「お茶にとろみをつけたら、糊(のり)みたいになって親が飲んでくれない」
「毎日使うものだから、ドラッグストアで買うと地味に出費がかさむ……」
嚥下(飲み込み)機能が低下した方にとって、水分補給は誤嚥性肺炎を防ぐための命に関わるケアです。
しかし、古いタイプのとろみ剤や安い製品を使うと「ダマ」ができたり、独特の「薬剤臭」がして、水分拒否に繋がってしまうことが多々あります。
看護師として断言しますが、とろみ剤は「成分」で選ばないと失敗します。
また、ミキサー食をドロドロのまま食べさせるのではなく、「ゲル化剤」でゼリー状に固めるだけで、誤嚥リスクは劇的に下がります。
この記事では、病院や介護施設で標準採用されている「失敗しないとろみ剤」の選び方と、ミキサー食を美味しくする「ゲル化剤」について、看護師・施設管理者の視点で解説します。
基本:とろみ剤は「第3世代(キサンタンガム)」一択です
まず、絶対におさえておきたいのが「とろみ剤の成分」です。
ドラッグストアで安売りされているものの中には、使いにくい「旧世代」の製品が混ざっています。
【とろみ剤の世代交代】
- ❌ 第1世代(デンプン系) 片栗粉のようなもの。
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唾液で分解されて水に戻ってしまったり、温度によってとろみ具合が変わりやすく、ダマになりやすい。味も粉っぽくなります。
- ⭕ 第3世代(キサンタンガム系) 現在、病院で採用されているのはほぼコレ。
-
少量でしっかりとろみがつき、透明で無味無臭。唾液の影響を受けず、時間が経っても安定しています。
パッケージの裏面を見て「デンプン」が主成分のものは避け、「キサンタンガム」が含まれているものを選んでください。
これだけで「ダマになる」「味が変わる」という悩みの9割は解決します。
【水分用】おすすめとろみ剤ランキング
第3世代(キサンタンガム系)の中でも、特に溶けやすく、実績のある製品を厳選しました。
第1位:つるりんこ Quickly(クリニコ)【病院採用率No.1】
迷ったらこれを選べば間違いありません。
多くの病院や施設で採用されている、実績No.1のとろみ剤です。
✅ 看護師のおすすめポイント
・完全無味無臭:お茶、味噌汁、牛乳など、元の風味を一切邪魔しません。
・圧倒的な透明感:水に溶かしても白く濁らず、美味しそうな見た目をキープできます。
・安定性:冷たい水でも温かいお茶でも、サッと溶けて時間が経っても変化しません。
※まずは300g〜800g程度から試すのがおすすめです
第2位:トロメイクSP(明治)【溶けやすさ抜群】
明治が販売している強力なとろみ剤です。
特に「牛乳」や「濃厚流動食(エンシュアなど)」といった、タンパク質や脂質が多くてとろみがつきにくい液体に対して、強い力を発揮します。
【食事用】ミキサー食を「ムース」に変えるゲル化剤
次に、食事(おかず)用です。
多くの家庭で「ミキサー食にとろみ剤を混ぜてドロドロにしている」ケースが見られますが、実はベタつく食事は喉に張り付きやすく(付着性)、窒息や誤嚥の原因になりかねません。
- とろみ剤 水分用
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液体をゆっくり流すために使う。
- ゲル化剤 おかず用
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ミキサー食をゼリー/ムース状に固めて、まとまりを良くするために使う。
推奨:ソフティアG(ニュートリー)
これを使えば、見た目の悪いドロドロ食が、レストランの「テリーヌ」のような高級感ある食事に変わります。
作り方は意外と簡単!
- ミキサーにかける 食材(肉や野菜)+だし汁+「ソフティアG」を一緒にミキサーにかけます。
- 加熱する 鍋に移して、85℃以上になるまでひと煮立ちさせます(粉を溶かすため)。
- 冷やし固める バットや型に流し込み、冷蔵庫で冷やせば完成。カットして盛り付けます。

【損してない?】ドラッグストア vs 通販 コスト比較
在宅介護でボディブローのように効いてくるのが消耗品費です。
ドラッグストアで売っている「スティックタイプ(携帯用)」を自宅で常用するのは、割高すぎておすすめできません。
「つるりんこQuickly」を例に、実勢価格で比較してみましょう。
| 購入場所・タイプ | 内容量 | 価格目安 | 1gあたりの単価 |
|---|---|---|---|
| ドラッグストア (スティック 3g×50本) | 150g | 約1,600円 | 約10.6円 |
| Amazon/楽天 (スタンドパウチ袋) | 800g | 約3,300円 | 約4.1円 |
| Amazon/楽天 (業務用大袋) | 2kg | 約7,500円 | 約3.7円 |
※価格は変動するため、購入時にご確認ください。
ご覧の通り、通販の大袋(パウチ)に切り替えるだけで、コストは「半分以下」になります。
1日10g使う家庭の場合、年間で2万円以上の差が出ます。重たい荷物を運ぶ手間も省けるので、消耗品はネットでのまとめ買いが鉄則です。
看護師直伝!絶対にダマにならない「渦(うず)テクニック」
「良いとろみ剤を使っているのにダマになる」という方は、混ぜ方が間違っている可能性があります。
プロが現場で行う「失敗しない手順」を伝授します。
✅ダマ知らずの3ステップ
先に「渦(うず)」を作る 粉を入れる前に、スプーンで飲み物を高速でかき混ぜ、コップの中にトルネード(渦)を作ります。
渦の中に粉を落とす 渦が回っている最中に、中心に向かってとろみ剤をサッと入れます。
※粉を入れてから混ぜるのではなく、「混ぜながら入れる」のがコツです。
手を止めずに30秒 粉を入れた後も手を止めず、30秒〜1分間混ぜ続けます。これで完全に溶解し、安定したとろみがつきます。
⚠️ 注意:薬を飲むときのとろみ剤
錠剤や粉薬をとろみ水で飲む場合、注意が必要です。
とろみ剤の種類によっては、薬の崩壊(溶け出すこと)を遅らせてしまい、効き目が悪くなることがあります。
薬を飲むときは、服薬専用の「服薬ゼリー(らくらく服薬ゼリーなど)」を使うか、主治医・薬剤師に「今使っているとろみ剤で薬を飲んでも大丈夫か」を確認することをおすすめします。
まとめ:消耗品こそ賢く選んで負担を減らそう
介護は「長期戦」です。毎日使うアイテムの質とコストを見直すことは、介護する側の精神的な余裕にも繋がります。
- 成分選び:キサンタンガム系(つるりんこ等)を選ぶ。
- 購入場所:ドラッグストアではなく、ネット通販の大袋を買う。
- 食事の形態:おかずはゲル化剤(ソフティアG等)でムースにする。
浮いたお金と時間で、たまには親御さんの好きな果物を買って、美味しいムース食を作ってあげてくださいね。
もし「どのくらいのとろみをつければいいか分からない」という場合は、訪問看護師や言語聴覚士に相談して、適切な濃度(薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみ)を評価してもらいましょう。
とろみ剤を工夫しても「そもそも親があまり食べてくれない」「痩せてきた」と心配な方は、少量で高カロリーを摂取する「食事術」も合わせて参考にしてください。


