘘も方便」で別の理由をつけて連れ出しましょう。 参考までに。

  • 「高齢者向けのお得な割引パスをもらうために手続きが必要なんだって」
  • 「最近はみんな健康診断の一環で脳のチェックも受けるらしいよ」
  • 「何かあった時に私が安心だから、登録だけしておいてくれない?」
  • (地域包括支援センターの人に来てもらい)「役所の定期調査です〜」と訪問してもらう

特に「子どもの安心のために」と頼むと、渋々ながら納得してくれる親御さんは多いです。
それでも難しい場合は、無理に連れて行こうとせず、まずは地域包括支援センターの職員に相談し、第三者(プロ)からアプローチしてもらうのが最も効果的です。

認定結果が届いたら次にすること

申請から約1ヶ月後、ご自宅に「認定結果通知書」と新しい「被保険者証」が届きます。
結果は「要支援1・2」「要介護1〜5」「非該当(自立)」のいずれかです。

ケアマネジャー(介護支援専門員)を探す

認定が下りたら、介護サービスの計画書(ケアプラン)を作成する必要があります。
自分で作ることも可能ですが、制度は複雑なため専門家であるケアマネジャーに依頼するのが一般的です(作成費用は全額介護保険から出るため、自己負担は0円です)。

  • 要支援1・2の方
    「地域包括支援センター」が窓口になります。介護予防サービスを利用します。
  • 要介護1〜5の方
    「居宅介護支援事業所(ケアマネジャーのいる会社)」を選んで契約します。

「どこの事業所がいいかわからない」という場合は、役所の窓口や地域包括支援センターでリストをもらい、「認知症に強いところ」「家から近いところ」などの希望を伝えて紹介してもらいましょう。

結果が出る前でもサービスは使える?

申請日から認定結果が出るまでの期間も、「暫定利用」という形でサービスを使い始めることができます。
ただし、認定結果が予想より低かった場合(例:要介護を見込んでいたが要支援だった)、差額が自己負担になるリスクがあるため、ケアマネジャーや地域包括支援センターとよく相談して計画を立ててください。

良い担当者に出会うために、失敗しないケアマネジャーの選び方と見るべきポイントも参考にしてください。

まとめ:まずは地域包括支援センターへ電話を

介護保険の申請は、親御さんの「老い」を認めることでもあり、家族にとっては精神的に辛いステップかもしれません。

しかし、申請をして認定を受けておけば、いざ親御さんが倒れたり、介護が必要になったりした時に、すぐにプロの助けを借りることができます。
「転ばぬ先の杖」として、まずは相談だけでも始めてみませんか?

✅最初の一歩
インターネットで「お住まいの地域名 地域包括支援センター」と検索し、電話をかけてみてください。
相談はすべて無料です。家族だけで抱え込まず、プロを頼ってくださいね。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
kawauchi
看護師/訪問診療クリニック事務長/計画相談員
私は、看護師として重症心身障害病棟・救命救急HCUに従事した後、有料老人ホームの管理者・看護部長・福祉事業部統括として、入居者の生活と医療連携の現場に携わってきました。

現在は、訪問診療クリニックの事務長として在宅医療の運営に関わると同時に、計画相談員・医療福祉コンサルタントとして、東海エリアを中心に施設紹介・身元保証・医療介護連携の支援を行っています。

病院・施設・在宅という立場の異なる現場をすべて経験してきたからこそわかる、制度論だけではない「現場のリアル」や「家族が直面する苦悩」を踏まえた発信を大切にしています。

このブログでは、現場経験に基づく実践的な情報を軸に、後悔しない選択のための情報を発信しています。
目次