はじめに:病院以外にも「看護師の働き方」はある
「夜勤がつらい」「人間関係に疲れた」「もっと患者さんと向き合いたい」
そんな理由で転職を考える看護師の方は少なくありません。
最近では、病院以外の選択肢として注目されているのが「訪問診療クリニック」です。
でも、「訪問診療って何?」「訪問看護とどう違うの?」と、イメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、訪問診療での看護師の仕事内容や1日の流れ、向いている人の特徴などをわかりやすく解説します。
未経験からの転職にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
訪問診療とは?訪問看護との違いも解説
訪問診療とは、医師が患者さんの自宅や施設に定期的に訪れて診察・処方を行う医療サービスです。その場に同行するのが「訪問診療の看護師」です。
一方で、訪問看護は医師の指示のもと、看護師が単独でケアを行うサービスです。
同じ“在宅医療”というくくりではありますが、体制も役割も大きく異なります。
比較項目 | 訪問診療 | 訪問看護 |
---|---|---|
同行者 | 医師と同行 | 看護師単独または複数 |
診療内容 | 診察・処方中心 | 看護処置中心(吸引・点滴など) |
夜間対応 | クリニックによる | オンコールありのケース多数 |
訪問診療の看護師は医師のサポート役というイメージを持たれがちですが、実際には患者・家族との信頼関係づくりを担う大切な存在でもあります。
「ご自宅で療養中のがん末期の患者様。最初は不安から気持ちが不安定でしたが、医師と看護師の定期的な訪問と声かけで、穏やかな日々を過ごすことができました。ご家族から“ここまで穏やかに過ごせるとは思わなかった”と涙ながらに言われたことが今も心に残っています。」
看護師の仕事内容と役割
訪問診療での看護師の主な業務は以下のとおりです:
- 診療準備(カルテ・持ち物・車の確認)
- 医師の補助(バイタル測定、処置の準備)
- 運転(医師が運転しない場合)
- 診療記録の記入補助
- 患者・家族との連携とコミュニケーション
また、状況によっては多職種との連携(訪問看護、ケアマネジャー、薬剤師など)も行い、チーム医療の一員として活躍します。
医師と二人三脚で動くことで、患者だけでなくご家族にも安心感を与える存在となります。
「退院後、吸引が必要な患者さんが在宅療養を選びました。でも家族は“本当にできるのか”と不安げ…。私たち看護師がサポートすることで、ご家族の不安も少しずつ和らいでいくのが印象的でした。」
1日のスケジュール例
時間帯 | 内容 |
---|---|
08:30 | 出勤・診療準備 |
09:00〜12:00 | 午前の訪問(3〜5件) |
12:00〜13:00 | 昼休憩 |
13:00〜17:00 | 午後の訪問(4〜6件) |
17:30 | 記録・片付け・退勤 |
訪問先での対応により多少の前後はありますが、生活リズムを崩さず働ける点が魅力です。
また、突発的な急変対応などが少ない分、精神的な負担も病棟より軽減される傾向にあります。
あるスタッフは「訪問診療に転職してから、夕方には自分の時間が持てるようになり、仕事と生活のバランスが整った」と話しています。
よくある質問(FAQ)
多くのクリニックで看護師が運転します(AT限定でOK)。ペーパードライバー講習を受けられる職場もあります。
基本的には日勤のみ。オンコール対応が必要な場合もありますが、ないクリニックも多く存在します。
医師と一緒に訪問するため、安心して始められます。病棟よりも精神的な負担が少ないという声もあります。
処置は医師が行うため、看護師は補助にまわることが多く、精神的にも余裕を持って関われます。
病棟とは異なる緊急対応の少なさや、スケジュールの安定性がある一方で、移動や運転があるため「体力的に楽」というわけではありません。ただし、夜勤がないため生活リズムは整いやすいです。
高齢化が進む日本では、訪問診療の需要は今後さらに高まると予測されています。在宅医療に関われる看護師のニーズも右肩上がりです。
向いている人・不向きな人
向いている人 | 向いていない人 |
---|---|
患者や家族とじっくり関わりたい | 多忙な現場が好き |
チームワークを大事にする人 | 1人で完結する仕事が好き |
規則正しい生活をしたい人 | 夜勤や変則勤務が苦にならない |
車の運転が苦にならない | 運転に不安がある人 |
「病棟勤務に限界を感じていたけれど、訪問診療に転職して初めて“これが本来の看護だ”と実感した」
そんな声を聞くことも少なくありません。
キャリアとしての訪問診療という選択
訪問診療は単なる「働き方」ではなく、看護師としてのキャリアにおいても新しいステージを切り開く選択肢です。
病棟経験を活かしながら、「生活に寄り添う看護」「在宅医療を支える力」を磨ける現場。それが訪問診療です。
特に地域包括ケアが進む中、今後は在宅医療に強い看護師がますます求められます。
在宅領域に早くから関わることで、管理職や教育担当としてのキャリアアップにもつながります。
「以前は急性期病棟でバリバリ働いていましたが、体力的に続かず退職。訪問診療に転職してからは無理なく働けるようになり、看護の本質を取り戻せた気がします。今は後輩の教育係も任されており、やりがいを感じています。」
訪問診療でよくあるトラブルとその対処法
どんな仕事にもトラブルはつきもの。訪問診療でも以下のような場面が発生することがあります。
- 訪問先の患者さんが不在、または対応困難な状況
- ご家族との認識のズレや対応への不満
- 道路事情や天候により、スケジュールに遅れが出る
このような場合でも、チーム内で情報共有し、臨機応変に対応するスキルが求められます。
大切なのは「医師と同行している」という安心感と、「一人で抱え込まない」ことです。
「ある日、ご家族がケアに強く不満を持たれていたケースがありました。医師との連携で“診療内容を可視化”する取り組みを始め、次第に信頼関係が構築されました。相手の立場に寄り添うことの大切さを実感した出来事でした。」
訪問診療に向けた準備と心構え
「訪問診療に挑戦してみたいけれど、何から始めればいいかわからない…」という方も多いでしょう。
まずは以下を意識するとスムーズです:
- 訪問看護・在宅医療の基本的な知識を予習する
- 運転に慣れておく(運転の頻度が高いため)
- 在宅医療に関する本や動画、セミナーに参加してみる
また、施設ではなく「生活の場」で医療を行うという意識を持つことが大切です。
「モノ」や「設備」がない中で、どう判断し、どう寄り添うか。それが看護師としての成長につながります。
今後の医療と訪問診療の将来性
高齢化の加速により、今後ますます「在宅医療」のニーズは拡大していきます。
国も在宅医療・地域包括ケアの充実を進めており、訪問診療の体制は今後も強化されると予想されます。
訪問診療で経験を積んだ看護師は、将来的に以下のようなフィールドでも活躍できます:
- 在宅ホスピス・訪問看護・医療連携コーディネーター
- 地域包括支援センター職員
- 高齢者住宅・施設の看護責任者
“病棟だけが看護師の道じゃない”という選択肢を、今こそ広げていく時期です。
おわりに:訪問診療という働き方をもっと多くの人に
訪問診療は、単に“楽な仕事”ではなく、“人と深く向き合う看護”です。
病棟では味わえない「その人の暮らしごと支えるやりがい」が、ここにはあります。
「病棟では消耗してしまう」「もっと人に寄り添う看護がしたい」
そう感じている看護師さんには、ぜひ一度この働き方を知ってほしいと思います。
あなたの経験を、訪問診療という新しいステージで活かしてみませんか?
転職の探し方と注意点
訪問診療の求人は、一般的な求人サイトでは見つけにくい場合もあります。
以下のような方法で探すのがおすすめです:
- 看護師専門の転職サイトで「訪問診療」「在宅医療」で検索
- 地域の在宅医療クリニックの採用ページを確認
- 知人・友人など、実際に働いている人からの紹介
なお、訪問診療に特化した求人サイトでは、職場の雰囲気や1日の流れを詳しく紹介しているケースもあります。気になる方はぜひチェックしてみてください。